下腹部あたりがずきずきと痛む。普段制服のスカートの下にジャージをはいて、先輩たちと走り回っている自分ですらこの痛みにだけは勝てない。
「う……」
さらに痛みがひどくなってきた。昨日も酷かったけれど、今日はそれよりさらにひどい。ここまでひどいと流石に動くのも億劫になってくる。
(委員会、行きたかったんだなぁ……)
そんな事を思いながら、とりあえず一回波が引いた瞬間に先輩に今日の委員会は休むとメールして、なんとか家に帰らなくてはいけない。一人でお腹を抱えてうずくまっているのには慣れたけど、少しだけ心細い。
(次屋先輩……)
脳裏にちらりと、その面影がよぎる。頼りになって、でもどこか行く時には手を繋いでないと何処かに行っちゃって、周りを困らせちゃう、だけどそんな所も愛しいと思える人。きっと今頃は滝夜叉丸先輩か富松先輩に連れられて委員会に向かってる頃だと思う。
(次屋先輩がいてくれたら、)
一瞬そんなありえない願いを思ってしまった。それくらい、痛みがキツかったし、誰かに少しでいいから甘えたくて、その誰かは次屋先輩がよかった。だから、その声が聞こえてもきっと自分の頭が勝手に作り出した幻聴だと思ってた。
「しろ、大丈夫か?」
背中に暖かい温度が触れる。声だけなら幻聴かもしれなかったけど、このぬくもりが気のせいなわけがなくて、まさか、という思いを込めて振り返るとそこには次屋先輩が、いた。
「次屋、先輩……?どうして、ここに?」
「んー、俺がしろの所に行くって言ったら作ちゃんが送ってくれた」
「だから、どうしてですか……?」
「だってしろ、昨日辛そうにしてたから、もしかしたらいつものかな、って」
「それだけ、ですか?」
「うん、それだけ」
しれっと次屋先輩は言うけれど、昨日なんてまだあまりそこまでひどくなかったからいつも通り委員会で走り回って普通に過ごしていたのに、
それを、次屋先輩はなにかを悟って、今ここに来てくれたのだとしたら、
「ありがとうございます、次屋先輩。……嬉しい、です」
「うん。俺、しろが楽になるまで側にいるから。何かして欲しいことある?」
「じゃあ、少しだけでいいので寄りかかってもいいですか?」
「ん。おいで、しろ」
そういって広げられた次屋先輩の腕の中に寄りかかる。次屋先輩と触れているところから伝わる次屋先輩の熱が、労わるようにお腹のあたりをさすってくれるその優しさが嬉しくて、幸せで、少しだけ痛みが和らいだような気がした。
(生理痛ネタ/暴君予備軍なしろちゃんが生理痛には勝てないとかだったら萌えるとかってなゆが言ってた気がする……)

委員会でいつものようにいけどんマラソンをしていたはずなのに気付いたら俺の後ろには誰もいなかった。
「またか……」
これもいつもの事だ。気付いたらみんな迷子になっている。どうしようもない先輩と後輩たちだなと思いながら適当な岩に腰を掛ける。さぁっ、と吹く風が心地いい。
そこそこに流れていた汗もすっかり乾く頃、近くの草むらからがさがさと音を立てて揺れた。ちらり、と視線を向けるとほぼ同時に灰色の髪がぴょこんと動いた。
「しろ?」
「! 次屋先輩こんなところにいたんですね!心配したんですよ!」
名前を呼ぶと、勢いよく草むらからしろが出てきた。
「みんな迷子になるもんな。しろは大丈夫か?」
「迷子になったのは次屋先輩だけです……」
そう言いながら俺の所まで駆け寄ってきたしろはそのまま俺の手を取った。
「さ、行きましょう?次屋先輩。みんな待ってます」
「やだ」
「え、何でですか?」
「しろが俺に口付けしてくんなきゃやだ」
「そ、そんなこと言ってる場合じゃないでしょう?!」
「やだ。しろ、いつもいつも俺が迷子になるって言うし」
「だって、本当じゃないですか」
「ほら、また言った」
そう指摘すればしろは慌てて口元を自分の手で押さえた。
「しろ」
一歩も引かないと言外に声ににじませつつしろの名前を呼ぶと、しろの目が右へ左へと忙しく泳いで少ししてから、覚悟を決めたかのように俺をまっすぐ見据えた。
「ぼ、僕がしたらすぐ帰るんですよね?」
「うん。帰る」
「じゃ、じゃあ少し屈んでください」
「ん」
しろは頬を真っ赤にしながら俺に届くように精一杯背伸びをした。ちゅ、と一瞬触れたか触れないくらいの軽い口付けが俺の唇にあたった。
「……これだけ?」
「これ以上は勘弁してください……恥ずかしくて心臓が壊れちゃいそうなんだなぁ……」
「んー……じゃあまた今度、な?」
「えっ、」
「でないと帰らない」
「ーっ、わ、分かりましたっ!」
「ん。じゃあ帰るか」
とりあえずはこれでいいと思ってしろの頭を軽く撫でて、手を差し出す。
「はい!」
先までの顔の赤みを若干残らせつつも、すぐにしろは俺の手を取ってくれた。温かい。この温もりが愛しい。そう思いながらしろに手を引っ張られながら俺としろは裏々山を降りて行った。
(次しろ(っぽいもの)/正直申し訳なかったと思ってる/えろ描きたいけどどこか勇気が出てこないから1RTされたらほっぺにチュウで5RTされたらベロチューで10RTされたら服脱がせて20RTされたら愛撫させて50RTされたらここ一ヶ月まれに見ない体位で~/の産物)

「本当に、そう思ってるんですか、次屋先輩」
刺すような四郎兵衛の視線が痛い。俺の言う事を信用してない目だ。その事が悔しくて、軽く唇を噛んでから出来るだけ四郎兵衛を安心させるように優しく微笑む。
「当たり前だろ、四郎兵衛」
「僕は信用出来ません」
即座にそう返される。自分のこれまでの行動を思い出せば仕方ない事だとは思っても、やっぱり即座にそう返されるような過去の自分を殴りたくなった。
「四郎兵衛、どうしたら信じてくれんの」
「もう無理なんです、無理なんですよ、次屋先輩」
ポツリと俺がこぼした言葉に、俺の自惚れかもしれないけど、四郎兵衛は若干震えた声でそう返してくれた。
「だから、次屋先輩。あなたは僕の事なんか忘れて、生きてください。僕は次屋先輩が今更なにを言おうと信じません。来年、僕が卒業する時には僕は一人で歩き出します。だから、迎えにくる、なんてもう言わないでください」
四郎兵衛の顔は見えない。さっきから四郎兵衛は俺の方じゃなくて、俺から顔を背けて空を見上げている。
「ご卒業、おめでとうございます、次屋先輩。きっと、もう会うことはないでしょう」
一息にそう言って、最後まで俺の顔を見ようともせず四郎兵衛は長屋の方に駆け出した。
「四郎兵衛っ!」
反射的に駆け出す四郎兵衛の手首を逃がさないように握りしめる。
「っ、離して、ください……っ!」
「やだ。離さない」
しばらく離す、離さないの問答を繰り返した後、いきなり四郎兵衛が動きを止めてポツリと呟いた。
「最後の最後まで、次屋先輩はどこまでもわがままですね」
「わがままで、四郎兵衛を諦めないで済むのなら、わがままでいい」
「僕は……、本当に信じてないんです。次屋先輩はいつも約束を守らないし、いい加減で次屋先輩がやるはずだった体育委員長の仕事もほとんど僕がやってましたし、信じれないんです」
「……ごめん、四郎兵衛」
「今更謝っても過去は変えれないんですよ、次屋先輩。わがままばっかだし、いい加減だし、後輩の面倒もみないですし。委員会の仕事やってくださいねって言っても口だけわかった、って言って」
「……ごめん」
改めて聞くとなんて最低なんだろうと思う。
「それに、次屋先輩はきっも僕を迎えにこれません」
「なんで?」
「だって次屋先輩、まだ治ってないじゃないですか、迷子癖」
それを言われるとなにも言い返せない。
「でも、迎えに」
「信じないって言ってるじゃないですか。……だから、もう行ってください。お元気で、次屋先輩」
そう言って今度こそ四郎兵衛は長屋に向かって駆け出した。きっと、俺はあの手を取ることはもう無いのだと悟る。
「なんで、なんでだよ、四郎兵衛……」
ずるずるとその場に座り込む。 離したくないと始めて思えたのに。 側にいて欲しいと願ったのに。
「四郎兵衛……」
ただその体温を感じたかっただけだったのに。 ただ、ただ、それだけだったのに。
(たった一つすら/次→しろ/書いてくうちに迷走して最後よくわからなくなったよ\(^o^)//嘘つきな三之助を信じたいけど信じれない、信じちゃいけないと思ってるしろちゃん/実は両片思いだった、かもしれない←/重荷になるくらいなら忘れて欲しいとも思ってる)

「四郎兵衛」
名前を呼ばれる。まだ高めの、でも心地のいい声。
「四郎兵衛?」
僕が返事をしないのを不審に思ったのか今度は語尾が上がり気味で名前を呼ばれる。でも、僕はそれに返事をしない。だって、そうすると次屋先輩は何回も僕の名前を呼んでくれる。名前を貰えるのが嬉しくて、幸せな気分になる。名前を呼んでもらう、ということは気にかけて貰ってる、と言うこと。
(幸せ、なんだなぁ)
名前を呼ばれるのも、気にかけてもらえるのも、全部、幸せ。
(次しろ/ちょっとよくわかんなくなった/名前を呼んでもらえるって嬉しいよね)

気持ちいい風とちょうどいい温度。そしていい感じに晴れた空。絶好の昼寝日和だった。 昼飯の後の程よい満腹感とその昼寝するのに絶好の環境につられて縁側で寝そべりながらついうつらうつらし始めた時に、とたとたと、音を消しきれてない足音が床板を通して聞こえてきた。
(四郎兵衛の音だ)
姿を見なくてもわかる。みんなが迷子になる度にいつも一番最初に聞こえてくる足音だったし、なにより俺の所に来るような人でこんな軽い足音をしているのは四郎兵衛だけだ。足音が聞こえた時点で起きてもよかったけど、若干眠気の方が勝っていた俺は、四郎兵衛の反応が見たい、というのも少しあったけどそのまま寝たふりをすることにした。
「次屋先輩……? 寝てらっしゃるんですか?」
最初に聞こえてきた速度のまま俺の所までやってきた四郎兵衛が隣にぺたんと座りこんだ気配がした。寝ている俺が珍しいのか、しばらく何か考えたような感じで唸ってからおもむろに俺の髪の毛を触り出した。
「案外ふわふわなんだなぁ」
もふもふもふ、もふもふもふ、
「次屋先輩の髪の毛を触るの、なんだか楽しいんだなぁ」
そんなことをいいつつ四郎兵衛は何がそんなに楽しいんだ、と思うくらいしばらく俺の髪を触り続けた。
それでも、四郎兵衛が楽しそうに笑っている気配がしたからまあいいか、と許容することにした。あとどれくらい触られるんだろう、と思っていると不意に、四郎兵衛の手の動きが止まった。
「次屋先輩、好きです」
小さく、ぽつりと、まるで罪を告白するかのように罪悪感に満ちた言葉が降ってきた。
「あなたは、何とも思っていないんでしょうけれど、それでも、好きです。ごめんなさい」
ごめんなさい、が言い終わるか終らないかくらいに俺の唇に柔らかいものが当たった。 一瞬、掠めるだけの、口付け。
まるでこの口付けは覚悟の口付けで、四郎兵衛がどこか遠い所へ行ってしまうような錯覚を覚えた。
「ごめんなさい、次屋先輩。…………起きてるの、知ってました」
腹の底から絞り出したかのような、常の四郎兵衛にしては低い声でそう告げられて、俺がその言葉に気を取られている間に、四郎兵衛は立ち上がって俺のもとから走り去って行った。
「しろっ、」
慌てて四郎兵衛の手を掴もうとするが、四郎兵衛の方が少し早くて俺は四郎兵衛の手を掴む事もできずにその場に残された。
「なんでだよ、」
なんで、なんで、 俺が四郎兵衛の事を何とも思っていないわけないのに、なんで。
ぼんやりと四郎兵衛が去って行った方向を見つめる。どこか遠い所へ行ってしまうような錯覚がどうしても消えてくれなくて、どうしようもなく不安になった。
「四郎兵衛……」
ぼんやりと名前を呼んでも、応えは返ってこなかった。
(RTされたら四郎兵衛が楽しそうに笑って「あなたは、何とも思っていないんでしょうけれど」と言って唇に口付ける話を書いてください。 http://shindanmaker.com/198963 )

「なぁ、池田。お前ってさ、四郎兵衛の事どう思ってんの」
「え、いや、別にどうとも」
「ふーん」
気まぐれでそんなことを池田に問いかけると、すぐに焦ったようにそう返される。ちら、と池田の方を見ると額の辺りにうっすらと汗をかいていた。
「なぁ、俺ってそんなに独占欲高いと思う?」
「……」
しばらく沈黙が訪れる。五分たっても一向に池田は答える様子がない。
「まぁいいわ。お前が四郎兵衛に手を出さなきゃそれで」
牽制の意味も込めて軽く池田を一睨みする。例え池田が四郎兵衛の事が好きでも、譲ってなんかやるわけがないと再確認しながら四郎兵衛を探す為に立ち上がった。
(次しろな次屋と三郎次/完璧当て馬ですww/なにが書きたいのか意味がわからないよ)

血が、流れる。僕の右手首から、と僕の左手首に、血が、流れる。
僕の赤と次屋先輩の赤。
それをそっと混ぜ合わせて、一口舐めてみる。鉄のような、鼻に付く匂いがした、けど、不思議と甘く感じた。この血は、まだ僕たちが生きている証。それを実感しながら僕はもう一口命の水を口に含んだ。
(次しろ?/やんで……る?……あれ?)

いつも不安になると「大丈夫だ」と言って頭を撫でてくれた手があった。今はただそういう手があったということしか覚えていないけど、その代わりその手がどれだけ優しかったは覚えている。
「会いたい、な」
ついその言葉が零れ落ちる。会えるだろうか。自分を安心させてくれたあの手の持ち主に。
(次しろ/だったけど転生しろちゃんのつもりだったけど別にオリジナルでもいけるよねっていう)


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