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「あきら、今ヒマ?」



「……は?」










Summer × Summer










現在授業の合間の10分休み。


ヒマっていうか……いや、これから授業…ですけど…



「どういう、意味?」


「んー……今日、いい天気だよな。」


「そうだね。おかげで暑いけど。」


「空は青いし、雲は白いし。」


「夏真っ盛りだよね。」




「フケようぜ」




「は?」


突然腕を掴まれた。


「ちょ――ッ…」


「荷物も持って!」


「!!?」


ブン太は机の脇にかかっていた私の荷物を乱暴に取り上げて、私の腕を引いて教室を飛び出した。


まわりのみんなは目を丸くしている。


「本気!!?」


「本気もなにも超マジ!」


楽しそうだ。


颯爽と廊下を駆け抜け、そのまま玄関でバタバタと靴をはきかえる。


玄関を出た外は、クーラーの効いていた校舎内とは裏腹なまとわりつく暑さで溢れていた。


容赦ない日差しと、じとりと染み出てくる汗に思わず目をしかめる。


「あっつ…」


「アイス食いてぇ!!」


「もー…これからどこ行く気?」


「秘密!」


校門のところまでやってきた。


しかしここは今は使われていない開かずの門だ。


「出られないよここ?」


「乗り越えりゃいーだろぃ」


「(乗り越え…!?)フツーに開くとこから出ればいいのに…」


「まぁまぁ、そこが重要だったりすんだなー」


「どゆこと??」


そうこうしているうちにブン太は 2m以上はあるであろう門に軽々と登ってしまった。




「ホラあきら!手ぇ貸せぃ!」




ブン太がキラキラさせる笑顔で手を差し伸べてくれている。


「ま……いっか」


私がその手を掴んだ、その瞬間


「ひぁ…っ!?」


何が起こったか理解するヒマもなく 自分も門の上にひっぱりあげられた。


心臓がバクバク言ってる。


「そ…空、飛んだみたい」


「何バカなこと言ってんだよ。っしゃ!さっさと降りて行――」




「何やってんだお前らー!!?」




ブン太がかばんを下に降ろした時だった。


「「げ!!?」」


向こうに見えるのは学校一うるさくて有名な生徒指導。


「やっべ見つかった!」


「ちょちょちょどうすんの――」


「逃げるが勝ち!」


「え!!?嘘!や、ちょ…っきゃぁぁ!!」


「うおおぁああぁ!!?」


………落ちた。


かなり豪快に。


ブン太がとっさに庇ってくれたおかげで私に大きな怪我はないけど……


「え…っブン太大丈夫!!?」


「痛ってぇぇぇぇ!! はっ!そんなことより逃亡逃亡!!」


「ひゃ…っ」


無造作にかばんを拾い、私の手を引いて駆け出した。


「こらぁ!!待て丸井ー!!!」


生徒指導がとうとう校門のすぐ向こう側に来る。


……しかし、古くなったその門は開かず立ち往生しているようだ。


「!! そういうことだったのね…」


「悪事には知恵も必要なんだぜーい」


「悪事って!」


立ち去りながら、肩越しにアタフタしている生徒指導をチラリと見て二人でにやりと笑いあった。


そのうち笑いが止まらなくなって、大声で笑いながら走り続ける。


「っあー!帰ったら真田にもどやされるなー」


「えっそれだけは勘弁!」


「もう遅い。」


「最悪……」



















しばらく街のはずれを走り続けて、そのうちだんだんと視界が開けてきた。


公園のような場所を抜け 木に囲まれた道を走る。


そして目の前に現れたのは……




「うわあああー!!」


私の口から勝手に感嘆の声が漏れた。




「海!!?」




「絶景だろぃ?」


「最高!」


そこは少し街より上って、街も海も果てしなく見渡せる丘のような場所だった。


一応展望できるようにしてあるのか、大きな木の根本にひとつベンチが据え付けられている。


「こんな場所いつ見つけたの!?」


「最初に見つけたのは幸村だぜ? リハビリの散歩についてった時教えてもらったんだ」


「学校の近くにこんな気持ちいい場所あったんだねー…」


木陰になったベンチに腰を降ろすと、心地いい海風がふわりと吹いてきた。


今まで走り続けて滲んだ汗もひやりと冷えて気持ちいい。


「近くに自販機あるんだ。飲み物買ってくる」


「えっ私もいくよ」


「お前はそこで涼んでろぃ!」


「は、はい。」


お言葉に甘えて私は波の音を楽しむことにした。


目を閉じて、夏の匂いを体いっぱいに吸い込む。


しばらく自分の世界に入っているうちにいつの間にかブン太が戻ってきた。


「お待たせ」


「うっひゃぁぁ!」


首に当てられた冷えた缶。わたしの口からは色気のない声が出る。


「ははっ驚きすぎ。ウーロン茶でいい?」


「もー……ありがと。」


気持ちのいい音をたてて缶を開けると、焼けつく暑さに冷たい飲み物はあっと言う間に体に染みわたった。


「はぁ〜〜たまにはいいね、こういうのも!」


「だな!またいつでも連れてきてやるよ」


「やった!」


「ただここはなー…幸村も知ってるから………」


「え?」


いきなりブン太の顔が険しくなる。


「いつ覗かれるか…」


「怖いこと言わないで!」




ブン太とたわいもない会話をする時間が好き。


何気なく笑い合う時間が好き。


まとわりつく暑さも、日差しも、


今は夏の風と涼やかな波の音につつまれて 何もかもが気持ちよかった。




「ブン太のコーラも一口ちょうだい」


「いいけど。甘えよ?」


「うん」


私が缶を受け取ろうと手を差し出す。


しかしブン太は私の手をよけてしまった。


「ちょっと何―――」


「ちゃんとやるって」


「――…っ!?」


突然ブン太の唇によって私の口が塞がれた。


口の中にコーラの味が広がる。


「……っ」


後ろの木とブン太に挟まれている私は、身動きが取れずにされるがまま。


すうっとひと筋、顔から汗がしたたり落ちた。


「あちぃ……」


そっと唇を離したブン太はそうつぶやくと、固まる私を見つめて勝ち誇った顔で笑った。




「………甘い?」




「…………あ、まい…です。」


「顔真っ赤。」


にやりと笑うブン太はしてやったりという顔。


「誰のせいだと思ってんの。」


「さぁね。」


「…………。(ブン太のばか。せっかく涼んでたのにまた暑くなっちゃったじゃん…)」


ブン太は何事もなかったかのように 残りのコーラを飲み干すと近くのゴミ箱に投げ入れた。


「そろそろ帰る?」


「学校に?」


「いや〜…それはちょっと…色々マズい。どっか行きたいとこある?」


「……よ」


「え?聞こえねぇよ」




「………ブン太といれるなら、どこでもいいよ」


「…………」




自分も恥ずかしさいっぱいで恐る恐る見上げると、一瞬きょとんとして 次の瞬間太陽にも負けない眩しさで笑った彼は、いきなり私の頭をワッと抱き抱えて。


「ばっか!照れるだろぃ!!」


「さっきの仕返しだもん」




きっとブン太が照れるって言ったのは嘘じゃない。


ブン太の手から、全身から、伝わってくる熱さがその証拠。




「行こうぜぃ。」




差し出された手を握って、私たちは丘をまた歩きはじめた。












ブン太と触れ合う時間が好き。


まとわりつく暑さも、日差しも、


君と一緒にいれば全然気にならないよ。




君から、自分からの熱が何よりも愛おしく感じる夏の午後だった。