今日は千種君の誕生日です。
骸さんが一つだけ願いを叶えてくれるという事なので、沢田綱吉君ちに遊びに行く事になりました。

骸様がこだわる沢田綱吉に会いたいですとお願いすると、何故だか骸さんは強張った顔をしていましたが、千種君は見なかった事にしました。
『だって面倒くさいから…』、だそうです。

僕の方がボンゴレに会いたいんですけどね。でもまあ誕生日ですからね、仕方ないですねと骸さんははぁと深いため息を吐き出しました。
千種君は骸さんのそのため息の意味を多少なりとも知っているので、綱吉君の家にお邪魔する事に躊躇しましたが骸さんが、大丈夫ですよ。
たまには自分に素直になりなさいとにこりと笑ってくれたので胸を撫で下ろしました。

千種君は一人でお邪魔した事は今まで一度もありません。常に犬君と一緒にいるので綱吉君に会う機会がないのです。
何だか心細いので、綱吉君と一番接している時間が多い彼の霧の守護者のクロームちゃんに一緒に行こうと尋ねましたが、彼女はふるふると小さく頭を振って俯いてしまいました。
どうしたのかと思いましたが、クロームちゃんは頬を赤らめて呟きます。

「…私ボスに会うと少し心臓が痛くなるから、だから嫌なの。千種だけで行って来て」

今にも泣き出しそうなクロームちゃんの頭を優しく撫でて千種君は頷きます。きっと彼女は彼の事を好きなのだ、と千種君はクロームちゃんの頭を撫でながら思いました。
泣きたくなる程好きだという気持ちは余り分からないけれど、彼女の涙はとても清いものなのだとぼんやり思いました。


綱吉君の家に着くと小さな子供達が出迎えてくれました。牛柄のもじゃもじゃ頭の男の子とチャイナ娘です。牛柄の男の子はもじゃもじゃ頭に刺さっていた色鮮やかな丸いキャンディーを千種君に差し出します。チャイナ娘はぺこりと可愛らしくお辞儀をして部屋の中に戻って行きました。

「ほい、あめやる。ランボさんはこのあめきらいなんだもんね!ランボさんはぶどうあじがすきなんだもんね!」
「ぶどう味…」
「ランボさんはパイナップルあじはいらないんだもんね!」
「…パイナップルは骸様も嫌いだよ」

骸様と同じだ、とキャンディーを見つめる千種君に牛柄の男の子はニッと笑います。首を傾げる千種君に手にしていたキャンディーを押し付ける形で渡しました。

「…くれるの?」
「パイナップルあじはきらいだけどそのあめはうまいんだもんね!だからおまえにやる!ランボさんはやさしいんだもんね!」

そう言うと牛柄の男の子はばたばたと二階に続く階段を駆け上がって行きました。

「ツナー!メガネぼうしがきたぞー!」
「…メガネ帽子…」

まあその通りなんだけれど。そう思いながら手渡されたキャンディーを見つめます。

(…食べるの、勿体ない)

骸様はパイナップルは嫌いだけど、でも今日は許してくれるかな。犬に食べられないようにしよう。クロームには半分分けようかな。

「…空が青い」

見上げた空はとても青くて、少し寂しくて、けれど何故だかとても幸せ。少し眩しいからと目を細めた千種君は空を見上げたまま、小さくそっと笑いました。




しんしんと、
(心泣いた。)






------
千種が幸せになりますように。

20091026





「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -