01

新学期になりこの校門をくぐるのもあと一年か、と思いながらクラス分けの掲示板に向かう。
3-B、という枠組みの中に桜庭春菜の名前はない。どうやら隣のA組のようだった。
去年一年は一緒のクラスだったくせに、本人とわかるとこれか、と肩を落とせば落とした肩をたたかれる。

「荒船おはよ、俺は?」
「犬飼はD組、俺はB」

犬飼の後ろ、桜庭が奥から見えてきた。
いつも通りの伊達眼鏡にかるく整えただけの髪型は、先日一緒に映画を見た桜庭と同一人物とは思えなかった。
実は双子とか言わねぇよな、なんて思いもしたが急に親しくなっていると犬飼に茶々を入れられそうでその場は教室に向かうことにした。

犬飼と別れ教室に入り自分の席を見つけ出すとスマホを取り出した。
メールが一件受信されていることに気づけば、差出人は桜庭だ。

「クラス別々になっちゃったね〜(;ω;*)
まぁボーダーでも会ったりするから別々でも話せるか(^∀^*)<よろしくね〜!」
と、どこか穂刈を思わせる文面に、知らなかった桜庭の一面を見れて少しにやける。

「こっちこそよろしく
ってか特撮好きと休日のギャップについては秘密したほうがいいか?」

そう送ると少しして、秘密にして〜;;;;;荒船君と私だけの秘密ってことで!、と帰ってきた。
まぁ俺としても休日の桜庭があんなにかわいいことをほかのやつに知られるのは嫌だ。
好都合、なんて思いながら廊下を見ると新学期新クラスの担任が入ってくる。
高校生活最後の一年が始まった。





「そういえばさ、荒船って彼女できたの?」
「は?」

ボーダー本部に向かう道すがら犬飼に突拍子もなく聞かれれば間抜けな声が出た。
この前ショッピングモールでかわいい子と一緒にいたじゃんと言われれば、あぁ桜庭か、と思い出す。
休日モードについては秘密にしろと言われた手前、どうしたものか。

「ナンパにあって困ってたから助けたらお礼にメシ奢ってくれた」
「なにそれおいしい展開」

とりあえずこれでいいだろう。
適当に嘘をついておいてその場を流せば犬飼はまだ妙に疑り深い目で見てくる。

「で、他校の子?同い年くらいだったっぽいけど」
「掘り下げんのかよ」
「かわいい子だし彼女じゃないなら紹介してよ」
「飯食っただけだって」

そういえば桜庭はなぜ学校やボーダーと、休日で切り替えるのだろうか。
よく見てみればいつものあの伊達眼鏡の奥も可愛らしいものだが、外で会う桜庭は生き生きしているし素直でいい。
二人の秘密、という甘い響きは捨てがたいが。

「・・・やっぱあの人かわいいよな」
「荒船も気になってるじゃんか」
「うっせ」

あの桜庭がこれ以上犬飼の目に触れないように願いながら本部へ向かう通路にトリガーを認証した。




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