御曹司息子×秘書 | ナノ

 Act.1







此処、イタリアに本部を置く外資系企業、ボンゴレ。
全世界至る所に支部を置く当社は、その名を知らぬ者はいない程の名声と規模を誇る。

ボンゴレを立ち上げた初代社長ジョット様をはじめとし、現在では俺が仕えさせて頂いているティモッテオ様が九代目社長として、ボンゴレを統括されている。
九代目はとても温厚な方で人望も厚い。勿論社長としての手腕も見事なものでその決断力は"神の采配"とまで言われている程だ。

俺はそんな彼の秘書として、微力ながらお手伝いさせて頂いている。

そして今、急遽九代目に呼ばれ社長室を訪れていた。


「九代目、失礼致します。獄寺です」

「あぁ獄寺君。すまんね、急に呼び出したりして」

「いえ」


しかし、何の用件だろうか。
九代目のスケジュールは全て俺が管理させて頂いているし、アクシデントも起きていない筈だ。


「私はもう歳だ」

「いえ、九代目はまだまだお若くていらっしゃいます」

「ははは、そう言ってくれるのは有り難いが、さすがにこの年になってこの仕事量はつらいものがあってね」

「申し訳御座いません。全て秘書である俺の配慮が足りないせいです。」


名声と規模を誇っているが故、それを統括される九代目の苦労は計り知れない。
それは常にお側にいさせて頂いている俺が、一番理解しているつもりだ。
だが……


「いやいや、獄寺君はよくやってくれているよ。君の仕事ぶりには本当に感謝しているんだ。こんな老いぼれに付き合ってくれてありがとう」

「そんな…勿体無いお言葉で御座います」


……なんだ?
何だか雲行きが怪しい。
何故九代目は急にこんな話を…


「そんな君だから任せられるんだよ」

「……はい?」

「入ってきなさい」


何を?
そんな疑問を口にする間もなく、九代目の声に私室へと続く扉が開く。


「し、失礼します…」


ボソッと遠慮がちに呟きながら入ってきたのは、カラメル色のくせっ毛な髪に、それと同色の丸く大きい目、華奢な体格に低い背をした…


「沢田綱吉君だ」


日本人のガキだった。


「……あの、それで九代目、このガ……方がどう……」

「彼に私の後継、十代目社長になってもらう事にした」

「はぁ…………………って、はあ!?」


ちょ、ちょちょちょっと待てっ!
展開が早くてついていけねぇ…!
まずこのガキは誰だ!?
俺の知る限りじゃ九代目に御子息はいなかった筈だ。しかもハーフならわかるが、このガキはどこからどう見ても純日本人。

九代目は俺が内心パニックに陥っているのに気付かれたのか、こらえる様な笑いを漏らした。


「ふふふ、久々だな。獄寺君の鉄仮面の様な顔が崩れたのを見るのは」

「…九代目……」

「いやいや、すまんね。つい」


俺の恨めしい視線に気付いた九代目はわざとらしい咳払いを一つし、改めてこちらに向き直られた。


「彼は私の息子だ。と言っても見ての通り血の繋がりは無いのだけどね。色々と事情があってね、今まで綱吉君には日本で生活してもらっていたんだ」

「……仕事だと思っていましたが、それが理由で月に一度必ず日本を訪れていたんですね」

「獄寺君は鋭いな」


確かに日本でも手広く事業を起こしてはいるが、それにしても必ず日本へ赴く九代目のその国への固執がずっと気になっていた。
が、漸く合点がいった。


「そんな訳で獄寺君、今日から綱吉君を宜しく頼むよ」

「…………はい?」


何を宜しく頼むんだ?
これから彼を九代目社長の息子として扱えって事か?
そういえば先程も九代目は俺に任せると……


「今日から君には綱吉君の秘書になってもらう」


………………………は?
いや、ちょっと落ち着け俺。
今九代目は何と仰った?
今日からこのガキの秘書?俺が?

それってまさか……


「で、ですが、そうしましたら九代目のスケジュール管理は…」

「ああ、私の事は気にしないでくれ。獄寺君でなくなるのは寂しいが、他の者に頼む事にするよ」


左遷確定。


「あ、あの!ごく、でらさん?でしたよね。オレ、ボンゴレとか社長とか、本当言うと全然実感わかないし、わからない事だらけですけど、よろしくお願いしますっ!」


なんだか視界の端に声を張り上げて頭を下げてる奴が見えなくもないが、漸く現状の把握に追いついた俺の脳はそのまま静かに稼働を停止した。








end 

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