そろり、と壊れ物を扱うかのような優しさで次屋先輩の指が僕の耳に触れる。
「次屋先輩、くすぐったいです」
「んー、」
軽く抗議をするものの、あっさりと流されて、そのまま次屋先輩の指が首に、目に、そして唇に触れる。
つつ、と唇の端から端までを軽くなぞられたかと思えば、指先で軽く圧迫される。
目があったのは、一瞬だった。
次屋先輩の顔が近づいてきたかと思った時にはもう唇が重なっていた。
「……ん、」
どちらのかすら分からなくなるほど、長く、唇を合わせた。
「……甘い」
溶けてしまうんじゃないかと思うくらい長い口付けが終わってようやく唇を離した次屋先輩が不意にそう言った。
「なにも食べてないですよ?」
「知ってる。四郎兵衛自体が、甘いんだ」
「次屋先輩は、時々真顔で恥ずかしいこと言いますね」
「だって本当の事だし。なぁ、四郎兵衛、もう一回」
「……仕方ない人ですね」
こてん、と首を傾げながら言ってくる次屋先輩が愛しくて、僕はまた快楽の波に飲み込まれていった。
(2012年11月24日の十忍十色の無料配布物)