02

「やっぱおいしい〜」

お弁当箱から誘拐された卵焼きは国近ちゃんの口の中に納まる。
から揚げは当真の口に誘拐された。

「これ毎日食えるとか本部長やべー・・・」
「当真は二階堂と同じクラス初めてだもんね、私は三年間一緒だったからラッキー」

遠慮なしにもう一つから揚げを奪われる。
帰ったらチキン南蛮でも作ってから揚げを食べれなかった悔しさを払しょくしよう。

「調理実習あったら一緒の班になろうぜ・・・楽できそう」
「まじめにやんなよ当真・・・調理実習でやることなんて簡単なことばっかりなんだし」
「私食べる専門で〜〜〜〜」
「国近ちゃんもやるの」

レンコンやゴボウの歯ごたえが程よく残ったきんぴらを口にした。ぴりっ、とした辛さが食欲をそそる。

「二階堂先輩だ!」
「から揚げください!」

屋上で食べていると他の学年も来たりする。出水と米屋だ。
たった今売り切れでーす、と当真が最後の一つを奪っていく。育ちざかりは容赦がない。

「ひでー!後輩に譲ってくださいよ!」
「食ったもん勝ちだろ」
「それ以前に許可なしに勝手に食べるなよ」

とうとう炊き込みご飯だけになってしまったお弁当を食べながら、鶏肉安いといいなー、なんて思う。

「二階堂ちゃんはさ、進路とかどうするの?」
「ボーダーに就職だよ、いざってときすぐ動ける人いるでしょ?」
「進学しねーの?」
「今は考えてないよ」
「推薦の話とかあったのに?」
「え、先輩進学しないの?もったいねー」

あ、つぎコロッケ作ってください、と出水にリクエストされながら空になったお弁当箱をしまう。
それぞれ迷いながらも進路を決めていて、あいまいな未来に向けて歩き出しているようだった。

勉強も素行も、この三年間ずっと真面目にしていたのは預かり役とはいえ、今保護者となっている忍田さんに迷惑をかけないためだ。
ボーダーにとっても迷惑な存在にはなりたくない。
何かあれば、私はそれを理由にこの場所からいられなくなってしまうかもしれない。
いざというとき、すぐに動ける存在でありたい。

そのために進学校に受験もしなかったし、やっても大丈夫だと言われたけど部活動にも入らなかった。
ただひたすらに、子供の枠組みの中で早く大人になりたいと息をひそめてた。

「そういえば二階堂のとこは三者面談とかどうするの?ご実家から人が来るとか?」
「父さんは体が弱いから来れないだろうし、おじいちゃんおばあちゃんもあんまり私に興味ないだろうから。
忍田さんは忙しい人だし、どうなるんだろ」
「ぜったい先生に進学勧められるよー」
「意思は変わりません、で、コロッケだっけ?」
「やった!」
「次なんだっけ」
「英語だよ」
「英語かー・・・」

朝が少し早かったから眠くなってくる。
寝てしまいたいけどここまで頑張って取り繕った素行の良さが崩れるのは避けたい。
頑張らなくては。

今夜忍田さんは帰らないか、遅くに帰ってくる。
夕飯は自分の分だけでいいが、何か食べれるようにお味噌汁くらいは作っておこうか。

眠たい午後との戦闘を前に少し背伸びをした。




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