映画マナフィに登場したキャラ(設定)を含んでおります。
ネタバレが苦手な方はご注意ください。





旅の途中に訪れた大きくも小さくもない町。
サトシ達は旅の疲れを癒すため、この町で休息することにした。


「今日はここに泊まっていこうか」
「じゃあ、ポケモンセンター探さなきゃだな・・・って、何だ、あれ?」

ポケモンセンターを探して歩いていると、ざわざわと何かに群がる人々の姿。

「何かやってるのかな?」
「あれは、もしかしてマリーナ一座じゃないか?」
「マリーナ一座?」

何それ?とヒカリはタケシに答えを求めた。

装飾された大型車。
遠くからでも見える空中に浮かぶいくつかの水の球。
その球をポケモンや人間が飛び移る様は、見るもの全てが心を踊らせる見事な鮮やかさ。


「マリーナ一座は、色んな町で水中ショーを披露しながら旅をしているんだ。俺達がまだハルカやマサトと旅をしていた時に、偶々一緒に行動させてもらった事があったんだよ」

「ふーん・・・」
タケシの説明を訊きながらも、目線はだんだん華麗にエスカレートしていくショーに夢中になっていた。



「あの藍色の髪の人は?」
「あの人はヒロミさん。その隣で泳いでいるのはヒロミさんのお母さん」
「お母さんなの!?お姉さんかと思った!」
「なんだヒカリ。ハルカと同じこと言ってるぞ」
「だってそう思ったんだもん。じゃあ、あのオレンジの髪の人魚やってる人は?」
「ん?彼女は見たことないな、新入りの・・・」

急に声を詰まらせたタケシに、ヒカリは肘で小突きながら急かした。
「タケシ?あの人に見とれてるの?確かに綺麗な人だけど。ね、ポッチャマ」
「ポチャ!」

何故かものすごく驚いている顔で、いつまでも動かないタケシに、後ろでグレッグルが待機しているのを教えてあげた方がいいのだろうか。

「・・・あれ、そういえばサトシは?」
いつの間にか消えていた彼を目だけで探すと、群がる人の中に潜り込もうとしている姿を見つけた。
気づけばショーは終盤を迎えようとしている。彼は1番前で見ようとしてるのかもしれない。

「あーっ、サトシずるい、私たちも行くわよポッチャマ!」
「ポチャポチャッ」

勢いよく飛び込んだはいいが、盛り上がり最高潮のショーに合わせ観客の熱気も高く、どこをどう行っているかわからないまま人を掻き分けて進んでいく。

「何にも見えない。このままじゃショーが終わっちゃう」

やっとの思いで人混みから出たと同時にショーは拍手の喝采で包まれ終わりを告げた。

「あー、終わっちゃった。どうせなら遠くからでも見ておけばよかったな」
「ポチャー」
「・・・あ、サトシは見れたのかしら?」
辺りを見回すと、右手に見えたトレードマークの赤い帽子。


「サト・・・」
「カスミ!!」

駆け寄ろうとした足を止めた一言。そのまま近くまでいってもよかったのかもしれないけど。


「?・・・っ、サトシ!」


「カスミ」さんであろう人の、彼を見つけた後のとびっきりの笑顔が、私の足を躊躇わせた。
入れない空間がそこに作られた気がした。



観客が自然と守っていたショーとの距離を、サトシはいとも簡単に破って彼女に近寄る。

「久しぶりね、どうしてここに?」
「お前こそ。何でマリーナ一座にいるんだ?」
「誘われたのよ。マリーナ一座がカントーを旅してた時に、ハナダの水中ショーのことを耳にして、見に来てくれたの。そしたら水中ショーの勉強も兼ねて暫く一緒に旅をしないかって」

「へー、でもシンオウにいるんだったら連絡ぐらいしろよな」
「何処をどうほっつき歩いてるかわからない誰かさんにどうやって連絡取れっていうのよ。ここ暫く全っ然ハナダに連絡してないみたいじゃない」


「・・・いや、俺だって忙しいんだぜ?」
「バトルに熱中し過ぎてるだけでしょ」

図星を突かれたサトシは気まずそうに悪かったな、と呟く。

「とりあえず、このショーの後に裏方まで来れる?」

「ああ、当たり前だろ。またあとでな」




自然と交わらされた小さな約束。自分だってそれぐらいしたことがある筈なのに、なぜか酷く羨ましくなった。





 届かない
(伸ばした手はただ空を切る)






――――――――
ヒカ→サト+カス風味。

ただ映画で水中ショーが出たのにカスミがいなかったことが悔しかっただけの産物です。

とりあえず、タケシ途中から放置ごめん←
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