Beautiful days | ナノ



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◯月☆日(曇り)

そういえば数日前に誕生日を迎えていた。とポロッと漏らす。普段ならそれだけで終わったのだがマメないとちゃんが立ち寄った島でプレゼントを見繕ってくれた。
キャプテンとお買い物デートに行ったと思ったらこれを買ってくれていたのか。
真後ろにいたキャプテンの眼光が羨ましいんだか断ったらバラすと言いたいんだか妬ましいんだか…とかく冷静と情熱の間をさ迷っていたのだが有難く受け取る。
貰った物はこの日記で、そういえば新しい物を買わないとと思っていた矢先だったので実に喜ばしい。彼女の心遣いにも感謝。
大切に使う事にする。


◯月△日(晴れ)

波、非常に穏やか。船内騒がしい。
ベポに寄り掛かっていとちゃんとキャプテンがうたた寝をしてしまった模様。昨日の夜は夜更かしをしてしまったようだ、ナニで夜更かしかは敢えてここでは書かない。
キャプテンの鎖骨付近にあるキスマークが服でチラ見するのも敢えて何も書かない。
「かわいいー!(小声)」「キャプテンに眉間の皺が無いー!(小声)」「おれも混ざりたいー!(小声)」が聞こえる。
小声でも数が数だと大きくなる、結果は書くまでも無いが…日記のネタとして書く。
安眠から覚醒させられた不機嫌フルスロットルキャプテンが壁際に騒いだ連中の首を並べて置いて、起きたての状態把握していないいとちゃんを抱っこして連れて行ってしまった。
恐らく船長室でもう一眠りするのだろう。
ベポはまだ起きない。


◯月◇日(土砂降り)

スコールがひっきりなしに降っては止みを繰り返している。外に出ていたキャプテンも見事に直撃してしまったようだ。ずぶ濡れで艇内に帰還、要するに非常に不機嫌。不機嫌ではあるが水も滴るなんとやら、色気ムンムンである(女だったらイチコロだったろう)
いとちゃんが慌ててバスタオルを持って来てくれていたが、その色気にアテられてしまったらしい。顔が真っ赤なっていた。キャプテンはワザと壁ドンして遊んでいとちゃんの反応を楽しんでいたが…みんな見てますよキャプテン。
その後はいとちゃんに頭を拭いてもらって満足そうにしていた。一瞬キャプテンが大型犬(いや猫科か?)に見えてしまった。


◯月□日(雪)

海面は雪、なので今日は海中を進む。マリンスノーは冷たく無いが陽が当たらないので寒さはどっこいどっこい。矢鱈着込んだいとちゃんを見つけて話を聞くとクルーが心配して上着を貸してくれた、との事だ。通りでチグハグな彩りそしてぶかぶか加減である。確かこれは雑誌で見たことがある『萌え袖』と言われるものだろう、キャプテンが大層ときめいていた。
いとちゃんがパタパタ腕を振る度にキャプテンの頬がビミョーなレベルで動いていた、やに下がるのを堪えている模様。
その後は例に漏れずいとちゃんを膝抱っこして満足げであった。


*月△日(飴)

誤字では無い。
デカイのが船首に直撃修理に当たる。忙しい。


*月☆日(晴れ)

夕焼けが綺麗である。物資補給に島に立ち寄る。
用も済んだのでキャプテン、いとちゃん、おれ、シャチ、ベポで久しぶりに飲みに出る。キャプテンが逆ナンされれてとても笑った、しかしボインの女性を前にキャプテンはいとちゃんに情熱的でねちっこい長いキスをして全てを説明してしまう。シャチがアホ面でポッカーンと眺めていたが余り凝視するものじゃない。
ボインは大笑いして「すまなかったね」と言っていた、中々ざっくばらんで気の良い姉さんだった。
シャチが「代わりにおれなんてどう?」と言っていたが「素顔を見せてくれないと嫌」で一蹴されていた。
どうやらおれも対象外らしい。


*月★日(曇り)

名前は知らないが、同業者が襲って来た。
どこで手に入れたか謎だか海楼石の弾丸を所持していたらしくキャプテンの頬を掠めて傷を作っていた。皆の温度がこの時変わる、取り敢えず向こうさんを全部沈めた。
キャプテンに「よくやった」と褒められたので、腹の虫は幾らか収まった。
いとちゃんに傷の手当てをしてもらって、それから随分と心配してももらってキャプテンは幸せそうであった。
ここで腹の虫はようやっと収まる。


◇月◆日(飴)

またかよ。


◇月☆日(嵐)

海中でも潮のうねりで潜水艇が酷く揺れている。
情けない事によろけてしまうとジャンバールが支えて助けてくれた。
キャプテンは素晴らしい口実が出来た!と言わんばかりの顔で一日中いとちゃんにまとわりついている、いやいつもと対して変わらないが密着度が何時もより高い。隙間が無いくらいぴっちり寄り添っている、と考えていたらキスし始めたので慌ててその場から立ち去る。
…クルーの目の毒なので部屋でやっていただきたい、とシャチが嘆いていた。


◇月★日(小雨)

潜水艇の部品を買いに島に立ち寄る。
キャプテンが造船所の奴らと話してる隙になんといとちゃんがナンパされる。
どうやらナンパ初体験らしいいとちゃんはうまくあしらえなかったらしく、慌てて助けに行こうとすると鬼哭の鯉口を切る音が聞こえてしまう。
仕上がったばかりだろう船首の女神像が真っ二つになっていたが仕事中にナンパをする奴が悪いと、おれは思う。
部品の代金を払って早々に潜水艇に帰る、キャプテンは船長室にいとちゃんと共に閉じ籠ってしまった。
少なくとも明日まで船長室には近付けない。


◎月△日(分からない)

昨日の昼から深海を航海中。目的地は魚人島である。人魚には会いたいが長居はしない予定。シャチと一部のクルーがあからさまに残念がっていた、ベポが「アザラシ…」などと呟いていたが魚人島にはアザラシはいないと思う。
いととキャプテンは何やら話し合っている模様、恐らくこれからの計画の打ち合わせをしているのだろう。
身が引き締まる。


■月△日(晴れ)

二人がいないと船は静かだ。





「ペンギン何読んでんだ?」
「今までの日記を読み直してたんだ。」
「いとちゃんに貰ったやつ?」
「あァ。」
「いとちゃん、キャプテン、今どの辺りに居るんだろうなぁ…ガス野郎はどうなったんだか…。」
「さて、な。連絡が来ないってことは順調って事だ。」
「…早くキャプテン達戻って来ねェかなぁ…。」
「焦るな、おれらはおれらの仕事をするだけだ。」
「…そだな。」

おれはパタンと日記を閉じて、ぐぐっと背伸びする。
新聞に載った我らがキャプテンの不遜な顔を思い出してさてこれからが大仕事だ、と心中呟いて懐かしい思い出達に意気込みを伝えてみるのだ。



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