まあ、くれると言う物は素直に受け取っておこう。
その差し出された鍵を、心の中でため息をつきながら「ありがとう」と受け取ると、リボーンは嬉しそうに笑ったから、俺は少し驚いた。

俺は何を考えているか分からない、ニヤリとした笑い顔のリボーンしか見たことがない。
笑っていても笑っていなくても、リボーンの表情からは何を考えているのかは分からないことがほとんどだけど。
珍しいかもしれない表情に、俺は少しだけ、本当に少しだけ(今年の誕生日は得をしたかもしれないな)と思った。

(そんなこと、リボーンには絶対言わないけどな)

そんなことを思いながら、書類に目を通しているリボーンをちらりと横目で見る。
非常識妄想変態馬鹿男でも中身は普通の人間みたいだ。
血の色は緑とかそんなんだと思っていたのに。
リボーンには失礼なことを考えながら薔薇を片付けていると、ふとあることを思い出した。

(そういえば、俺ちゃんとリボーンの誕生日を祝っていないよな)

そうだった。
リボーンに誕生日を祝ってもらったくせに、俺はリボーンの誕生日を祝っていない。
昨日は実はリボーンの誕生日だったのだ。
13日と14日は狙ったみたいに誕生日が続いている。
毎年この日になると、ボンゴレ本拠地は何かと忙しくなる。
内紛や抗争などという恐ろしいことではないんだけど、朝からバタバタ走りまわる獄寺くんには申し訳ないなぁと思う。

この世界では有名なリボーン。
お祭り好きな性格の部下も多いとあってか、毎年盛大なパーティーを繰り広げている。
ファミリーも同盟も巻き込んで、二日続けての終始ドンチャン騒ぎだ。
俺ももちろん出席するように、と言われているけど未だにアルコールが苦手で、少しだけ顔を出してすぐ自室に帰るようにしている。

祝ってくれる皆には申し訳ないけど、俺は友達だけでの方が気が楽で楽しい。
リボーンも「くだらねぇから俺は帰るぞ」と早々に切り上げるから、主役は殆どいない状態。

今年もそんな感じで、ブツブツ文句を言いながらリボーンは自室に戻った。
そして何故、俺の部屋。
どうして「自室に戻る」と言って俺の部屋に来るんだろう。
色々とつっこむべきかと思いながら、めんどくさいことは好きじゃない俺は、その問いをごくんと飲み込むことにした。
まあいいか、で終わらせる自分が凄いなぁとも思う。
何年も同じことを繰り返して、自然と身につけたステータスというものかもしれない。

「リボーン、欲しいものないの?」
「特にこれと言った物はないな」

ちらりと俺を見て、欲しい物は自然と手に入る、とさらりと言葉を付け足す。
はいはい、そうですか。
本当にこいつは子供らしくない。まだ十代の子供のくせに、大人びているというか偉そうというか、まだランボの方が子供っぽくて可愛げがあるかもしれない。

(相変わらずお馬鹿だけどなぁ…)

変態かお馬鹿な牛柄、どっちがマシなんだろう。
…どっちを相手にしても俺の体力は擦り減っていくのは確かなんだけど。
俺の脳内でリボーンとランボが戦いを始めて、頭からリボーンの誕生日のことがぽろりと落ちそうになった。

「それにもう、誕生日プレゼントは貰ってあるしな」
「え、何?俺なんかあげた?」

リボーンの言葉で現実に引き戻されたけど、はっきり言って俺には全く記憶はない。
今朝も何が欲しいのかと聞いても、「特にない」という素っ気ない返事を頂いたから、当然準備なんてしなかった。

京子ちゃん達から貰った物のことだろうか。
リボーンとお揃いの手作りマフラーを「ちょっと早いけど」ってくれたっけ。
真ん中には大きめのイニシャルが入っていた。
俺は「T」、リボーンは「R」。
うーん、他に思いつかないからやっぱりそれのことなんだろうか。

顔に「分からない」とでも書かれていたのか、俺を見て少し呆れた風に「お前は相変わらず鈍いな」とため息をついた。
今までずっと手にしていた書類を、バサリとベッドの上に置く。

「鈍いのも程々にしろ。ダメツナ」
「な、なんだよ。鈍くて悪かったなっ」
「いや、鈍いというよりただの馬鹿か」

ふむ、と顎に手を置いて俺の顔をまじまじと見る。
黙っていれば美人なのに、言葉を発すると全くの別人に思えてならない。
見た目は良いんだ。
それは俺も認める。
…喋らなければ。
いっそのこと、ガムテープで口を塞いでやろうか。
それが出来たら俺はどんなに幸せだろう。
そんな叶わないだろうことを、リボーンを目の前にして考える。
すらりと伸びたリボーンの指が、俺の顎をグイと上に引いた。

(あ、リボーンの指って細いな)

肌の色も日本人とは違う白さを持っている。
指が綺麗な男は女の子にモテるのだと、どこかで聞いた気がする。どこでだっけ。
ぼんやりそんなことを考えている俺に、リボーンはそのままの体勢で容赦ない言葉を口にした。


「      」



「…は?」
「分かったか、ダメツナ」

言っていることの意味が分からなくて、我ながら間抜けな声を出してしまった。
一瞬ぽかんとしてしまったけど、すぐにその言葉の意味が分かった俺の顔は急激に熱くなる。

「な、な、なっ…」

きっと俺の顔は赤くなっているだろう。
絶対赤い。
リボーンはいつも通り、ニヤリと笑った。



「り、リボーンのすけこまし!」

俺からの今年の贈り物は、この一言だけで終わることとなった。





「俺は、お前がいればいいさ」




ボンゴレボスはリボーンにたじたじなんです

20081108





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