02


放課後、さつきが教室まで迎えに来てくれて体育館まで案内してくれた。



そして着くなり、赤髪の、私とそんなに身長の変わらない男の子を紹介してくれた。



「この子が赤司くん!バスケ部の部長さんだよ。私たちと同じ2年生なんだけど、キャプテンなの。なにか困ったことがあったら赤司くんに相談してね!」



赤司くん、とかいう子が手を出してきたので握手をした。



(ふーん…)



背は小さいけれど、手は確かにバスケをしてきた手だ。



男の子らしくがっしりしてる。



「君が名字名前だね。桃井から話は聞いているよ。...確かに美人だな。けれど、1軍だけのマネージャーを許したからには、彼らの刺激や成長になるようなサポートをしてやってくれ。頼んだぞ」



有無を言わさないような態度と言い方。



それに加え、自分の言動を正しいと信じて疑わない自信。



なるほど。これは2年生でもキャプテンになれるはずだ。



「りょーかい。頑張ります」



こうゆうのはささっと済ませたいので、簡単に終わらせとく。



赤司くんが一瞬、面を食らったような顔したけれど、すぐにさっきの自信と気品溢れる顔に戻ったので気には留めなかった。



*****


体育館が暑苦しいのは知ってた。からある程度は覚悟していたけど・・・



なんで体育館ってこんなに熱たまるの!死にそうだよまったく!



今が本当に5月なのかと疑いたくなるような暑さに、名前はこれが夏になったらゆでダコになるのではないかと思うほどだった。



制服の襟元をパタパタとしながら周りを見渡す。



意外と頑張って練習してる部員が多い。



…中学生の部活だからもっと手を抜いてるやつがいるのかと思ってた。



そんな早くもバテそうな私に見向きもせず、赤司くんが1軍を集合させる。



「1軍、集合!これから新しいマネージャーを紹介する」



赤司くんが横にいた私の背中を軽く押す。



1軍のメンバーがぞろぞろと輪っかになるように集まってきたので、その中心に割り込むように私が立っている感じになってしまった。

...これじゃまるでリンチの現場じゃないか。



「彼女は名字名前だ。1軍専用のマネージャーとして仕事をしてもらう。桃井は相手校のデータの収集や分析をしてもっているが、試合で使えるテクニックやそれぞれのトレーニング内容、部活後のマッサージなどは名字担当となる。分かったな」



赤司くんの簡単な紹介が終わる。



ここは名前でも言っておくかと口を開きかけた時...



「おい、赤司。女なんかに俺らのマネージャーなんて務まんのかよ」



...は??



初対面のくせにすっごい見下して生意気言ってきたのは青髪の男の子。



まぁ確かに女だと頼りないのは分かる。



けど、そこは練習と話をたくさんすれば大丈夫。



とりあえずここは穏便に済ませようとまた口を開きかけると、



「確かに。またどうせ黄瀬目当ての女だろう。練習に集中できなくなるのは迷惑極まりないのだよ」



今度は緑髪の子。



…ここにいる奴ら失礼すぎじゃない?



「まぁ黄瀬ちん見た目も中身も五月蝿いしねー。てか黄瀬ちん、この間入ってきたくせにもうレギュラーとか生意気〜」



続いて紫髪のやけに背のデカイ子。



「ちょ、見た目も中身も五月蝿いってヒドくねーッスか!俺、一応モデルなんスけど!それにレギュラー取れたのは俺の実力ッス!」



あ、こいつは知ってる。



確か黄瀬。



「ばーか。お前が強くなれたのは、すごい上手い師匠の青峰様のおかげだろ。つーか女の手なんか借りなくったって俺たちだけで十分やってけるっつの」



またしても青髪が私の神経を逆なでするようなことを言う。



というか、私にも堪忍袋っていうのがあってね…?



もう少し遅かったら全員を殴りつけようとしたところで、いきなり横から声がした。



「みなさん落ち着いてください。赤司くんと桃井さんがマネージャー頼むくらいですから、大丈夫ですよ」



「っぎゃあああ」



女の子らしからぬ叫び声も今は気にしてられない。



だって、突然っ、



「いつからそこにいたの!?」



横から男の子が現れるなんて!!



こっちは慌てているのに急に現れた水色の髪の男の子は落ち着いていて、



「あ、初対面ですもんね。僕は黒子テツヤです。」



と普通に自己紹介をしてきた。



「っあ、えっと黒子?くん。君、影薄すぎない??」



まだ混乱はしていたけど、黒子くんが見えていたので少しずつ落ち着いてきた。



「それ、よく言われます」



「あ、やっぱり」



バスケ部の1軍にしては珍しい小さめの黒子くん。



どうやってここで生き残っているんだろう。



「黒子っちは影薄いッスもんね!俺もそれくらい影なくしたいッスー」



語尾に星がつくんじゃないかと思うくらいシャラシャラしてるのはモデルをしている黄瀬くん。



こいつは校内で有名だから名前は知ってた。



「黄瀬、五月蝿いのだよ。例えお前の影が薄くなったとしても中身が五月蝿いから今と変わらないのだよ」



どぎついことを言うのは緑髪の子。



なぜか左手にテーピングをしていてウサギのぬいぐるみを持っている。



こいつもしかして...変人?



「おめぇら、ぐだぐたうっせーよ!とにかく!赤司。俺は認めねぇかんな。女に考えてもらうトレーニングなんて逆に体がなまるぜ」



ほんとにすごい言いようだな、青髪は。



殴るぞ?



「俺は赤ちんが決めたことならなんでもいーよ」



紫の子は私には興味がないらしい。



ずっとお菓子食べてる。



「静かに!名字の自己紹介もなしに勝手に喋るな。それに彼女の入部は俺が決めたことだ。逆らうことは許さない」



赤司くんの一声でみんなが一斉に口を閉じる。



ここでようやく私が喋ってもいい時間ができたらしい。



「あーなんか今の聞いてて全員が私のこと舐めてるのが分かったんで、そうゆうことは仕事始めてから言えよ、こらって感じです」



満面の笑みでそう言う。



女だからって舐められたら困る。



「んじゃ、自己紹介しまーす。名前は名字名前。やることはさっき赤司くんが言ってくれたから省略。バスケの経験はあるんで、ちょくちょくミニゲームとかも参加します。よろしく」



ニコッと笑ってハイ、おーわり。



あとは赤司くんに任せた。



「じゃあそれぞれの名前を。まず、俺は赤司征十郎。バスケ部キャプテン。背番号は4だ」



「黒子テツヤです。背番号は15です。」



「青峰大輝。背番号6番」



「黄瀬涼太ッス!背番号は8!よろしくッス〜」



「俺は緑間真太郎だ。背番号は7」



「おれは紫原敦だよー。背番号は5番〜」



ほほー。おっけ、覚えたぞ。



「ざっとこんな感じだ。とりあえず今日はここまで。明日から名字には練習に参加してもらう。それじゃあ解散!」



その声を聞き、みんなが散らばる。



黄瀬くんは青峰に1on1挑んでたり、緑間くんと赤司くんはなにやら相談してるし、紫原くんはポテチの袋開けてるし、黒子くんは…さつきにすごい勢いで一緒に帰ろうって誘われてる。



黒子くんご愁傷さまです…と心の中で合掌しておいた。



こんなんで試合でチームワークとか発揮できんの?と少し疑問を抱いたけれど、バスケでゆるいことなんてないし、なによりキャプテンは赤司くんだから大丈夫だろうと考えた。



初日から無条件で安心させられる赤司くんすごい。



そうして私も明日から全員の様子を見ようと帰路に就くことにした。







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