「だらしがない、すぐ悪戯する、性格曲がってる、」


へらへらとした笑顔を浮かべてスナック菓子の袋を片手にこちらへ向かってきた男は、どうやら私を怒らせたいらしかった。続けてサボり魔くん、授業はいいの?と首を傾げ、なにも言わずに許可もなく私の隣に腰を下ろした。


「性格が曲がってる?
それは随分な言われようだ」

「だって本当のことだもん」



まるで幼い子供のように足をばたつかせ、唇をとがらせてみても全然可愛くない。おまけに口の端には食べカス。高校生にもなって恥ずかしくないのかこいつは。



「だらしない、食い意地が張ってる、馬鹿面。」

「は!?馬鹿面って酷くない?」

「事実を言ったまでだ」



しばらくぼりぼりと菓子を食べる音だけが響く。一通り言って満足したのでお互いなにも言葉を発しない、いや、発する気がない。まるでどこにでもある安っぽい小説で表現されているような、突き抜けるうざったい雲1つない青空。その青空の下で俺は、どうせこいつもあの時のことを思い出しているのだろう。




「ねぇ、転生って信じる?」
「は?仮に転生したとしてもお前とは会いたくないね」
「嘘つけ。ほんとは会いたいくせにー!!もう、ほんと素直じゃないなぁ」






かさり、と袋を潰す音がした。どうやら一袋食べ終わったらしい。少し目を横にやると、目と目があい触れあう視線。なんだよ触れあうって。まぁだけど嫌な気分ではない、寧ろ心地いい。この空気が懐かしいなんて思わない、寧ろ新鮮だ。

今度はスクバの鞄のチャックをあける音だけが響き、おまけにごそごそと漁る音。まだ食べるのかこいつは。鳴りやんだ音と入れ替えに耳に届いたのは




「相変わらず性格悪いね、三郎」
「それはこっちの台詞だ、勘右衛門」






数百年振りに逢った悪友が発した私の名前だった。













大好き









はい、と手渡されたのはどこにでも売ってる市販の飴玉。口の中に放り投げ舌でゆっくり転がすと甘ったるい味がした。







project 
糖衣錠はもういらない


20120217