short | ナノ

  未来へ







「十代目、ご卒業おめでとうございます」

「うん。獄寺君も、卒業おめでとう」






桜はまだ蕾を開花させてはないけれど、だいぶ暖かくなってきた風に澄み渡る青空の今日、オレたちは並盛中学校を卒業した。



「ツナー獄寺ー!!!写真撮ろうぜ!写真!」

「山本!」

「けっ、んなの一人で撮ってろ!」



いつも一緒にいる親友の山本と、



「あっ!ツナさーん!!!」

「ツナ君たちも一緒に写真撮ろう?」

「全く、あんたたちはいつまでも変わらないわね」



大事な友達の京子ちゃんと花、それに違う学校だというのにわざわざ来てくれたハル、



「3年間ってあっという間だよね…なんか淋しいな」

「極限に淋しいぞーーっ!!!」

「そうですね…って、いやいやいや!お兄さんは違うでしょっ!?」

「君達、また群れてるの?咬み殺すよ」

「えっ!?ちょ、雲雀さんまで!?」



ちょっと、学年が違う筈の京子ちゃんのお兄さんと雲雀さんが何でここに!?
そういえば学校でもちょくちょく会った様な……違和感無さ過ぎて普通に接してたよ…。



「クフフ仕方ないですね、どうしともと仰るなら一緒に写ってあげない事も…」

「ま、いっか…ほら獄寺君も一緒に撮ろう!」

「あ、は、はいっ!」

「無視ですかそうですか」

「骸様…泣かないで」

「ようツナ!今日は卒業式なんだってな!」

「お久しぶりです」

「ディーノさんにロマーリオさん!」



相変わらず部下がいないとちょっとダメダメなディーノさんに、しっかり者のロマーリオさん、



「沢田殿!拙者もお祝いに来ました!」

「バジル君まで…ってなんか紋付袴着てるし!!」

「日本の祝い事には、こちらを着て出席するのが習わしだと聞きました!」

「…間違ってないけど、君が着ちゃうんだぁ…」



父さんの部下で、日本大好きなバジル君、



「綱吉君!みんな!卒業おめでとう!」

「ボンゴレおめでと〜」

「綱吉クンおめでと♪」

「えっ!?正一君にスパナ、それに白蘭っ!?」



一足先に中学校を卒業して今はイタリア留学中の正一君にスパナ、そして何故か白蘭まで!?

な、なんか卒業式がすごい事になってるんですけど…というか他の卒業生の視線が痛いっ!!



「デーチモ、隼人君!お祝いに来たぞ!」

「Congratulazioni per la tua laurea. 隼人、デーチモ。わりぃな、こいつ行くって聞かなくてな」



……ジョットさんとGさんまで…この人たちリングの思念体……いや、もうすっごい今更なんだけどさ…。



「あらあら、ツッ君お友達がいっぱいねぇ」

「流石俺の息子だな!」

「ランボさんもしゃしん撮るもんねー!」

「イーピンもっ!」

「ツナ兄卒業おめでとう!」

「隼人、卒業おめでとう」

「母さん父さん、ランボにイーピン」

「アネキ…」

「ヴァリアーからも祝いの電報が届いてるぞ」

「えっ…まさか、あのヴァリアーがっ!?」



リボーンから差し出された筒を開けて中身を見てみると、真っ白な旗?的な布に真っ赤な"祝"って言う筆書きの文字が一つだけ。
ヴァリアーらしいっていうかなんていうか…それよりコレ、血じゃないよね……?



「おーいツナに獄寺ー!早くこっちこねぇと写真撮っちまうぜー!」

「ツナさんたち早くー!」

「極限に遅いぞー!!!」

「クフフいつまで待たせる気です」

「何君いたの?咬み殺す」

「えっ!?いきなりですか!?」

「写真かぁ〜僕いつも目瞑っちゃうんだよね…ちゃんと撮れるかな…いたた、お腹痛くなってきた…」

「正チャンは相変わらずだねぇ」

「お!バジルちゃんと晴れ着着てきたな!」

「はいっ!ちゃんと親方様の言う通りにしました!」

「ツナ早くするんだもんねー!」

「デーチモ早くしなさい!お腹が空いたぞ」

「ジョットそれ関係ねぇから」



卒業に涙する生徒たちの中で、俺たちだけすごい騒がしいんですけど……卒業式ってもっとしんみりするものじゃなかったっけ…
でも、なんか…



「ったくうるせぇな…十代目、あいつらうるせぇんでそろそろ…って十代目?」

「ん?」

「何をそんなにニヤニヤされてるんですか?」

「ん…なんか幸せだなぁって」



これから先、それぞれの道があってそれぞれの生き方がある。
今みたいにずっと一緒にいられる訳じゃない。
どうなるかわからない未来に不安だってある。

でも…



「獄寺君!行こう!」

「はいっ!」



卒業は別れじゃない終わりじゃない。

新しいオレたちの始まりなんだ。




「はいっ、チーズッ!」













「十代目、何をご覧になられてるのですか?」

「ん?懐かしい写真見つけちゃってさ」

「?……っ!それは中学の卒業式の時の写真ですね」

「うん」



あれからオレはなんとかギリギリで受かった高校に行って、またまたギリギリで入れた大学を無事卒業した後、正式にボンゴレボスに就任した。

隼人を始め、他の守護者達も正式にボンゴレ十代目の守護者として、共に付いて来てくれた。



「この時さぁ何かみんな集まっちゃって、しんみりな空気の中でオレたちだけ騒がしかったよねぇ」

「そうですね」

「懐かしいなぁ…」



ボスに就任してからは、あの最強の家庭教師が現れた時並に世界が一変した。

昔みたいに、ただ笑って過ごせる世界じゃないんだ。

それでも、



「…戻りたいですか?」

「ううん。懐かしいとは思うけど、戻りたいとは思わないよ」



母さんや京子ちゃん、ハルやイーピンたちみたいになかなか会えない人たちもいる。
けど、それでも目で見えない何かでオレたちは繋がってる。そう思えば不思議と寂しくない。

それに、この道に進んだ事に後悔もしていない。



「なんてったって、オレには有能な右腕がいるし」

「…お褒めに預かり光栄です」

「可愛くて美人な恋人を独占も出来るしね。ね、隼人」

「んっ…ちょ、じゅうだいめっ…」

「昔も確かに幸せだったけど、大切な人たちを守れて、何より大好きな隼人が常に傍にいる今が、オレは幸せだよ」

「じゅうだいめ…」



過去があって今があるなら、今があるから明日がある。
それなら、未来に繋がる今がやっぱり一番大切だ。



「隼人、愛してる」

「…俺も愛しています、綱吉さん」



これからも隼人と、大事な仲間たちと共に歩める未来になる様に ー 。








end 

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