Koneta! | ナノ
◎おひざちゅっちゅ

ひとり掛けのソファがある。ひとつある。
おとこと、おんながいる。ふたり。
「んっ、ん…っ。」
簡単な話だ、ひとり掛けに無理矢理二人座ろうとなれば『こう』なる。膝の上の柔らかく温かい女は、そうだ、己の妻である。
睫毛を涙で濡らすので、小さな唇をねぶってやる。体をくねらすので腰に腕を回して捕まえてやる。
すると妻は肩を震えさせて「みほーく」と甘ったるい懇願を漏らすのだ。
「今日、長い、ね…?」
「ぬしが、」
愛しいからだ。
丹念に唇を己の唇でときほぐす様は、けだものが肉を食らう姿に見えるのだろうか。……分からん。さして気にも止めない。
「ぁ、」
「……ベッドに行くか?」
「ううん、お膝の上がいい……あったかい…」
耳朶を歯んで、とろとろに溶けた言葉を注げば掠れた睦言が返ってきた。実に、あぁ、実に可愛いおんなである。いや前から重々承知していたが益々以って愛くるしい。特に胸元に擦り寄る仕草は小動物そのものだ。
今はこのまま。
珠玉の言葉に微睡んで目を閉じれば、妻の髪の香りがした。


◎スモーカーが甘やかす

紆余曲折について一先ず横に置くとして、端的にまとめると、だ。妊娠が発覚した。誰って、この一見少女じみた女が、である。
少女はとうに成人を迎え、嫁いで来たこの地にも慣れた頃合いだった。なのでまぁ、のほほんとしていたのである。塞翁が馬、成せばなる、産むが易し。しかし問屋が卸さなかった。孕ませた…おっと失礼、彼女の旦那様が大変だった。
何せ彼女は小さいし細すぎる(夫目線)し、日中は彼女一人で家に居る。
「いいか、おれが居ない時に重い物は持つな。絶対に、絶対にだぞ。」
夫は本気(マジ)であった。
「用事がない時は極力外を出歩くな、躓いて転んだら大ごとだ。買い物?おれが仕事帰りに買う。おまえが見たければ一度帰ってから一緒に出るのも、多少なら構わない。あぁ、それとだ。風呂に入る前は一言伝えろ、声が聞こえるところで待機しているから何かあったら呼べ。」
本気も本気であった。
「あの、スモーカー、私そんなに甘やかされたら、だめ人間になりそうで……」
「……前から思ってたが、おまえは遠慮がすぎる。もっと頼れ、おれはおまえの旦那だ。」
そう言って男は妻のキッチン行きを拒んだのである。
今日の夕飯も夫お手製メニューが並ぶ。


◎シャンクス耐える

少々危ない島にどうしても寄らないといけない用事ができた。おれが抱えて歩けばいいんじゃねェのか、と提案したんだが副船長からにべもなく却下を食らった。おまけに当日可愛い可愛いお嬢さんは風邪を引いてしまったのだから、彼女のお留守番は確定となった訳だ。
そして、行って帰って夜更けて。
ベッドの上でぺしゃんと座ったお嬢さん(頬が火照っていて非常にうまそうである)はどうにもこうにも、寂しかったらしい。普段は恥ずかしがって自分からすり寄るなんてめったにないのだが「シャンクス。」と切なそうに名前を呼んでくれた。
「ちょっとだけ、ちょっとだけ甘えても、いい?……あ、疲れてたら気にしないで、」
「……可愛い過ぎかちくしょうめ……!」
潤んだ瞳は宝石にも勝る。
なぁ聞いてくれ、病人に手を出すわけにもいかないだろう?おれは耐えたんだ、甘えんぼになった可愛い可愛いお嬢さんがすっかり寝入ってしまうまで理想的な保護者を演じたんだ。離れていた時間、おれもお嬢さんに触りたくて堪らなかった、辛抱ならなかった、それを!耐えた!おれはやったぜ!
「最後ヤケクソじゃねぇか。」by副船長


◎エースと彼女(水着)
常夏の島、遠くまで珊瑚が広がる遠浅の島。
アクアマリンを敷き詰めたような波が白浜を滑っていき、瑞々しい笑い声が響くまさに楽園。
「……どう、かな?ちょっと大胆…だったかな。」
「そんなこと、そんなこと無ェ、っあ、かわ、いい、やっべ、すっげえかわいい。」
彼の名前はエース、肩書は色々あるが簡単に説明すると海賊の青年である。今は首元まで真っ赤に染めて、そこらの一般男子と同じような反応を見せていた。目の前の恋人が中々刺激的なビキニをまとっていたのだから、さもありなん。なにせ滅多にこういう露出の多い服を着ない性分の彼女であるからして、ギャップという強烈な右ストレートをもろに食らってしまったのだ。
夏の日差しに白い肌、薄い肩に掛かる紐にくぎ付けになってしまう。
「おや、見事に花が咲いたねぇ。」
「あ、イゾウさん。」
「おっ。眼福。」
「サッチさんも。」
そうしている間にお馴染みのメンツが登場する、軽く手を振っていた彼女であったが途端に引っ張られ……おや何事かと目を白黒させていたのだが、じきに体を包むのがエースであると分かるのだった。
「駄目だ見るなおれ以外見るな、パーカー無いのかクソッ、あ、でもおれはずっと見てェからやっぱ隠すのナシで、ああ、もう!」
エースの体は熱い、元々人より体温は高めの彼であるが今日は更に高い気がした。



◎テゾーロで映画のワンシーン

こんじきの雨が降る。さぁ、ショーのはじまりだ!

「……?!海賊、どうしてこのタイミングで。」
ショーの主役の、その勇姿を眺めていた時だ。ライオンの船首が会場のど真ん中に飛び込んで来た。双眼鏡を覗けば最近話題の麦わら帽子で……彼らの噂を考えればその逸脱した登場っぷりは実に彼ららしく思えて仕方ない。だがその後が厄介だった、彼女が言った『海賊』はこの厄介者達を指す。
無遠慮なガトリング・ガンにぽかんとして、瞬きをすれば目に飛び込む火花の色……あ、流れ弾が、と思った矢先に良く耳に馴染む声が聞こえた。
「……大根役者はこのステージにはお呼びじゃない。そう、思わないか?ミセス?」
黄金の盾が回りを包む。着飾った男は襟首を正すと彼女を背中に隠すのだ。目の前にはステージ衣装の金色、振り返った男はあっけにとられた小さな妻の頬をひと撫でして狂言回しじみた台詞を囁く。
「ショーは安全性第一、細心の注意を払って……愉快でクレイジーなのが良い。」
暫しお待ちを、私の月の君。そう言ってくい、と人差し指を持ち上げた男はエンターティナーの顔と海賊の顔を足して二で割った微笑みを浮かべていたのだった。
(意訳:おれの妻に何さらしとるんじゃワレェ)

◎または花散らしの雨

名残り惜しいのか、雨はいまだ止まずただ静かな音を降らせていた。
気まぐれに歩いていれば突然の雨、たまたま見つけた小さな東屋はすっかり忘れられたようで、少しほこりっぽい。
静かな緑と、心臓の音がする東屋。まるで別べつの世界のよう。
「やまないね。」
「やまないな。」
「ねぇ、」
やまゆりを摘んできてもいい?ほら、あんなにたくさん。
しずくを揺らす白い花、雨のレェスのさらに奥、その陰にひとつ、ふたつ。
花を手折るのは子供の首をひしゃり、と折る様にするのととてもよく似ている。
「行くな。」
「どうして。」
「似合わない。」
小首をかしげる女は悩んで「じゃあ少し見てくるね」と東屋の縁から足を出そうとする。
「行くな。」
抱きとめて、ふところに仕舞い込んで、首のへこんだところに口付けた。やまゆりのようなつるつるの肌、子供のようにうすい肌。
「くすぐったい、」
「ここにいろ。」
雨のなかに行けばおまえはきっと帰ってこないだろう。

◎雨上がりとロー
※長編設定

「おまえ、それは癖なのか?」
「くせ?」
雨が上がると空を見上げるだろう?それだ。
男はそれだけ言って女の手を引く。なにやら随分とむつかしい顔をしているのだが、はて、彼女は彼が不機嫌になる理由がとんとわからなかった。
「雨上がりの空って、すごく澄んでるからつい眺めちゃうなぁ。」
「……。」
そして目線は蒼穹へ。男はそれが嫌なのだとも言えず……いや、うまく言葉を見つけられないといった方がいいのだろう。
「あ、ほら、かもめが飛んでる。」
少しだけ前に身を乗り出す彼女にハッとして半ば強引に懐に仕舞ったのも、きっと言葉を叫びたくともできなかったのだ。
青い空は彼女のふるさとを思い出す、映え映えとした空はきよらかで彼女の心を写しているようだったからだ。
おまえ、その空に呼ばれていつか帰ってしまうんじゃないのか。その言葉は男の喉の、一番奥で貼りついたままくすぶっている。


◎ゾロってえろいよね

 セクシーな香水をつけてるとか、ものすごくオシャレ、とかではないけれども隣でいびきをぷすぷす立てている恋人は……控えめに言ってもやたら色気があると思う。目つきの所為かしら、と顔を覗き込んでも瞼はふたつとも閉じたまま。
声は、うん低くて、とても好きだ。低くて、静かで、ルフィ君が太陽のそれなら彼はなんだろう、静かな海かも。
「……ふがっ…。」
「うん。そうだね。」
寝言ともつかないそれに返事をして視線を落とす。緩く曲がった手も、大きくて自分の頭を撫でた後自然と首筋を流れていく。その手つきすら色っぽいなぁと思ってしまう自分は、うん、ちょっと欲求不満なのかもしれない。
「ゾロさん、ぞろさん。」
「……。」
「かっこよくって、私おかしくなっちゃいそう。」
「……。」
「すき。」
ここまで言っておいて気恥ずかしくなってしまった。「毛布持ってくるからね。」とまた告げて立ち上がってそそくさ退却、
「言い逃げとは聞き捨ておけねェ。」
とはいかなくて。
はい、その後、というか、島に着いてから×××で×××でした。はい。
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -