「ア、アーサーさん、一緒に寝させていただいてもいいですか?」
「…………はぁ!?」

深夜二時四十分、いきなり菊は爆弾発言をかましてくれた。
昨日は今日から始まる会議の為に菊がホスト国でもある俺の家に二人で過ごす為に少し早めに来て、色々話したり食事をしたりしたあとにまた明日、と別々の部屋に別れて寝たはずだ。
いや、実際ついさっきまではそうだった。
菊はわからないが少なくとも俺はぐっすり寝れていた。
だけど、部屋のドアをノックする音が聞こえてこんな時間に誰だ、と思って起き上がったら、菊が俺の国旗柄の枕を抱えて俺の部屋に入ってきたのだ。
そして、冒頭の台詞を言って、俺のベッドの中に入ってこようとしている。

「ちょ、ちょっと待て、菊!」
「すみません、待てません、失礼します」
「って、すでに俺のベッドの中に入ってきかけてるよな!?」
「すみません、失礼してます」
「そうじゃねぇだろ!!」

正直、勘弁してほしかった。
菊と二人っきりでいるときや部屋に別れる時など、理性を総動員して欲望を押さえたのだ。
なのに、今、菊はパジャマ代わりなのだろう浴衣を一枚着ているだけで、なおかつさっきまで寝ていた証でもあるかのような感じで着崩れているのだ。
同じベッドで寝ていたら理性なんてどこかに飛んでいってしまうこと請け合いだ。
菊は布団の中に入って来ようとして俺はそれを阻止しようと布団を必死で押さえると言う攻防戦の最中にそんな事を考えていたのだが、ふと菊の瞳を見ると若干潤んでいた。

「菊……どうした?」

それを不思議に思って、布団を押さえる手を菊の頬に手を伸ばすと菊はビクッと身体を揺らした。

「夢を……、悪夢を見たんです。アーサーさんに、拒絶される夢、を……」
「俺が、菊を拒絶……?」
「はい。今まで見たことがないくらい冷たい目をされていました。そしてそのまま無言で私から背を向けていくら呼びかけても振り返ってくれなくて……」

菊はそこまで言ってからその悪夢を思い出してしまったのか、泣きそうな顔になった。
(あー、もう、しょうがねぇなぁ……)
そう思いつつ頬に伸ばしていた腕で菊の手首を掴み、もう片方の腕で菊の腰を掠って、俺のもとに引き寄せた。

「俺は菊を拒絶なんかしない。だから、今日はここで眠ってけよ」
「アーサーさん……!ありがとうございます!」

一晩中理性と戦うしかないと覚悟を決めていると、パァアアと蕾が綻ぶような笑顔でお礼を言われてさっそく理性が試された。
顔を赤くしながらなんとか理性に打ち勝つと、菊を抱き枕のように抱き締め直して菊に布団をかけてやり、髪にそっと口付け、そのまま優しく囁いた。

「今度はいい夢みろよ」
「アーサーさんが側にいてくれるなら大丈夫です。おやすみなさい」
「ああ、おやすみ。菊」

【ぬくもりを感じながら】

次の日、アーサーが寝不足になったのは言うまでもない。



(2011年9月25日名古屋世界会議無料配布物)

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