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 拍手2012/5月







「あ、れ…?」



いつも通りの休日。
いつも通りの獄寺君の家。
いつも通りの二人の時間を過ごしていると、ふと鼻腔を掠める違和感に気付いた。


「? どうかしましたか十代目?」

「うん…なんか……」


何だろう…何かがいつもと違う気がする。
そう思って違和感の原因を探るべく獄寺君に近付いて観察してみたり、匂いを嗅いでみたり、抱きついてみたりしてみる。


「じゅっ、じゅうだいめっ!?な、なにを…っ」

「………あっ!タバコ、変えた?」


そうだ、今朝まではいつもの嗅ぎなれた大好きな獄寺君の匂いだったのに。
今は全く別のほろ苦い空気を纏ってて、


「あ、はい。つい先ほどいつものヤツを切らしちまって…ってすみません!くさいっすか!?」

「ううん、全然そういう訳じゃないんだけど…」


ただ一つ、タバコが変わっただけなのに、俺の知ってる獄寺君じゃないみたいだ。


「じゅう…っ!…んっ…」


なんか…ムカつく。
オレは今の獄寺君を知らないのに、コイツは最初から今の獄寺君を知り、獄寺君を纏う一部になるなんて。


「っ…は、じゅ、じゅうだ…」

「…ん、ね…タバコ、吸って」

「へ?」

「いいから!」


オレが促すと獄寺君は慌ててタバコを吸う。
そして吸ったモノを吐いたと同時にまた唇に噛み付く。


「んんっ…!…ふ……」

「……は、……ん」


それを何度も何度も繰り返す。

全く訳がわからない状態で被害を受けている獄寺君は涙目になりながら、けれども従順に口を開き俺を受け入れてくれる君に悪いな、と思いながらもやめない。
だって嫌なんだ。

獄寺君はオレのなのに。

バカみたいって思われるかもしれないけど、なんかコイツに獄寺君を奪われてるみたいで腹が立つんだ。


「…はぁ、じゅ……だいめ…んっ」

「ごくでらく…ごくでらくん……」


だから今の獄寺君のほろ苦さを味わう様に、オレに馴染む様に、獄寺君を取り返す様に、オレはいつまでも獄寺君を貪り続けた。








― 後日 ―


「そういえば獄寺君、あれから前のタバコに戻してないんだね」

「えっ!?あ、はい…」

「どうして?」

「えっと……それは、その…」

「オレは別にいいんだよ?また違うのに変えても。また君を覚えるまで味わうからっ!」

「〜〜っ!!!も…勘弁して下さい…」








end 

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