Happy Birthday!




気分は良かったと思う。
久々に会えて、いつもならドタキャンばかりしてしまう約束もきちんと守れて、喧嘩ばかりの飲み比べも今日はくだらない話をしながら珍しく静かに飲めて、そうとう気分はよかった。

…よかった。ここまでは。


「なんで俺がこいつをおぶって運んでんだよ」


背中にかかる大人一人分のずっしりとした重みにブチ切れながら悪態を吐くも、当の本人が起きる気配はまったくない。
誕生日を祝われて俺が酔い潰れるならまだしも、なぜこいつが酔い潰れて俺が面倒を見なければいけないのか、と思いはすれど、やはり放っておけるわけもなく、重たい身体を背中に乗せて万事屋へ向かっていた。



ドサリと玄関に銀髪を放り込むと疲れた勢いで同じようにドサリとその場に倒れこんだ。
それでもやはり銀髪の男は目を覚まさなくて…
じっとその寝顔を見ながら少しイラッとしてきた。

楽しかった。確かに先ほどまで穏やかに酒も飲めて話もできて…楽しかった。
けど…


決定的な何かをもらえていない。


土方は寝転がったままの銀時の両脇に手を入れ後ろから持ち上げると、そのままズルズルと銀時の万年床まで連れて行った。
ときどき足をぶつけてしまっていたような気がするが、知ったことか。俺を放置したお前が悪い。

そんな自分勝手な言い訳を頭の中で呟きながら、到着した布団の上に銀時を放ってその上に馬乗りになった。
こんな体勢普段は進んでしないのだが寝ている銀時を前に大した羞恥はない。
ただ、目を覚ましたときこいつが驚くだろうと思ってやっただけ。


「おい」

「銀、…銀時!起きろ!」

「………ぎんとき」


「…………なぁ、起きろよ…」


寝ている銀時の顔の横に両手をつき寝顔を覗きこむが、やはり起きる気配はない。
いっそこのままキスでもかまして無理矢理起こしてしまおうか、なんて考えて…やめた。

だんだん一人でこんなことをしている自分が空しくなってきて銀時から身体を離し、帰ろうとふすまに手をかけた。


「どこ行くの?」


不意に後ろから聞こえてきた声に思わず身体が固まって…
気づいた時には視界がぐらりと揺れ、銀時の腕の中に閉じ込められていた。


「さっきまで大胆なことしてくれてたくせに帰ろうとしてんなよ」

「なっ…てめぇ起きてっ…!!!」

「うん、起きてた。お前足ぶつけすぎだから、めっちゃ痛い」


さっきまでの行動がすべて知られていたと認識した途端、全身が一気に熱くなり自分の頬を染めるのがわかった。
こんなことならブン殴ってでも起こせばよかった。


「狸寝入りかよっ、」

「だって土方が可愛い行動するからもうちょっと楽しみたいな〜なんて思っちゃうじゃん?」

「テメェ…最悪だ、しね」

「嫌ですー死んだら泣いちゃうくせに」

「誰が泣くか」

「だから俺は土方泣かせないためにも死ねないんです」

「おい、人の話聞け。だいたい寝たお前が悪い。なんで俺がテメェを運ばなきゃなんね―…」

「土方」

「あ?」

「誕生日おめでとう」


ぎゅうっ、と身体を後ろから抱きしめられ耳元でもう一度『おめでとう』と囁かれる。
なんでこう、こいつの一言は俺の心をいとも簡単に捕えてしまうのだろうか…
さっきまでウダウダ文句を言っていたはずなのに、そんなこともうどうでもよくなっていた。
ただ、その一言が嬉しくて…堪らない。


「…言うのが遅ぇ…」


なのに、素直じゃない俺の口から出る言葉は文句ばかり。


「うん、ごめん。久々にまともに土方と向き合えてさ、浮かれちまってた。まさか嫁におぶられて帰っちまうとは俺も思ってなかったわ…ワリィ」

「嫁言うな。……俺もまぁ、まともに酒飲めて…よかったけどな」

「そっか」

「おう」


静まりかえった部屋で感じられるのはお互いの体温と呼吸。
身体を覆うように包んでくれる銀時の体温に、信じられないほど安心した。
この静けさが心地いい…


「土方…あのさ、プレゼントなんだけど―…」

「ないんだろ?今月ピンチっつってたしな」

「うっ…」


口ごもった銀時がなんだかおかしくて笑がこみ上げてきた。


「ぷっ、なに凹んでんだよ。別に怒ってねぇって」


実際、プレゼントを貰うより、今日のように楽しく酒を飲み話をし笑い会えればそれの方が何倍も嬉しかった。
日頃会う時間を合わせられないせいか、時間を共有できるということが一番心が躍り、癒しにもなっていた。
だからこそ、寝てしまった銀時に寂しさを覚えたのだろう…


「でも、好きな奴に喜んでもらいたいと思うは普通だろ?…つっても金ない時点でアウトなんだけど」


あはは、と乾いた声で項垂れる銀時には、どうやら俺の気持ちはあまり伝わってないようで。
ならばと、ある提案をした。


「じゃあ、金のかからねぇプレゼントくれよ」

「へ?なにそれ?」

「………」

「………」





「……キス、マーク…つけろ」





自分から言っておきながら、声に出してみると恥ずかしくなって声が尻すぼみになる。
最後はちゃんと相手に届いたのかも不安になるほど小さくて、ただただ羞恥に耐えるように俯いていた。


「…お前、それ何…可愛い」


腰に回っていた銀時の腕がより一層俺を抱き寄せたせいで、耳に銀時の息がかかって思わず身体が震えた。


「いつもは付けるの嫌がんのに……どしたの急に」

「………今日ぐれーお前と過ごした証があってもいいかなと思っただけだ」


それは“お前と過ごせるのが嬉しい”という精一杯の表現で、精一杯の愛情表現だった。
本当はいつでもキスマークを残してほしいし、“俺はお前のものだ”って知らしめてほしいと思っているから…


「…じゃあ、今日だけ…全身に俺の印、つけたげる」


チュッと小さく音を立てて首筋に触れられ、チクッと痛みが走る。
皮膚を吸われ、赤く色づくそこは俺からは見えないけど…


「綺麗についた」


嬉しそうな銀時の声にキスマークをつけられたという実感がさらにわく。




『愛してる』




その言葉とともに再び走る小さな痛みに、身体と心が喜びに震えた。




end



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ここまで読んで下さりありがとうございました!!
キスマークねだる土方さんひゃっふーい♪(←おい、テンションwww
今回はほのぼのな感じで誕生日過ごしてる感じにしてみました^^
最後はちょっと微エロちっくになっちゃったけど(笑
銀さん大好きな土方さんホント大好きです!!////

土方さん誕生日おめでおおおお!!!!
しっかりいちゃこらしろよおおおお!!!!

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