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泣き虫に笑う


 俺の幼馴染みは昔から泣き虫だった。だが、それを決して悟られようとはしなかった。よく部屋の角に縮こまっては、声を殺して泣いていたのを俺は知っている。誰にもばれないようにひとりで泣く彼に、寂しいような、歯痒いような。俺に頼ればいいのに。何度もそう思った。そうしたらきっと、これでもかと甘やかしてあげるのに。彼がそうしないのは、自尊心のためなのだと理解はしていたが同時に頼ってもらえないことが悔しくもあった。

「俺、お前のこと好きなんだよ」

 そんな彼が俺の前で泣いた。
 初めてだった。小刻みに震える身体を抑えようと強く握られた手は白くなっていた。掠れた声で、こんなこと言ってごめん、困らせてごめん、そう何度も呟いて。

 戯言のように繰り返す彼を思いっきり強く抱きしめてキスをしよう。耳におでこに頬に鼻に、唇に。たくさんたくさん甘やかして。彼は驚くだろうか。はたまたどうしてと怒るだろうか。

 そうして彼は泣きながら笑うのだ。


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