黒い柔らかな髪を、さらりと指で悪戯に空かすと、白い光がキラキラ揺れるから。
キラキラと世界は眩しくて、いつかパチンと弾けてなくなってしまいそう。
――ほら、君もなくなってしまいそう。
白いふかふかのベットの上で、居心地悪そうに見上げてくるレオナルドの身体には包帯。
首に、腕に、薄い青色をした服で隠れてしまっている身体にも。
右目には、彼を束縛するあいつの姿が見えるから、忘れてしまえるように白い眼帯を。
(ああなんて痛々しい、)
「右目の毒が亡くなってしまえばいいのに」
右の瞼にそっと微かに触れるくらいのくちづけをして、ぎゅっと君のてのひらを握ってみたら君はまた泣いたから。
(泣かせるつもりなんてなかった、のにな)
ごめんねってぽそりと呟いたら、君は涙をぽたぽた零しながら、「違うんです、貴方は悪くないんです」と必死に首を振るものだから。
優しい君、いとしい君。
魔法が解ける前に君をさらってしまえたら、…なんてね?
だってほら、この世界は僕らのものじゃないもの。
僕のいとしい君を、嘲笑いながら攫っていこうとするんだもの。
そんなの哀しいもの、駄目だもの。
「はなれるなんて許さないよ」
君がいないと僕は死んじゃう。
冗談なんて、そんなこと簡単には言わないよ。
全部ほんと、全部ほんき。
でも君を傷つけてしまった罪は消えないからね?
泣かした罰は快く受け取るよ。
「レオくん大好き」
「びゃくらんさま?」
せっかくニコリと笑ったのにそんなに困った顔して見上げないでよ。
離れられなくなるじゃない?
でも駄目。
待って下さい、なんて言葉は僕は受け入れないって決めたんだ。
「ずっと好きだよ。これからもずっと。嘘じゃないんだ。信じなくてもいいんだ」
(だから、抱きしめてみてもいい?)
細い身体をやんわりと抱きしめてみたら、甘い香りがふわりと鼻の先を掠めていってなんだか嬉しくて笑った。
そしたら君も、僕の背中に遠慮がちに腕をまわしてくれるから(なんだ、両想いなんじゃない)ってもう一度笑ったら(そんなの知ってるくせに)って睨まれた。
ああ君はとても可愛いね。ずっとないしょにしていたけどね、僕は君を初めて見た時から君に恋をしてしまっていたんだ。
右目に存在するもう一人の君が羨ましくて仕方なかったんだ。
ないしょだよ。
(ごめんねレオくん、だいすきレオくん)
白いベッドが赤く染まる。
僕の子供っぽさは冷酷だと昔誰かに言われたけど、なんだ僕にもちゃんと赤い血は流れていたんだね。
ゆらゆら揺れる視界には、ぼんやりと可愛い君が映っているんだ。
ああ、僕はやっぱり君が好きなんだなあと呟くと「びゃくらんさま」とぎゅっと掌を握ってくれたからそれだけで幸せなんです。
(またいつか逢えますように)
花びら舞う夢のなか、僕はそう祈ってた。
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花びら舞う世界の先は、ただ唯一の君なんです/ワンダフルワールド
20081005
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