目から勝手に涙が溢れる。僕が泣く理由なんてなにもないのに。「ほら、庄ちゃん。もう泣き止みなさい。私はこの通り大丈夫だから」と先輩は包帯を巻いた方の手で僕の頭を撫でながら笑う。僕を庇って出来た傷だ。悔しい。守られなきゃいけないのが悔しい。早く、強くなりたい。逆に先輩を守れるくらい。
(2011年12月12日)(庄鉢)

鉢屋先輩と不破先輩はいつも一緒にいる。一緒にいないのなんて委員会の時だけかもしれないくらい一緒にいる。「庄ちゃん……?」「はい、なんでしょうか、鉢屋先輩」「……なんでもない」だから、せめて委員会の間だけでも鉢屋先輩を占領したいと思うのは我が儘なのだろうか。
(2011年12月12日)(庄鉢)

「伊助、伊助」「何?庄左、」呼び掛けられて振り向くと同時に唇を奪われる。「ご馳走さま」ニコッ、と微笑んで自分だけ満足して庄左ヱ門は足取り軽く廊下を歩いていく。見ていたは組のみんなが「伊助、お前も大変だな」と言って肩に手を置いて去っていく。「しょ、庄左ヱ門の馬鹿ーっ!」
(2011年12月21日)(庄伊)

「孫兵っ!」今日も竹谷先輩は、快活そうな声で僕の名前を呼ぶ。最初はそれを疎ましく思っていた。なのにいつからか、僕は竹谷先輩に名前を呼ばれると言う事に嬉しさを感じていた。それだけじゃなくて、ふとした瞬間に竹谷先輩の事を見付けた時に胸が騒がしくなる。煩わしい、けど不思議と嫌じゃない。
(2011年12月28日)(竹孫)

「三ちゃん」名前を呼ばれると共に抱き締められた。「どうしたの?」顔を動かして兵太夫の顔を見上げる。「三ちゃん」また、名前を呼ばれる。逆光のせいでよく見えないけど、兵太夫が悲しそうな顔をしている気がして、身体を半回転させて兵太夫に口付けて微笑む。「溜め込まないで、ね?」「……うん」
(2011年12月30日)(兵三)

夜も更けた頃、用事を終わらせて部屋に戻ると雷蔵が寝間着姿でうたた寝をしていた。「布団で寝ないと風邪ひくぞ?」声をかけるも雷蔵は起きる気配がない。仕方ないな、と思いつつ布団を敷いてそこに寝かせる。穏やかな寝顔が愛しい。「なぁ、雷蔵。いつまで、この顔を使わせてくれる?」応える声は無い。
(2012年1月5日)(鉢雷)

普段は布の下に秘められた口をするすると暴きながら「好きだよ、伊作君」と可愛くて愛しい彼の耳元に吐息がかかるように囁く。驚いたのかビクッと身体を揺らすその仕草も、なにもかもが愛しく思えて、片腕をそっと彼の腰に回す。「ねぇ、伊作君。このまま君をさらって二人で暮らそうか」
(2012年1月20日)(雑伊)

「そうやって現実を見ないふりして、嘆いて。どうするつもり?」勘右衛門が仄かに微笑みながら迫ってくる。迫ってくる度に後ろにひいていたが背中にあたる硬い木の感触にもう逃げ場ないと悟った。「ねぇ、鉢屋。お前はどうしたいの?」頬に手を添えられる。「どうしたら雷蔵じゃなくて俺を見てくれる?」
(2012年1月23日)(勘鉢)



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