その後、阿部兄弟が次に向かった先は、同じ階に位置する3組だ。
確か3組は縁日だと言っていた。
十分に楽しめそうである。
阿部が教室に入ると、すぐに沖と目が合った。


「よ」

「あれー阿部じゃん。どしたのサボり?」


またか、と内心阿部は思った。
この調子では、1組に行った時も同じ説明をするハメになりそうだ。
1人1人に説明するのは面倒なので、奥に居た西広も呼んで野球部の集合時間を告げ、弟の紹介を済ませた。


「なんだ、そーゆう事。じゃーいっぱい遊んでってよ。輪投げやる?」


西広はシュンにニッコリと笑いかけ、教室の案内を始めた。
阿部と沖はシュンが輪投げに夢中になっているのを後ろで眺めている。
すると、シュンに視線を向けたまま沖が口を開いた。


「阿部と弟ってさ」

「んー?」

「似てないよね」

「そーか?」

「うん。あんまり」


沖はきっと、阿部の弟がこんなに社交的だとは思わなかったのだろう。
顔立ちは似ていても、性格が真逆のように思える。
だが口には出さなかった。
失礼に当たる言葉は、沖は口にしないのだ。


「オレも弟欲しかったなー」

「欲しけりゃやるよ」

「あっは、マジで?」


ホントに居なくなったら悲しむくせに、と思ったが、それも口にはしなかった。
沖はふふ、と笑って、自分もシュンに歩み寄って行った。
そして輪投げの後に阿部兄弟で挑戦した射的勝負が白熱し過ぎて、結局3組の2人も仕事そっちのけで遊んでしまったのは、他の部員には内緒である。

そうして3組を存分に満喫した2人は、新たな目的地、1組へと足を運んだ。


「1組は栄口さんと、巣山さんだっけ?」

「あー。オバケ役だっつってたかな」


おどろおどろしい1組の教室への入り口を前に、阿部はどうも気が乗らない表情で突っ立っている。
反対に早く入りたいと言わんばかりのシュンは、兄の腕を引っ張って半ば強引に教室へ引き摺り込んだ。
まるでカップルである。
阿部の気が乗らなかったのはこの為だ。


「おぉ!死体!」

「へー、本格的」


入ってすぐ、2人にズリ寄って来たミイラを前に、驚いた表情すら見せない阿部兄弟。
オバケ役の心が折られた瞬間である。
手の込んだ小道具やセットを眺めながら、2人は歩みを進めて行く。


「ね、栄口さんは何のカッコかな」

「さー。そこまでは聞いてねェ」

「ドラキュラとか似合いそーじゃん?」

「あいつはアレだ、妖怪腹下し」


全く失礼極まりない。
意味が解らないシュンがケラケラ笑いながら兄に説明を求めると、阿部は受験時のエピソードを話してやった。
すると


「喋ったなぁぁぁ〜」


妖怪腹下しが現れた!


「うおお、でた!」

「あ!ちわす!」

「全くさぁ、阿部が知ってるオレのエピソードはソレしかない訳?」


白装束のベッタベタな幽霊ファッションの栄口が、むくれた表情で抗議した。


「はは、似合ってんじゃん」

「うるさいよ!サボり!」

「サボりじゃねーから」


阿部はどうやら説明するのも面倒になったようだ。
適当に受け流し、用件を告げてさっさと先に進もうと一歩踏み出した所で、


「サボってんのは誰だああああ」

「うぉあ!!」


背後からガシッと頭を掴まれた。


「悪い子はおしおきじゃあああ」


ドスの効いた低音で阿部の頭をぐわんぐわん揺らすフランケン。
巣山だ。


「おあーびっくりしたぁ」

「悪い子はいねがあああ」

「巣山。ソレ。なまはげ」


ちょいちょい、と呆れ顔でツッコミを入れる栄口とケラケラ笑うシュン。
ひとしきり笑い終えた後、シュンの紹介をして、巣山にも集合時間を告げた。


「おー解った。つか、そろそろオレら交代じゃね?」

「あ、もーそんな時間?」

「今12時ちょうどっすよ」

「じゃ昼飯食って行くか」

「おー。弟も参加すんだろ?」

「やりまーす!」

「そかそか。じゃこのまんま第二グラウンド行って飯食おーぜ」


1組ズがクラスメイトと衣装の交換を済ませた後、4人は揃って第二グラウンドに向かった。









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