「ごめん、撫子。待った?」「そんなに待ってないわ。私も今来た所よ」待ち合わせ時間から十分ほど遅刻した俺の顔を見た途端、撫子は起こるより先に花が綻ぶような笑みを俺に向けてくれた。たったそれだけの事なのにそれがどうしようもなく愛しく思えて気付いたら俺は撫子に軽い口付けを落としていた。
(2011年12月8日)

いきなり唇をペロ、と舐められる。驚いたがすぐにキッと円を睨む。睨んだ私の顔を見た円は口許を笑みの形に歪め「あなたの怒った顔はやっぱりそそりますね」と余裕の表情で言った。それが悔しくて私は思わず円の胸元を掴んで円の顔を無理矢理近付け背伸びをして同じ事をする。負けっぱなしなんて嫌だ。
(2011年12月8日)

「……寒い」少し薄着だったかもしれない、とか思っていると「あなたバカですか?こんな寒いのにそんな薄着で来るなんて正気とは思えないですね」と嫌味っぽく言われた。けれど背中に感じる温かみで円が自分の上着を私にかけてくれたのだとわかる。そんな不器用な優しさを発揮する恋人が愛しいと思う。
(2011年12月10日)

「お前ってホント、バカだよなー」「ちょっとちょっとー、いきなりなんですかー?カエル君」「え、何?お前わかってねぇの?」「だから何がですー?」「自覚なしかよ……手に負えねぇな、まったく」「ちょっとカエルくーん?一人で納得しないでくださいよー」「お前は一回自分と向き合えって事だよ!」
(2011年12月17日)

「ねぇ、撫子くん」「何?」名前を呼ぶとすぐに応えてくれる。「……すいません、実はなんでもないんですー」笑いながらそう言うと、いきなり頬を両手で包まれた。「嘘。何か用事があったんでしょう?」真剣な表情でボクを見つめる翡翠の瞳がやけに綺麗で。首を少し伸ばして間近に来た唇に口付けた。
(2011年12月23日)

「撫子?こんな所で寝てたら風邪引くよ?」「ん、わかって」る、まで言い切らないうちに再び夢の世界に入ってしまった恋人を見ていると愛しさが溢れてくる。この、自分が壊してしまった世界で自分はこんなに幸せでいいのだろうか、と思う。「たか、と……」それでも、目の前の恋人を失いたくはなくて。
(2011年12月26日)

さらり、と手から髪が流れる感触が心地いい。撫子の寝顔を見るのは最近では少なくない。「無防備過ぎ、だろ」幼馴染みだったからとは言え、仮にも男の、恋人の部屋で寝入ってしまうとか誘ってるようにしか思えない。だけどしばらくは穏やかな寝顔を見ていたくて撫子を起こさずにそのままにする事にした。
(2011年12月28日)

「撫子、すまぬが来てくれぬか?」「すぐ行くわ」終夜に呼ばれるがままに終夜のもとに行くと手首を掴まれてぐいっ、と引き寄せられる。半ば倒れるような感じで終夜の腕の中に抱き留められる。「いきなりすまぬ。だが、今だけはそなたを感じさせてくれ」答えの代わりに私はゆっくりと身体の力を抜いた。
(2011年12月30日)

髪を撫でられる。愛しいものを壊さないようにそっと触れるかのように撫でられる。「ねぇ、撫子君」「何?」「好きですよ、誰より君のこと」そう言ってレインは私の髪を一房掬い上げて、唇を落とす。「私もよ、レイン。あなたの事が誰よりも好きだわ」
(2012年1月4日)



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -