引き戸を開けるとそこには、布団が一組しかなかった。

「あれ……?」

俺達の部屋は俺と作兵衛と左門で使ってるから布団が三組敷いてあるはずで、さっき俺が厠に行くために部屋を出たときも俺が使っていた分を含めて、確かに三組あったはずだ。
なのに、今俺の前には布団が一組しか敷いてなかった。

「作兵衛?左門?」

なんとなく既視感を感じるその部屋の中に一歩踏み込んで同室の二人の名前を呼んでみるも、当然のごとく返事は帰って来なかった。

(また部屋がどこかに移動した)

そう悟る。
別に俺の部屋が勝手にどこかに移動することなんて何にも珍しくない。
ない、のだけど。

(眠い……)

そう、眠いのだ。
今年になってぐんっと伸びた身長はまだ伸び続けてて、最近の俺はいくら食べても物足りないと感じるし、いくら寝ても寝たりなくて座学の時など居眠りしては作兵衛に起こされる、ということを繰り返していた。
ただでさえ普通に睡眠を取っていても眠いのに、今から移動した部屋を探していたら確実に睡眠不足になる。

「んぅ……」

どうしようかと考えを巡らせていると、目の前の、この部屋に入った時から敷いてあった布団の主──というかこの部屋の住人──が寝返りをうった。
寝返りをうった事によってその布団で寝ている人物の顔が俺の方に向いた。
誰の部屋なのか気になってその顔を覗き込むと、そこにはよく見知った顔があった。

口を半開きにしながら、くうくうと可愛らしい寝息をたてていたのは同じ委員会の後輩で、俺の可愛い恋人でもある四郎兵衛だった。

(ああ、だから)

だから、既視感を感じたのだ。
四郎兵衛に構って欲しくて度々この部屋に訪れていたから調度の配置とかを知らず知らずのうちに脳が勝手に覚えていたらしい。
そこまで考えたところでもう限界だった。
少しでも気を緩めたらぱったり倒れても不思議じゃないくらい眠かった。

(四郎兵衛だし、いっか)

そう思って四郎兵衛が寝ている布団に四郎兵衛を起こさないようにそっと潜り込んだ。

(甘い、匂いがする。柔らかい)

起こさないように、と気遣いながらも、つい四郎兵衛を抱き締めていた。
自分の部屋じゃなくて、四郎兵衛の部屋に着いた理由はわからなかったけど、考えるのは面倒臭かったし、なにより早く寝たかった。

四郎兵衛を抱き締めながら寝れる事に幸せを感じながら、俺の意識はすぐに眠りの中へと沈んでいった。



翌朝、二年長屋に四郎兵衛の悲鳴が響いたのは言うまでもない。

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