3ぶんこ。



「おりゃー!!」

「負けるかぁ!!」

「〜〜〜っ!!」


本日、ミーティングのみで終了となった部活後。
有り余った体力を発散する為、自転車で爆走する子供達。


「いっちばーん!!」

「にっにばん…っ!」

「〜〜ちっくしょー!!」


息を切らしながら到着した先は、高校生達の聖地、コンビニ。


「お前ら何でチャリもはえーんだよー」

「よく帰りに競争してんもんなー!」

「して るっ!」


察しの通り、何でも勝負事に変えてしまうこの3人は西浦高校1年ひよこ組。

もとい、野球部9組トリオである。


「じゃー泉が罰ゲームなー!」

「あーハイハイ」

「ウヒッ」


どうやら罰ゲームを賭けてコンビニまで競争をしていたらしい。


「で、何やんだよ」


泉は不満げに言うが、負けは負けなので大人しく受けて立つつもりだ。
何とも男気溢れるトップバッターである。

田島と三橋は、泉に聞こえない様に小声で罰ゲームの相談をしている。

すると、田島が何を言ったのか、三橋が真っ赤になった。
程よく茹だった蛸みたいだ、と泉が思っていると、田島が元気良く叫んだ。




「おし、決めた!!」




ピッと泉を指差し、




「泉!コン○ーム買って来て!!」


「ハァ!?」




想像を絶する罰ゲームに、泉は思わず声を荒げた。


「ンなモン買ってどーすんだよ!使い道ねーのに!」


泉は自分で言ってて虚しくなったが、事実には変わりない。


「近い内に使うかもだろー?」

「予定ねーよ!」


更に自分を侘しくさせながら、泉は反論する。


「男たる者いつでもリンセンタイセイをとっとくべきだ!」

「覚えたての言葉使ってどや顔すんな!」

「スエゼン食わぬは男の恥!」

「まず据え膳がねぇ!前提から間違ってんだろ!」


泉は思う。
田島は辞書に載っている淫語に赤ペンで丸を付けるタイプだ。


「明日チャンスあるかもしんねーじゃんか!」

「前向きな幻想抱き過ぎだ!」

「今は使わなくてもレンシューしといた方がいいって!」

「そらそーかも知んねーけど!」


三橋は2人のやり取りを聞きながら、顔を真っ赤にしてケラケラ笑っている。

そもそも、夕方のコンビニの前でする会話ではない事には気付かないのだろうか。
どーでもいいのだろうか。


「大体、高校生に売ってくれるモンなのかソレ」

「だからそれをチョーサすんだよ」


ケロリと言ってのける田島。
どうやら泉に罰ゲームをさせるより、そっちに興味があるらしい。


「つーか、いくらすんの。オレあんま金持ってねーぞ」


泉も気になったのか田島と戦う気力を失くしたのか、買う事に肯定的になった様だ。
財布を取り出し、中身を確認する泉。


「…………」


だが、小銭入れを黙視したまま泉は動かなくなってしまった。


「いくらあったー?」


問い掛ける田島の横から、三橋も泉を見る。


「……全額217円」


泉が中身を見せる。
そこには100円玉2枚、10円玉1枚、そして1円玉が7枚。


うむ、確かに。


「そーいやオレもねーなー」

「オレ も…」

「昼休み購買行っちゃったもんなー」


田島と三橋も財布の中身を確認する。
結果、田島は140円、三橋は230円。
総額587円。


「足んねんじゃね」

「足んねーな」

「ね…」


なんだーツマンネー、とブーたれる田島。

結局、田島が思い付いた罰ゲームは予算により却下された。


「じゃー三橋何がいー?」

「う、え っと…」


次の罰ゲームを三橋に振る田島。
三橋は視線をあちこちさ迷わせながら、何とか答えようと言葉を探している。

そして、コンビニ内のレジ横にある物が目に入った。


「オレっ アレ、食べたいっ」


どれ?と2人が中を見遣る。
三橋が指差す先には、多少気が早いとも思える『おでん』の文字。


「いーけど、1コずつしか買えねーよ?」

「オレもソレでいー!大根食いたい!」

「あ…でも…」


田島が乗った所で、三橋が言い淀んだ。


「そし たら、泉くん の分…」

「罰ゲームだもん。いーよ」

「じ、じゃあっ」


三橋のノロい言葉を待つのもすっかり慣れた泉は、首を傾げながら次の言葉を待っている。

すると、




「オレ 泉くんの分 買う!」




目をキラキラさせながら、発案を述べる三橋。

泉は瞼を押さえた。
感激の余り、目頭が熱い。


「……泣いていいか」

「三橋やさしーなー!」

「え…う、ひ」


三橋は何だかよく解っていないが、とりあえず『優しい』の褒め言葉に喜んだ。

しかし、もはやそれは罰ゲームではない。
気付いているのかいないのか、どーでもいいのか。
今回の泉の罰ゲームは鮮やかに流れた。

そして仲良し9組トリオは意気揚々とコンビニに突撃する。

結局3人で金を出し合って入手した温かなおでんを、仲良く3等分して平らげた。




西浦高校名物、1年9組
野球部トリオ




勝っても負けても




いつも最後は3ぶんこ。




→あとがき





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