「食満、先輩。『作』って誰を呼んでんすか」真っ直ぐに見つめられる。鋭い眼光。こんな作を見るのは初めてだ。「さ、く……?」「その『作』は誰かって聞いてんですよ!」思わずといった感じで作が叫ぶ。「……俺が『作』って呼ぶのは作兵衛、お前しかいないだろ?」「違う!食満先輩自身わかってるはずでしょう!?俺はただの『代わり』だって!」「作……」「俺は……っ、俺は伊作先輩じゃねぇんですよ!俺を、見てくだせぇ……!」作の目の縁から涙が溢れ出す。ああ、そんなに苦しめてしまっていたのか。ごめん、ごめんな、作。


気持ち悪い、とか不気味、とか何回言われただろう。僕は、ただ、自分の首に愛しのジュンコを連れて、歩いて、日々を過ごしているだけなのに。普通の人にはそれが奇異に見えるらしい。白い目で見られて、陰口を僕が聞こえるように囁かれて。嫌になる。ああ、いっそ僕も逃げてしまおうか。ジュンコと共に。そんなことをずっと考えていた。そんな僕を竹谷先輩はまるごと受け入れてくれた。『毒蛇が好き?いいだと思うぞ。生き物を大切にするって事は思いやりが出来るって事だからな!』そういいながら破顔一笑した竹谷先輩の言葉は今も大切に心に留めてある。多分その時からだ。竹谷先輩がただの先輩じゃなくなったのは。いつでも明るくて、自分と僕以外は一年生しかいない生物委員会を手を焼きながらも必死で引っ張っていってくれる先輩。「孫兵ー?」「今行きますっ!」竹谷先輩の呼ぶ声がする。まだこの気持ちは伝えるには幼いけど、いつか言えたら、と願う。



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