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梅雨に入った三門市はここ数日ずっと雨ふりだった。

洗濯物が乾かなくて嫌だな、と言ったら高校生の悩みじゃない、と当真君に笑われながら次の授業の教科書を出した。

「さっさと梅雨明けしねぇもんかね、そしたら夏なのによ」
「夏の前に期末テストでしょ?当真成績やばいんじゃないの」
「気が早ぇよ、余裕だって」

声が震えているあたり大丈夫ではなさそうだ。
ノートを開き、前回進んだ範囲をサラッと確認する。
うん、大丈夫だ。と閉じると真面目だな、と感心されるが、その本人はとてもやる気がなさそうだ。

「泣きついても知らないよ」
「え、うそ」
「ほら、先生来た。準備しなよ」

起立、礼、と日直の声に合わせれば授業が始まる。

緩やかに進む時間と授業の内容はとても重たい。
一秒ごとに針で刺されていくような苦痛と、一分ごとにかなさる重力が、拷問なのではないかと思えるほどに苦しい。

授業が嫌なわけではない。
学校が嫌いなわけではない。
それでも、ここが私の居場所ではないような気がしてならない。
こんな場所にずっといていいのだろうか、と叫んでる心がここではないどこかへ行きたいともがいている。

三年生まで着続けたこの制服すら、体を縛り付けているような気さえする。
教室で過ごす毎日は、ただただ苦しいばかりで、救いがないようにさえ思う。

「やっぱりさ、二階堂は大学行ったほうがいいよ」
「なんで?」

授業が終わり、防衛任務のための特別早退の準備をしていれば同じく防衛任務に向かう国近ちゃんにそう言われた。

「だって行くな、とは言われてないんでしょ?」
「まぁ、そうだけど」
「むしろ行きなさいって言われてるんでしょ」
「うん」
「じゃあ行こうよ、大学」
「行っても何もすることないよ」
「私のとこの隊長とか何もないのに大学通ってるくせに単位やばいって言ってるけど?」
「太刀川さんはいろんな意味でなんで通ってるのか知りたいけども・・・」

それでもそこに私の場所はないよ、と言えばどこか言いたげで。
割と国近ちゃんは鋭いし、黙っていても何もかもバレている気がしてならない。

「学生じゃなかったとして、それでもそれは大人とは言えないよ。
うちの隊長もあと三か月くらいしたらお酒もたばこもできるけどさ、それでもあの人は大人じゃないんだよ。」

それでも、太刀川さんは忍田さんの隣に立てるじゃないか。

「私は早く大人になりたいよ」

子供の私じゃ、だめなんだろう。
あの人の背中も見えない、子供じゃ、なにも。




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