「アーサー!今日は一緒に寝るんだぞ!」
「寝言は寝て言え、バカ」
寝る直前、いきなり俺の部屋の扉が大きな音を立てて開いたと思ったら完全に寝る体制のアルが有無を言わせない感じで俺のベッドに潜り込んできた。
しばらく出ていけ出てかないの格闘をしていたけれど、そのうちそうやって言い合うのも馬鹿らしくなって渋々ながらもアルに布団をかけてやると、アルが嬉しそうな顔をして俺にすり寄って来るものだから、まあたまにはいいか、とつい思ってしまった。
「なんだかアーサーの匂いがするんだぞ!」
「臭い、ってか?文句あんのかよ」
「違うんだぞ。アーサーに包まれてる気がして安心出来るってことなんだぞ」
「ああ……そういえばお前とこうやって寝るのも久しぶりだな」
ここ最近、世界情勢の影響で俺もアルも仕事が増えて、仮に会えたとしても数分、と言った感じでお互いに忙しかった。
ようやく俺とアルの二人ともが丸々二日休みが取れたのが今日と明日の二日間だった。
その二日を利用していそいそと俺の家にアルが泊まりに来たのが今朝の事だった。
「……アーサーが足りなかったからまたあの夢を見てしまったんだぞ」
俺の肩口に顔を埋めながら拗ねたような口調でそうアルが呟く。
「そうか……」
アルが震えてる気がしてそっと背中を撫でてやる。
アルが言う夢、それは俺達が出会った頃に俺がアルにさせてしまった恐怖が元となった悪夢。
詳細は聞いたことがないけれど、それでも俺がアルの元からいなくなってしまうことだと聞いたときにどれくらいの悪夢なのかはだいたい察することができた。
「大丈夫、俺はどこにも行かねぇよ」
「……約束、なんだぞ」
「ああ、だから安心しておやすみ、アル」
こめかみ辺りになだめるような軽いキスをして睡眠を促す。
アルの背中を撫でつつ俺もそっと眠るために目を閉じる。
【愛し子よ、どうか穏やかに眠れ】
(どうか、アルがもうあの夢を見なくて済みますように)
そう願わずにはいられない。
(2012年4月15日世界会議無料配布物)