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▼ 駄々っ子が なかまに なった



 たどり着いたテニスコートに見事に女子の姿しかなかった。ヨッシャと心の中でガッツポーズ。と思っていたのだが声に出ていたようで前を歩いていた彼女が振り返ってしまったのでなんとか笑ってごまかす。不思議そうに首を傾げつつもそれを彼女が口にすることはなかった。
「柳生さん、相方さん居そう?」
「ええっと…」
 二人で同じようにきょろりきょろりと視線を彷徨わせていると、目の前の彼女が突然傾いた。と思ったらもう一人増えていた。しかもまったく同じ容姿なのである。柳生比呂子が分身した。片方の彼女の肩にもたれ掛かってこちらをちらりと見やるその人。その姿でその体勢はとても違和感があった。表情は会った当初の綺麗なものとは違って少し怪しい雰囲気を纏ったものだった。
 その気だるげな方がおそらく柳生の相方なのだろう。原作と同じなのであれば。
「わーおなあにこれえ、柳生さん分身できるんだねえすごいねえびっくりしすぎて頭痛いかな」
「だ、大丈夫ですかっすみません仁王さんが…!」
「ううん大丈夫。とりあえず美人さんが二人になったから私幸せ」
「…おかしな人ですね」
 心配そうにオロオロと右往左往し始めた柳生本人とは反対に、相方であろうその人がのんびりと口を開いた。わずかに首をかしげて、今にもあくびがでてしまいそうなくらいねっとりとのんびりした声だった。
 仮にも柳生比呂子に変装しているのだろうに、態度がまったく柳生比呂子ではないとはこれはどうしたものか。それとも本当に眠くて思考が働いていないのだろうか。
 記憶にある柳生の相方はもっと完璧に変装をこなしていたと思うのだが。

 その態度に柳生も違和感を覚えたのかなにか咎めるように彼女の名を呼んだ。眼鏡とウィッグをはずして彼女が応える。白い頭が顔を出した。
「…やぎゅー、なんなんじゃこいつ」
「初対面の方になにとは失礼でしょう」
「じゃってー」
「じゃってじゃありません。彼女は浪川悟さん。同じ三年で今日から立海に転校されてきたそうですよ。同じクラスになるかもしれませんしそう邪険に扱ってはいけません」
 母のようにピシャリと叱った彼女はクルリと体を反転させ、こちらを向いたかと思うと綺麗に頭を下げた。
「仁王さんが失礼なことを言ってすみません。彼女も悪い子ではないのですが」
「あ、え、別に気にしてないよ。というかその子、仁王さん?がダブルスのパートナー?」
 ええ、と頷いた柳生とは対称に、仁王はふい、と視線をはずしてふてくされたように口をすぼめた。
 己の知っている仁王とは少し性格が違いそうだなと思った。記憶にあるその人はもっとひょうひょうとしていたと思うのだが、目の前に居る彼女は単純に少しぶっきらぼうで愛想が悪そうだ。女子特有の面倒くささだろうか。女子は変なところで気難しいものだ。
「ごめんな仁王さん。これから柳生さん借りるよ」
「は、な、聞いとらん!どういうことじゃやぎゅううううううう」
駄々をこねる子供のように涙目で仁王が柳生の首元に抱きつく。やだやだ、ぐずぐずと泣きじゃくって止まない彼女をどう対処しようかと見ていれば柳生が逆光のすごい眼鏡のブリッジをくいっと押し上げて息を吐いた。

「先程浪川さんに学校を案内すると約束したのですが…こうしてる間にも時間がなくなってしまいます。というわけで仁王さんも行きますよ」
「ん?」
どいうことだってばよ、と本日二度目のうずまきくん口調で零してみるが、それは目を輝かせた彼女の言葉にかき消された。
「わかったぜよ!」
「…立ち直り早いね。てか美女二人に案内してもらえんの?なにそれ素敵」
「無駄に時間をとらせてしまってすみません。では行きましょうか」
くるりと踵を返して背筋を伸ばして歩き出した彼女はまるでできるキャリウーマン。のはすなのだが、駄々っ子がその背に引っ付いたままなのでたくましいママさんにも見えてくる。

正直うらやましい。あんな美人さんにベタベタと触れていることが。しかしだ、気分はむしろ高揚している。理由は至極単純で、見目麗しい少女二人が傍から見ていちゃいちゃとしている光景は大変眼福この上ない。誤解のないように記しておくと自分は断じて同性愛者ではない。
だがしかし、しかしだ。やはり女子二人のこうしたやり取り、光景は好物といっていい。あの階段からの落下時、願ったあれは本心だ。

ハーレム。

半数以上の男が一度は夢見るそれを自分も夢見た。やはり、かわいいものは目にも心にもやさしい。


内心ホクホク気分で口元が緩みそうなのを必死で我慢していると、白い頭がぐるりとこちらを振り返ったと思ったら不機嫌顔で出迎えて一言。
「さっさと来んしゃいばーか」
「ちょっとイラッとするけどかわいいから許す!」

 



女の子仁王ちゃんはすっごいめんどくさがりでそんでもってめんどくさい性格してるといい。本来の飄々としてる感じじゃなくて駄々っ子。そして柳生にべったり。親子同然。
あと、仁王ちゃんは細身でボインきぼんぬ

会話文ばっか(白目)
(13.11.21/ユエ)


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