賽銭なんていらないわ(霊夢)
「参ったな……」

昨日、こんなに散らかっていてはこの霧雨魔法店にも客が来るわけがないと思い、散らかっていた部屋を一日かけて片付けた。なのに、あろうことか一晩で元通りになってしまっていた。
しかも前よりも散らかっている気がするのは、また魔理沙が変なものを集めてきたからだろうか。それとも、もともと集めていたガラクタや魔法グッズが昨日より溢れ出してしまっただけだろうか。どちらにせよ、おれの部屋にまで影響が出てしまっているのは変わりない。

「おい魔理沙、おれの苦労を返せ。散らかりすぎだよ」
「私は散らかしてないぜ。気づいたら散らかっているんだよ」
「お前じゃん」
「あー、分かった分かった。片付けておくから夜月は何処か行っててくれ」
「え、ちょっ」

魔理沙は無慈悲にもおれを家から無理矢理追い出した。なぜ彼女の部屋を片付けるのにおれが追い出されなければいけないんだ。昨日の疲れが溜まっているのだから、少しは休ませてほしいのに。
しかしいくらドアをノックしても返事が返ってこなくなってしまった。魔理沙のやつ、どうも様子がおかしい。きっと何か企んでいるな、とおれは予想を立て、触らぬ神に祟りなしの精神でそそくさと箒を掴み博麗神社へと飛んだ。


「あら、夜月じゃない」
「よう霊夢、邪魔するよ」

案の定そこでは霊夢が神社を掃除していた。おれはゆっくり箒から降りて、真っ先に賽銭箱へ向かい、なけなしの賽銭をチャラチャラとわざと音を出しながら賽銭箱へと落した。振り向けば、霊夢は目を光らせて頬を引き攣らせていた。きっと笑いを堪えているのだろう。

「霊夢、頼む」
「いいわよ」

一日ここに居させてくれ。という用件を伝える暇もなく霊夢に即答された。賽銭の力って凄い。
すると霊夢は何処からかお祓い棒を取り出して、ぶんぶんと振り回す。危ない。

「で、用件は?」
「聞いてから承知しろよ……えっと、家に居ることが出来なくなったので、一日ここにいさせてくれるか?」

すると霊夢は拍子抜け、と言った表情を浮かべる。どうした? と問いかけてみれば、なあんだ、と溜息が返ってきた。

「そんな用件か。妖怪退治でも申し込まれるかと思ったわ」
「え、じゃあ賽銭はいらなかった?」
「いるに決まってるじゃない」

ふふん、と何故かドヤ顔を浮かべる彼女に、おれは苦笑いしかできなかった。


「なんだか、こうやって二人でお茶するのも久しぶりだな」
「そうね。いつもは萃香や魔理沙がいたしね」
「萃香がいると、どうも酒臭くてなあ」
「アレは慣れるしかないわね」

二人で寝たり、掃除をしたりしているうちに、あっという間に夕方になってしまった。霊夢と一緒だと時間が経つのが早い。またいつでも会えるとはいえ、別れというのは寂しいものだ。また明日、と子供染みた約束でもするか。
そう思い、霊夢を見る。彼女も寂しそうな顔が綺麗な夕日に照らされていた。

「なあ霊夢、また来ていいか?」
「ええ、勿論。……今度は――


賽銭なんていらないわ
(貴方と二人になれるなら)


「霊夢と二人きりでお茶できたか?」
「できたけど」
「そうか。それなら良かったぜ」
「?」



bkm
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