「しろべ」
名前を呼ばれて振り向くとそこには左近が立っていた。
委員会中に出来た怪我を見てもらうためにいったん委員会を抜けてきた僕の腕の治療をしてくれたのは左近で、たった今その保健室を出たのだから左近がいることに関しては何も不思議はなかったけど、なんで呼び止められたのかがわからず内心首をひねりながらとりあえず「どうしたの?左近」と、返した。
「もう、いいんだ、もういいんだ、しろべ」
左近の声が震えている。左近の視線は僕の腕に注がれていて、それで左近が言いたいことが何かは大体分かったけど、僕はあえてその言葉には何も返さずにただ微笑んだ。
「ありがとう、左近。でもね、やっぱり僕、次屋先輩じゃないとダメなんだ。だからこれからもきっと次屋先輩の後ろで、次屋先輩の帰る場所で在り続けたいって、思うんだ」
「でも、それでしろべは幸せなの!?あいつを追いかけて傷ついて!腕に怪我をするだけならいい。それくらいなら時がたてば治る。だけど、心は、治らない。僕は、いつかしろべの心が傷ついてしまわないか心配だ……っ」
「……大丈夫、幸せだよ。だって、次屋先輩の側にいられるんだもん」
ね?と首を傾げる。
左近は泣きそうな顔で首を横に振る。
「ありがとう、ありがとう。左近。僕は大丈夫だから」
僕の為に、ここまで心配してくれる事が嬉しくて、つい僕も左近につられて泣きそうになったけど、それでもこの道を選んだのは僕自身なのだから、と言い聞かせて何もなかったように委員会に戻るために振り向いた体を元の向きに戻した。
ああ、早く戻らなきゃ。
(次←しろ&左近/左近ってか次しろの保護者的存在に「幸せになれよ」っていうか「もう、いいんだ」的なことが言わせたかった/しろちゃんの片思い)



「いつか、しろの冬が終わるといいな」
「そう、ですね。僕も終わるといいなぁって、思ってます」
「なんだそれ、なんか他人事みたい。しろはそれでいいの?」
「はい。これでいいんです」
「ふーん、まあしろがそれでいいならいいけどさ」
「(だって次屋先輩の思いは僕に向かないでしょう?)」
(次しろ/終わらない冬、向かない気持ち)



診断で出た【RTされたら時友四郎兵衛が恭しく相手に口付けて「これで、お別れですね 」と言って首をかしげる話を書いてください。 http://shindanmaker.com/198963】が二つ。
一つ目が卒業、二つ目が死ネタ。

「次屋先輩、手を、貸してください」
今日は俺がこの学び舎から去る日で、同時にしろと別れなければいけない日だ。
きっと、これっきり俺たちは会うことはない。
だから、俺がいかなきゃいけないぎりぎりの時間まで俺としろで二人でこれまでの他愛もない思い出を喋りあっていた。
その矢先の、しろのこの発言だった。
「しろ?」
困惑する俺の声に構いもせずにしろはさっと俺の手を取り、掌にまるで何かを誓うかのように恭しく口付けた。
「これで、お別れですね、次屋先輩」
「え、あ、ああ、そうだな」
「次屋先輩は掌への口付けの意味を知ってますか?」
あくまで穏やかな瞳でしろは俺にそう問いかける。
「知らない」
「掌への口付けの意味は『懇願』。次屋先輩、僕は、あなたのこれからの道が幸多きものであるように、そう願いました」
「しろ……」
愛しさがこみ上げて抱きしめようとして腕をあげたらしろは困ったような笑顔をして首を横に振った。
「だめです、次屋先輩。今、そうしたらきっと離れなくなる。だから、だめです。あなたは、あなたの道を、歩んでください」
ね?というかのように、しろは首を傾げた。
「だから、さようなら、次屋先輩」
「……ああ、またな、しろ」
せめて、次に繋がるように『また』と言う。
ああ、どうか、また、しろと会えますようにと、願いをこめて、口だけで愛の言葉を囁く。
『好きだ、しろ』
置いて行く側の俺がなにをいっても白々しいとは思うけれど、 届かない言葉が、届けばいいと思う。
(次しろ/次しろのいくつかある卒業ネタの一つ)


【死ネタ】
視界が霞む。
多分血を流しすぎたんだろう。血が足りなくなって、なんだか寒くて、ぼうっとしてくる。
死ぬんだな、とぼんやりした頭の中でその言葉が浮かぶ。
別に、いい。
最後に僕はやりたいことがやれたし、このまま死んでもそれはそれでよかったと思う。
ただ、一つだけ悔いがあるとすれば、今僕の目の前にいる先輩を置いていかなければいけない事だ。
「泣か、ないで、ください」
かすれる声でなんとかそういっても次屋先輩の目からは後から後から涙が溢れてきている。
珍しいな、って思った。
いつもは僕が泣いて、それを次屋先輩が慰めるのが当たり前で、次屋先輩の泣き顔なんて一回か二回見たことがあったかもしれない、というくらい次屋先輩は僕の前では泣かなかった。
「逝くな。逝くな、しろ。逝かないでくれ……っ」
そんな先輩がこうして僕の為に泣いてくれて、こんな言葉を言ってもらえるのが嬉しくて、でももう言ってもらえないのかと思うと残念でもあった。
だから、 最後の気力を振り絞って、次屋先輩の手を取ってその手に口付ける。
「次屋、先輩。これで、お別れ、ですね。ありがとう、ございました」
次屋先輩に会えて、幸せで、楽しい日々を送れた。辛い時もあったけど、次屋先輩がいたから乗り越えることが、出来た。だから、『ありがとう
来世なんて信じてないけど、でも、もし、もし来世というものがあるのなら、今度こそ、次屋先輩と幸せになりたいな、と思いながら、僕は意識を手放した。
(次しろ/上診断の死ネタver)



【死ネタ】
いつかの夢の先にある未来を信じて日々を生きていた。
結局夢は夢で叶わなくて、今自分はあと少しで「時友四郎兵衛」としての生を終えようとしている。
背中に回された腕が熱い。僕の身体が冷たくなって行ってるだけかもしれないけれど、でも熱くて、嬉しかった。
もし死と言う夢の先にある未来を今度こそ信じるなら、きっと僕は同じことを願うだろう。
「ありがとうございました。次屋先輩。また、会いましょうね」
今の自分に出来る精一杯の笑顔でそう告げると次屋先輩の顔が歪む。
ああ、どうか、どうか。あなただけは、――――幸せでいてください。
(次しろ/死ネタ/シリーズのタイトル使いたかっただけ/そして始まる転生現パロ)



遥か前方にぴょこぴょこ動く銀とも取れる白い髪が見える。
――――見つけた。
後ろ姿しか見えないけれど、あの後ろ姿は、間違いない。あの子だ。
やっと、見つけた。
俺のたった一人の相手。
あれから、何度あの子のいない生を送っただろう。何度絶望しかけては、次こそと思っただろう。
ようやく、ようやく、手に入れられる。
もう、逃がさない。
もうあんな笑顔は、させない。
決意の代わりに薄く微笑む。
「今度こそ、」
そう小さく呟いてそうする必要がないとわかりながら、音を殺して、あの子に近づく。
「幸せにするから、しろ」
前の分も含めて、世界で一番の幸せを――――
(次しろ/なんか上の続きっぽいね……/だからきっと何度目かの転生後、しろちゃんを、見つけた次屋)





















【背後注意!】

「やっ……、やぁ、次屋、せんぱ、いっ……痛っ……」
「我慢して。しろ」
「そんなこと言ったって……ひゃっ?!」
「こんなに赤くして……」
「も、もう、やめてください……次屋先輩」
「だーめ。ここでやめて辛いのはしろだぞ?」
「そんなこと言ったって……、も、もう……」
「しろ、そんなに痛い?泣いてる」
「痛い、です……」
「でも我慢、な?」
「そんなこと言ったって……っ!」

「ねぇ、左近、あいつら何してるんだろうね……」
「怪我の治療のはず、なんですけどね……」
「「はぁ……」」
(次しろ/あろうことかバイト中に走り書き)


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