「ツナ」
「……」
「ツナヨシ」
「……」
「ダメツナ」
「……」
「マグロ」
「マグロってなんだリボーン!」
「なんだ、聞こえてるんじゃないか」
「………」

ああ、聞こえてるよ。
聞こえてるさ。
聞こえてますとも。
聞こえてるけど、聞きたくなかっただけだ。
いい加減、空気を読む能力を身につけてくれないだろうか、この男は。
死ぬ気の炎を出せるくらいの勢いで、そういうオーラを出しているつもりだったんだけどな、俺は。

「…で、何?」
「呼んでみただけだ」
「…よっ…!」

呼んでみただけ、だと。
呼んでみるだけで俺を「マグロ」と宣うのか、この男は。
もうそろそろ殴っていいか、この男を。
殴ってもいいよな、うん、俺が許す。

男の俺の誕生日に、情熱の赤い薔薇を贈った男、リボーンは昨日と変わらず、俺のベッドの上で偉そうに胡座をかいている。
クルクルと、指の先で黒色の見るからに高級そうな万年筆を器用に回しながらうーんと呟いている。
左手には書類。
どうやらリボーンは俺の部屋で仕事を片付けるつもりらしい。
まあ、大人しく仕事をしてくれるのなら構わないけれど。
けれど、何故俺の部屋にわざわざ足を運んでまで、仕事をするのか。
自分の執務室で終わらせる方が早いんじゃないか?
天然男の気まぐれか、それとも俺への新しい嫌がらせか。
ここらへんで、怒り狂う行動に出ることも頭を過ぎったけど、リボーンに何を言ってもすんなりとかわされるのがオチだと思い、諦める。
ああだこうだと言いながらも、付き合いは長い方だ。
リボーンと正面から戦っても、俺が疲れるだけだということはよく分かっている。
それなら、戦う前から負けていた方が、いっそのことまだマシだ。
負け犬根性だと言われても構わない。

とりあえず、時計の針が零時を示して14日に日付が変わった瞬間から、部屋に盛大にばらまかれたリボーンからの贈り物を片付けることに専念しようと思った。
結局、この凄い量の薔薇をどこで手に入れて来たのか聞けないままだ。
そして、丁寧にも薔薇の刺は全て綺麗に取ってある。
流石、変態だけど紳士的だと周りに評価されるだけのことはある。
薔薇は後で花瓶に活けよう。

変態だけど紳士、なリボーンに渡されたものはこれだけではない。
イタリアマフィアのトップに君臨するボンゴレの家庭教師だ。
俺とは金銭感覚も違うし、なによりリボーンという男は普通ではない。
人間という同じ生物とは思えない。
地球人ではないんじゃないか、大丈夫なのかこいつは、と思うこともよくあるくらいだ。

「ツナへの俺からの贈り物はこれだけじゃないぞ」と言って、リボーンから何かの鍵を渡された。
なんだろうとまじまじそれを見つめると、リボーンはさも当然のことのように「車だが?」と言葉を発する。
どうやら車の鍵らしい。

リボーンは、イタリアと日本は車線が違うから左ハンドルと右ハンドルの二種を、お前の好みの色が分からなかったからとりあえずカラー違いの二種を、計四台を用意していると涼しい顔をして言ってのけた。
ホストか。
俺は高級ホストクラブに勤めていたのか。
それより何より、俺まだ免許持ってないんだよね。





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