風が吹く、花びらが舞う。

それはまるで雪の様で、哀しみだけが心に染みていくものだから(ああ忘れてはならないんだ)と涙が頬を濡らすんだ。
また会えたら良いですね?と君が優しく笑うから、俺は手を伸ばすことも出来なくて。
素っ気なく、ああそうだねと呟くしかなかったんだ。


(夢の中だけでも会えたら良いね)

そんな俺らしくない言葉も頭をするりと巡ったけれど、きっと夢見る事もないのだろう。
彼は死んで逝くのだから、俺の夢なんて見てはくれないだろう。
俺は君の事を忘れる事は出来ないけれど、君は俺を忘れて逝くのだろう。
ああ天が俺を嘲笑う。
彼を生かす為に手にした力が俺を罵る。
永遠の命と永遠に繰り返す蘇生を君に与えたというのに、何故こんなに君を苦しめるのか。

「…君を苦しめ続けた俺が代わりに死ねたら良かったのに」
「おやおや、珍しく弱気なんですね。ふふふっ」
「…まあ、ね。君をそんな風にしてしまったのは俺だからね?」
「ふふ、死ぬ前にそんな弱気な梵天を見れるなんて。…良い事もあるものですね」
「…笑っている場合じゃないよ」
「…ふふふっ」

絡めた指も少し前まで薄い桃色だったくちびるも少しずつ色褪せていくから、ああもうさよならなんだなとぼんやり思う。
ひんやりとした指先にひとつくちづけを落とすと、銀朱は、恥ずかしい人ですねと花が綻ぶ様に笑ったから俺も小さく笑い返した。






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20090809
20150223修正





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