01

夏休みの宿題もほどほどに終わると8月になっており、いつの間にか海に行く日になっていた。
7月はあっという間に過ぎたなぁ、なんてぼんやりと感じながらふと見た車窓の外は綺麗な青い海が広がっている。

海水浴に行く隊員は多く、引率は東さん、有馬隊長、おそらく有馬隊長に誘われた二宮さんだ。
おそらく困ったときは加古さんや堤さんあたりも頼っていいはずだ。
諏訪さんは太刀川さんは頼りにならなそうだなぁ、あぁでもギリギリ諏訪さんはちゃんと見てくれそうだ。
東さんが沖釣りに行くなら浜辺に残る隊員の中で最年長はあの人だ。

(最年長が諏訪さんってだけで妙に不安になるな・・・)

とにもかくにも、頼るべき大人を確認しとりあえずオペレーター陣がそろうグループに向かう。

「あ、風見」
「今ちゃん国近ちゃん小佐野ちゃんよかったー、オペレーター組少なくて寂しかった・・・!!」
「人見ちゃんもいるよ、今まだ着替えてるけど」
「戦闘員が必然的に多くなるのはしょうがないけど、やっぱ自分の隊以外に仲いい人見つけると嬉しいよね」

海に来たばっかりだけどすでに海の家で休みたい、なんていう国近ちゃんに日焼けしたくないし正直賛成って気持ちもある、と笑う。
雑談していると人見ちゃんも合流し、とにかく海の家だと遊ばずに速攻で海の家に直行だ。
有馬隊長にこのメンツで海の家に行くことを告げ、連絡はとれるようにと念を押されつつ向かう海の家はまだお昼時じゃないからか空いていた。

「で、なんでこっち来ちゃったかな風見ちゃん」
「え、だめだった?」
「穂刈君いるんだよね!?近づくチャンスでしょ!」
「え、えぇ〜・・・そういうもん・・・?」
「乙女ゲーでは夏、海、花火はセットだよ」
「それわからないよ・・・」

というか、あっくんは絶賛遠泳しててついていくのは無理そうだ。
体力には多少なりとも自信はあるが、男子について行って遠泳はすこし自信がない。

「でも花火は行くよ、まぁみんなとだけど・・・」
「どっかで二人きりになって告白しなよ〜」
「えぇ・・・」
「いつから片思いしてるかわかんないけど、いい加減告白していいでしょ。少なくともボーダー入る前からずっと好きなんでしょ?」
「そう、だけど」

ちらりと海のほうを見る。もちろんあっくんは見えないが、なんとなくいる方向はわかる気がした。
告白、告白かぁ、と思うが先日発射する前に不発した告白未満の物を思い出すと背筋が震えた。

「やっぱ自信ないよ・・・っていうかみんなはどうなの?そういうの」
「私たちは特にかなぁ、っていうか他の人の恋路が楽しくて見ちゃう」
「あ、わかる。私は有馬さんかなぁ。太刀川さんなのか二宮さんなのか」
「あー私そっちかも・・・荒船君と桜庭が気になって・・・」
「風見は自分の恋路の心配してよ・・・」
「国近ちゃんはどこ気になる?」
「私は断然忍田本部長と二階堂ちゃん」
「え、二階堂さん・・・?」

同い年だけどちょっと近寄りがたいイメージのある二階堂さんの名前を聞くと場は一瞬固まった。
しかも相手は忍田本部長と聞いて一気に話題を持っていく。

二階堂さんと言えば現ボーダーができる前からの古参で、家がやんごとない良家だったり、
おじいちゃんはどっかの銀行の頭取だとか、来馬さんや唯我と顔なじみだとか、
専用の黒トリガーがあるけどノーマルトリガーでもA級並みの実力があったりとか、いろんな噂を聞くけど、忍田本部長。と来てはてなが飛ぶ。

「でも二階堂さんって本部であんまり見ないよね?」
「訳あって一緒に住んでるんだよ、忍田本部長と」
「・・・なんかすっごい気になる・・・っ」
「だから風見ちゃんは自分の恋路を頑張ってって」

でも自信はないよ。
二階堂さんみたいにミステリアスで大人っぽくもない。
有馬隊長みたいに面倒見が良かったり気配り上手でもない。
桜庭みたいに可愛げも素直さもない。
私はいたって普通で、ついでにネガティブだ。

そろそろ行きましょうか、と言う人見ちゃんの声にもう少し考えてから行くね、と手を振ると私も後で行くね、と今ちゃんも続いた。
人見ちゃんと国近ちゃんが海の家から出ていくと何か食べようか、とメニュー表を取ってくれた。

「今ちゃん?」
「風見ちゃんの事だから、きっと自分には何の取りえもなくて、魅力的じゃないって思ってそうだなって思ったからちゃんと否定してあげたいと思ったの」

苺練乳のかき氷を二つ頼むと今ちゃんは私を見て微笑んだ。
綺麗な、素敵な微笑みで思わず見とれた。

「風見ちゃんはまじめで、正直で、誠実よ。嘘は言わないし、信頼のできる素敵な人。
だから相談役に回っちゃうことも多いけど、でもそれってすごくいい人ってことでもあるからそこにはちゃんと自信を持ってあげて。」

ね、とにこりと笑う顔はまぶしい。
今ちゃんに言われるとなんだかくすぐったくてうつむきそうになったタイミングでかき氷がきた。
熱いから食べちゃおうか、という彼女の頬は苺ソースと同じくらい赤くてそれがかわいくて少し笑った。

かき氷は冷たくて、甘くて、すごくおいしかった。




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