「今年は晴れたんだなぁ!」
「去年は左近の不運が発動して準備出来た途端から雨降ってきたしな」
「……うるさい」
「まぁまぁ、左近。今年は晴れたんだからよかったじゃないか」
わいわいと騒ぎながら群青の制服に身を纏った四人組が、着々と花見の準備を進めている。時々悪態をつきながらもその様子は楽しそうで和やかな気分になった。
数分後、花見の準備が整うとまず三郎次が真っ先に寝ころんだ。
「あっ、三郎次ずるいんだなぁ!」
そう言って四郎兵衛もその隣に勢いよく寝っころがる。
「おい、四郎兵衛」
「左近も早くおいでよ! 風が気持ちいいんだなぁ!」
ぐっ、と左近は息を詰まらせた。四郎兵衛に説教をするつもりが、四郎兵衛のその満面の笑みを見てなにも言えなくなってしまったからだ。
「意地はってないでほら、よっ」
「うわっ」
びたんっ、と見事なまでにベタな効果音付きで左近は地面に倒れこんだ。
「おいっ、久作!」
「悪い悪い。せっかくだし俺も、っと」
キッ、と左近が久作を睨みつけたものの久作はまったく気にせずに自分が突き飛ばした左近の隣に寝ころぶ。
三郎次、四郎兵衛、左近、久作という順番で寝ころんでいる。
「あー、やっぱいいな。この時間」
「すごく穏やかな気持ちになれるんだなぁ」
「本当にな。普段の嫌な事が忘れられる」
「それってだいたい不運」
「うるさい久作!!」
左近が久作にそう言った途端他の三人からどっと笑いが巻き起こる。最初は納得がいかない、と言った感じで頬を膨らませていた左近も次第に目元を緩ませていた。
「また来年も花見、しような」
「うん」
「ああ」
「だな」
きっと来年で最後になるだろう。でもそんなことは四人とも言わずに、ただ穏やかに時間が過ぎていった。 
 
 
(2013年4月の十忍十色の無料配布物)
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