拍手2011/10月 |
「………だれ?」 「え、えっと…君の恋人??」 相手が無垢で何も知らない事をいいことに、綱吉版"言いたい言葉ランキング"二位を言ってみる。 そんな俺の言葉に、目の前の幼い子は意味がわからないといった様子でこてんと首を傾げる。 え、なにそれ、食べちゃいたい!! あまりにもその様子が可愛くて、ついつい衝動のままに動いてしまいそうになる。 駄目だ、まずは怖がらせない様に…。 自分の中の欲望を抑え込み、今目の前にいる小さな子供に向き直る。 「えと、俺は沢田綱吉。君は隼人君…だよね?」 「…うん。ちゅ、つなよしっていうの?」 ちょっ!!今噛んだ!?今噛んだよね!!?? あぁもう、可愛い可愛いっ!!!!! 何か、何でもないような顔してるけど、それがまた可愛い!!! 一体俺をどうしたいのっ!! 目の前にいる幼い子供は正真正銘、俺の最も大切な獄寺隼人その人だ。 ただ、齢は恐らく4歳の。 ほんの1、2分前まで俺の部屋で獄寺君と一緒に宿題をしてたんだ。そしたら案の定ランボが邪魔しにきて、そしたらまた案の定獄寺君と喧嘩になり十年バズーカを乱射させられて今に至る。 だけど今、俺の傍にいるのは十年後の獄寺君とは明らかに年齢が違う。 最初は、あぁまた十年バズーカに当たっちゃったよ、なんて軽く思ってたんだけど、目の前に居たこの子を見てすぐ異変に気付いた。 俺を見つめる子供は明らかに獄寺君なんだ。 どんな姿になって様と、俺が獄寺君を見間違う筈がない。 十年バズーカの故障で十年後ではなく十年前に来てしまったとしても、4歳の獄寺君が俺の前に居るのはおかしい。 だって十年前の俺たちは、お互いの存在すら知らなかったんだから。 どういった理由で十年前の、しかも獄寺君がいる場所に飛ばされたのか、考えれば考える程わからなくなってくる。 俺の時代の獄寺君はどうしてるかな。 きっと心配してるんだろうなぁ…。 俺の事になるとほんと周りが見えなくなるからなぁ。まぁ、少なからずそんなとこも俺にとっては嬉しくなっちゃうんだけど… 「ねぇねぇ、つなよし!つなよしは何処から来たの?」 「…………可愛い…」 一生懸命上を見上げて、俺の服の裾を引っ張る獄寺君。 あ、天使がいる。 獄寺君は実は天使なんじゃないかな。 思わず本気でそう思ってしまう程に、幼い獄寺君は可愛い。 「つなよし?」 「あ、ごめんね?何処から…だっけ?」 いけないいけない。 獄寺君に聞かれてたんだっけ。 自分の思考にハマっていた事を謝って、幼い獄寺君の目線に合わせる様にしゃがみこむ。 「えっと、俺はね。遠い所から来たんだ」 「とおい…ところ?」 獄寺君はまた首を傾げる。 「うん、ここからとっても、とっても遠い所」 そう言うと、獄寺君は悲しそうな顔をする。 「いつかえっちゃうの??もう、会えない?」 表情を少し歪ませた獄寺君が俺に縋る様に聞いてきた。 ほんとに、もう…。 会ってたった数分だというのに、こんなにも懐いてくれる獄寺君が愛しくて愛しくて仕方ない。 やっぱり十年前でも獄寺君は獄寺君だ。 「大丈夫。すぐに帰らなきゃいけないけど、絶対にまた会えるよ」 安心させる様に銀色の綺麗な髪を撫でながらそう伝える。 すると暗かった顔は一変してとても嬉しそうに笑ってくれた。 「うん!!約束だよ!!」 「うん、約束」 こんなに人懐っこくて、こんなに笑ってくれる。 今の獄寺君は幸せなんだろうな。 それが後四年もすれば家を出て、人を信じられなくなってしまう。 そう思ったらいてもたってもいられなくなって、獄寺君をぎゅっと抱き締めた。 「約束する。俺たちは必ず会えるよ」 今の俺にしてあげられる事なんて何にも無いけど、少しでも獄寺君の心の支えになる様に。 「忘れないで、君は一人じゃない」 未来の事はあんまり言えないけど、 「俺がずっと傍にいるから。大好きだよ、隼人」 これは俺の願いでもある。 今はまだ伝えられていないこの想いも、いつかちゃんと伝えて本当の意味でずっと傍にいたい。 まるでこの幼い獄寺君に誓う様に告げた後、見慣れた煙に包まれた。 あぁ、もう時間だ。 煙に包まれながら最後に見た獄寺君の顔は至極幸せそうな顔だった。 「綱吉さん!!」 あ、獄寺君の声だ。 戻ってきたんだ………って…えぇええ!?つ、綱吉さんっ!!?? そ、それって俺の事だよねっ!? 獄寺君の言葉に驚きすぎて声も出ない。 だんだんと煙が晴れていく中で視界に映るのは、顔を真っ赤にした獄寺君の姿。 「お、俺も貴方の事が、す、好きです!!!!」 |
end |