ありすと片山でポ●キーの日
移転前のブログで昔書いた、ポ●キーの日小話を再UPです。
ありすは、片山のことが無自覚に好きで仲良くなろうと近付くも、いざとなると(自分は一体何をしてるんだ!?)って恥ずかしくなっちゃう子。
片山は、ありすのことが好きだがそれを認めたくなくて、勘違いだと思い込もうとしてる時期。
ってのを前提に読んでいただければ……。
……………………
「ねぇ、片山。今日は何の日か知ってる?」
ラーメン屋の営業時間終了後、後片付けをしながらありすさんは問いかけた。
「十一月十一日っスか?鮭の日じゃなかったですっけ?」
僕は手元のラーメン鉢やコップを洗いながら答えた。
「は?鮭?」
「魚へんに十一十一で圭って書くからっスよ」
空中に鮭という漢字を書きながら、真面目に理由を説明してやる。
しかし、彼女は呆れた顔で大袈裟なため息をついた。
「今日はポ●キーの日よ。そんなことも知らないの?」
僕は話を逸らすことに失敗し、彼女が予想通りの話題を出したことにあからさまに嫌そうな顔をしながらも、話を聞いてやる。
もちろん、そうしないと後が怖いからである。
「ね!ポ●キーゲームしましょ!ポ●キーゲーム、ポ●キーゲーム、ポ●キーゲームー!!」
耳を両手で塞ぎながら、また面倒なことを言い出したと思いながらも、僕ははいはいと返事をする。
もちろん、そうしないとただじゃ済まないからである。
「じゃあ、ポ●キー取ってくる。片山は後の片付け全部よろしく!」
不幸の女神は今日も自分に微笑んでいるのか……、と疲れを感じながら、渋々片付けを引き受ける。
もちろん、そうしないと恐ろしくて今後ここでバイト出来なくなるからである。
彼女は大変子供っぽくわがままだ。
「ポ●キー持ってきたわよー!」
片付けの手を止め、ポ●キーを食べる。
普通に食べるな、とやはり彼女は怒った。
仕方ないので、ポ●キーをくわえる。
もちろん、理由はもう言わなくてもご理解頂けると思う。
一体どんな悪だくみを考えているのだろう?
恐ろしくてしょうがないが、さっさと済ませるには大人しく従うしかない。
「離さず多く食べた方が勝ち。負けた方は、これから一週間パシりよ!じゃあ、スタート!」
きっと僕が勝っても何かしら理由をつけてパシりなんてしてくれないだろうに、と嘆きたくなる。
ありすさんは、僕がくわえたポ●キーのチョコの付いていない方をくわえた。
なんで私がチョコが付いてない方なのよ、と怒られるかと思ったが彼女は怒らなかった。
僕は適当なところで負けてやろうと思いながら、チョコの付いた方を食べていく。
ありすさんもプレッツェル部分を食べている。
少しずつポ●キーは短くなっていく。
お互い、半分近くまで来た時、ありすさんが急にポ●キーを離した。
「ありすさん?」
負けず嫌いの彼女が負けるとは珍しい。
普段なら、僕に対してどんな卑怯な手でも使ってくるというのに。
「よく考えたら、これって恋人同士でするものよね。片山、美人で可愛いありすちゃんとキス出来なくてさぞや残念でしょうけど、諦めてね」
そう言い残して彼女は帰った。
当然、一度押し付けた片付けは残したまま。
今後、僕に恋人が出来ても、きっとポ●キーゲームはしないと思う。
だから、こんな機会は二度と訪れることはないだろう。
が、しかし、全く、全然、これっぽっちも残念ではなかった。
むしろ、助かったと思ったぐらいだ。
彼女の相手はバイトより疲れる。
……………
あとがき
2人の仲が進展するまではまだまだかかりそうです。
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