剛士から急な呼び出しを食らった。 家でくつろいでいたら、剛士からメールが届いたのだ。 その内容は、"今すぐボキんちに来て"……去年と全く一緒だ。 去年の今日、つまり去年の10月31日にも、私は剛士から全く同じメールを受け取った。 ワクワクしながら剛士の家に向かった私を待っていたのは、ドラキュラの仮装をした剛士で。 お菓子を持っていなかった私は、剛士にイタズラされてしまったのだ。 …でも私も、学習能力がないほどバカじゃない。 「今年はお菓子、持っていくもんねー」 私はバッグに大量のお菓子を詰めた。飴、ガム、グミ、クッキー、マカロン、その他諸々。まさに完璧、完全防御だ。 これなら剛士にイタズラされないで済むだろう、剛士はガッカリするだろうな。 鷹を括って、私は剛士の家へと向かう。そんな私を出迎えたのは。 「よ、なまえ。ハッピーハロウィン!」 黒いとんがり帽子をかぶった、どや顔の剛士だった。 「あー、うん」 やっぱりね。そう思ったけど顔には出さず、私は薄い反応を返す。想像通り、剛士は不服そうな顔をした。 「相変わらず薄い反応だな」 「まぁ…、それより今年は何の仮装なの?」 「よくぞ聞いてくれた!」 高笑いした剛士は、「魔法使いだよ」と言った。そう言われてみれば確かにそんな感じだ。手にステッキ持ってるし。 「…ってことでなまえ、トリック―――」 「残念だけど剛士」 私は剛士の言葉を遮る。そしてバッグから飴を取り出した。 「さすがに今年はお菓子を用意してるよ!」 「え、」 びっくりする剛士。ははは、驚いてる。今年は去年みたいなイタズラをされるワケにはいかないもんね! 「足りないのならまだまだあるよ!」 次々とお菓子を出してみせる私を、剛士はしばらく見つめていたけど。 「…ぷっ、」 吹き出した。おなかを抱え、おかしそうに笑う剛士に、私は戸惑ってしまう。 「それで勝ったつもりかよ、なまえ」 「な、何がさ?」 どうせハッタリでしょ、と私は強気な態度。でも剛士は平然として言った。 「さてと、イタズラの方だけど」 「え?」 剛士の言葉に、私はきょとんとする。 「私、ちゃんとお菓子をあげたじゃない。イタズラはなし、でしょう?」 すると剛士は私を見て。ニヤリ、と妖しく笑った。 「残念だけどなまえ、ボキは一言も"トリックオアトリート"とは言ってない」 「…は?」 意味不明だ、一体剛士は何が言いたいんだろう。 考えているうちに自然と眉を寄せていたらしい、「皺になるぞ」と剛士に眉間をつつかれた。 「私はまだ若いから平気なの。てか、どういう意味なの?」 「つまりさ」 剛士はいつもより低い声で、囁いた。 「トリックアンドトリート、お菓子くれてもイタズラするぞ?」 …どうやら今年も、私は剛士にしてやられたらしい。なんだか悔しい、けれど憎めないんだよなぁ。 「…はぁ」 私の小さめなため息は、剛士にも届いたようだ。ニヤニヤと笑われてしまう。 「…で?」 私は目を逸らすと、剛士に訊ねた 。 「イタズラって何をするつもりなの?」 「それはさ」 剛士は去年と同じ、満足そうな笑みを浮かべた。 「ボキの虜にする魔法をかけるってことで、」 イタズラ決定、そう言った剛士は私にキスをした。…アホ剛士、もう既に虜になってるってーの。 Trick And Treat! (お菓子も、イタズラも) --------------- 遅くなってしまってすみません! すっかりハロウィンは過ぎてしまいましたが、第3位のつるのさん夢をアップしました。 ちなみに、去年に行ったハロウィン祭りで書いた、つるのさんの彼女と同じヒロインです。 戻る |