「えーっと、取り敢えず遅くなってすみません!迷ってました!」

「佐藤…遅い!
…先生な、お前が中々来ないからみんなからエイプリルフールでもないのに転校生が来るなんて嘘吐くんじゃないって言われたんだぞ!」

「すみませーん!だって場所ちゃんと教えてくれなかったのは先生じゃん!
…あ、担任が言ってた噂の転校生の佐藤りさです。
神奈川に来たてで分からないことばかりなんで皆さん色々教えてくださーい。よろしくね!」

「そこで自己紹介するのか…。」


先生からの説教をさりげなく避けようとした私の発言で先生とコントのようになってしまったせいか、クラスの生徒が笑いだす。
活発そうな男子生徒が佐藤面白すぎ!と言って爆笑したりと、クラスの空気が明るい雰囲気になる。
これは自分の第一印象上手いこと成功したなーとつい自画自賛する。
お得意の営業スマイルでにこにこ笑っている私を見かねた担任は呆れ顔でまぁみんなが歓迎してるから良いか…と呟く。
先生ありがとー、と私が言うと、…そこの空いてる席に座りなさいとため息を吐きながら席を指差す。
この担任は意外と扱いやすいし当たりだな思いながら指示された席まで歩く。
私の席は一番後ろの窓際で、かなり居心地が良さそうな席だ。
居眠りしてもあまり怒られないなーと内心喜びながら自分の席に座る。
そして隣の席の男子生徒によろしくねと挨拶をする。男子生徒もこちらこそよろしくと微笑んで挨拶をする。
一瞬ドキッとする。いや決して一目惚れをした訳じゃない。
その男子は本当に男子かと一瞬疑問になるくらいの美人な子だったからだ。
彼はかなりモテる部類だと直感的に判断出来る程、女の子が好みそうな顔立ちをしている。
そう私が思っていると、彼は微笑みを維持しながら私に話しかける。


「俺は幸村精市だよ。分からないことがあったら気軽に聞いてね。」

「幸村くんだね。ありがとう!多分色々聞いちゃうだろうけど、その時はよろしくね!」

「…ふふっ、うん大丈夫だよ。」


こんな社交辞令であるやり取りを出来る彼は年齢以上に大人な子だと理解する。
前の席の女の子が顔を赤くさせチラチラと振り向きながらこちらを見てくる。
多分このクラスだけでも彼を好いている人間は少なくないだろう。
平穏な生活をしたいので面倒事には巻き込まれたくはない。
最低限な絡み以外はあまり関わりすぎないようにしようと彼を注意人物と自分の中で認識しつつ、鞄から荷物を取り出す。
私は普通の高校生活をして少しだけ青春さえ出来ればそれでいい。
なるべく人に嫌われるような真似はしたくない。
取り敢えず、残りの二人は上手いこと出来てるだろうか。
そう妹想いのお姉さんの気分になりながら少しだけ不安になって小さくため息を吐いた。

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