いい関係

昼休みが始まって、まだそんなに経っていないというのに私は疲れ切っていた。

「お疲れだなー名前」

「…まあ、ね」

「で、結局断ったのかよ?もったいねーなもう二度とないチャンスだったかもしんねーのにヒャハハ!」

「倉持には言われたくないねそれ」

「はっはっは!確かになー」

「どういう意味だこら!」

「そういう意味だよ」

ようやく待ちに待ったお昼ご飯。
いつもの二人と一緒に駄弁りながら頬張るパンは美味しい。

ちなみにさっきから話題になっているのは昼休みになってすぐ隣のクラスの男子に私が呼び出されたことだ。
要するに、告白された。

そのことで今、この性格悪い二人にからかわれている最中。

「で、どんな子だった?」

「どんなって何が」

「顔とかさー」

「…倉持のがまだマシかなー」

「おいマシってなんだよ」

「いった!なんでぶつの!」

「うっせ」

倉持はこういう風にすぐ手が出なければいい奴なのに。
御幸は…どうしようもない眼鏡馬鹿。いい奴だけど。
なんでこんな元ヤンと眼鏡と仲が良いんだろうって最近自分でも思う。

後悔はしてないんだけどね。

「そんなことよりさ、次の練習試合の相手どこ?」

「あー…どこだっけ」

「つか自分の将来のことより野球優先かよ、お前もほんと野球馬鹿だよなヒャハハ」

「将来って、大げさ過ぎ。
それに今は恋人とかそういうのいらないし」

「うわー夢ないな」

「…んじゃ聞くけど、二人は興味あるわけ?」

どうせ興味ないんでしょ、あんたら二人も野球馬鹿なんだから。
分かり切ってはいるけど私だけ弄られるのも癪だから言い返す。

「そりゃあ俺らは健全な男の子だからなー多少なりとも興味はあるけど」

「…え、マジ?」

「ヒャハハ!お前だけだな野球馬鹿!」

「…なんか悔しい」

絶対二人とも興味ないって思ってたのに。御幸とか特に。
なんか裏切られた感。

ぶすっとふて腐れてパンを頬張る私を見た二人はまた笑いだした。
もう一々反応するのも疲れるしこれ以上仲間外れにされるのは嫌だから敢えて何も言わない。

そんな私を見てか、御幸がぽんぽんと頭撫でてきた。

「…なに、何のつもり」

「誰かさんがふて腐れてるから、慰めてんの」

「…傷口えぐられてる気分」

「おま、人の好意は素直に受け取れよ」

「誰のせいで心に傷が出来たと思ってんの?」

「ヒャハッ、だからこうして俺らが慰めてんだろ!」

御幸の手が離れたと思ったら、今度は倉持が豪快に私の頭を掻き乱した。
撫でるなんてもんじゃない、ほんとに、髪が乱れるほどに掻き乱された。

「…倉持のは好意が全く感じられないね」

「ヒャハハ!贅沢言うなっての」


目の前にいる眼鏡と元ヤン二人は、性格が悪い。
でも優しい。
そんな二人が、私は好き。

絶対二人にはこのこと言わないけど。

「まあ俺らも今は彼女とか作る気、つか余裕ねーから」

「なにそれさっきと言ってること違う」

「興味はあるけど作らないってことだろー」

「紛らわしい…!」

「ヒャハッ!勝手に勘違いしたのは名前だろ!」

あーもう、ほんとに性格悪いこいつら。
ムカつく。

「じゃあ青道が甲子園行ったら、私告白する」

「え?何を?」

「何をじゃなくて、誰にでしょそこ」

「え、だって名前に好きな奴とかいねぇだろ」

「…いるよ」

ほんとはいないけど。
たまには私が二人をからかってやるんだから。

「二人のどっちかに告白する」

「…は?お前どっか頭でも打ったんじゃねぇの」

間抜けな顔してじろじろ見てくる倉持。
御幸も同じく間抜けな顔してる。
二人は顔合わせて急な展開に困ってるみたい。

そんな二人をよそに、私は携帯を出して写真を撮った。
間抜けな顔した、二人の写真。

「あっはは!嘘に決まってるじゃんばーか」

「…だ、だよな。あーマジでビビった名前が彼女とか困るし」

「どういう意味だおいこら倉持」

「はっはっは!俺はキスならしてあげるけど?」

「お断りします」

あれ、なんかまた私が振り回されてる気が…。
さすがに性格悪い二人同時に相手するとなると勝てないみたい…。

まあでも、ほんとこんな風にふざけあえる仲間って貴重だと思う。
野球のおかげで二人と出会って、仲良くなって、毎日が楽しい。

この関係、もし高校卒業して離れ離れになっても、いつまでも続けていきたいね。

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