僕の部屋からでも談話室が騒がしいことがわかるのだが、冬休みで残っている人は少ないはずなのに全く何の騒ぎだ。朝からこんなに騒げるならその体力を授業に使ってほしいものだね。

不機嫌を抑え込みいつもの「優等生トム・リドル」として階段を降りると


「キャアアアアア!トム!誕生日おめでとう!」
「おはようトム!いつもかっこいいけど今日は更にカッコいいわ!」
「一段と洗練されてるわね!トム!」
「あっ」

ニューイヤーイブを一緒に過ごすと約束したはずのなまえが見当たらないことと、よく思い出すと彼女も僕の誕生日には言及してくれなかったことを思い出して少しがっかりしつつもこのままだと談話室とんでもないことになってしまうため甲高い声で彼女たちに笑顔を向けながら、談話室を無理やり抜け出し図書室に向かう途中でああ、今日は自分の誕生日なのか。と思い出してやれやれとため息をついた。そんな他人の誕生日なんかを祝うために朝早く起きて騒ぐ暇があるなら宿題でもやってれば、冬休みの宿題をギリギリまでためて寸前になって全員が僕に押し寄せることもないだろうにとついつい呆れてしまう。全く暇な奴らだ。そしてなまえはどこにいるのか…

そして、図書室のへ向かう途中に曲がり角の寸前で向こうが騒がしいことに気がついて足を止めてよく聞くと


「トムまだかしら!?」
「いつも図書室にいるからきっと今日も来るわよ!」
「あ〜素敵なトムが待ちきれないわ!」
「誕生日おめでとうって一言だけでいいから言いたいわね!」
「あっ」

しまった。こっちも塞がれていて静かには通れそうにない。全くどいつもこいつも朝から迷惑なことをして。もはや祝う気があるのかないのかよくわからないじゃないか。


こんな感じで僕の取り巻きの女子達をまいているとあっという間に昼前になってしまったこともあって早めに昼食を摂ってしまえば彼女達とも時間がずれるのではないかと思って仕方なく意を決してなんだか騒がしい大広間に向かって行ったのだが。


僕は数分前の僕を恨みたい気分である。全くなんで大広間なんかに来ることにしたんだ。そこには数十人の女子達が僕を待っていたのだ。早めに僕が昼食を摂ることまで予想していた彼女達にはもはや脱帽である。正直自分が成績優秀容姿端麗才色兼備であることはわかっているというか誰の目にも明白だから多少ファンがいてもおかしくないし僕も攻めようとは思わない。だが、たかが好きな男程度でここまで出来てしまう女性の感覚というものはもうよくわからない。

一度入ってしまったために逃げ場を失った僕を取り囲んでそれぞれ祝いの言葉やら告白やら何やらもはやよく覚えていないけど大量のことを同時にまくし立てられ軽い頭痛を覚えながらやっとのこと席について昼食摂り始めたが僕が食べ物を口にしているのをいいことに彼女達それぞれ「食べて。」とチョコレートやケーキ、マフィンを持ち出して僕の目の前に起き始めたのだ。待て待て待て、絶対これは全員惚れ薬の類を入れているに決まってるじゃないか。必死に頭を働かせてそれらしい言い訳をして食べずに持って帰る方向にしてしまったために次の場所を確保する前に一度部屋に戻る羽目になってしまった。朝から地獄かのようなプレゼントラッシュとそれを我慢しつつ笑顔を振りまかなくてはいけなかったせいで疲労困憊のままやっとのことで部屋に戻ると全ての怪しいプレゼントを暖炉に放り込んだところで夜6時つまりなまえとの待ち合わせ時間になてしまったことに気がついて急いで湖に向かった。


「ごめん、なまえお待たせ」
「走ってきたの?」
「いや気がついたらもうこの時間で」
「息きれてる…ふふふ」
「何がおかしいの?」
「だってリドルくんのこんなに余裕のない姿誰も見たことないでしょ?」
「うるさい」

ちょっとキツめで怒った風に言うとなまえはちょっとしゅんとしてしまった。

「ごめんなさい」
「…別にいいよ」
「怒ってない?」
「ああ」
「よかった!」
「ねえ聞きたいんだけど。」
「なぁに?」
「今日は何の日?」
「何の日って?ニューイヤーイブ?」
「正解」
「嘘つき」
「リドルくんがほしい答えはそれじゃないんでしょ?」
「じゃあなまえが思う正解は?」
「ハッピーバースデーリドル!」

そういうとき彼女は僕に抱きついてきた。
至近距離で感じるほのかなシャンプーの優しい香りとなまえの体温を感じる。大切な人との時間はこんなに素晴らしいものだったのかとついつい頬が綻んでしまう。そっとなまえの背中に腕を回すと

「リドルくん、あのね。みんながどう思ってても、わたしはリドルくんと出会えてよかったって思うよ。」
「うん」
「だからね、どこにも行かないで」
「…うん」

なまえに嘘は決してつきたくないからこそ迷いのある不安げな答え方となってしまったことを少し後悔しつつ、そっとなまえの顔を伺うと

「ううん、嘘でもいいの。とにかくリドルくんといるときは幸せな気持ちでいたいの。」

悲しげにちょっと微笑むなまえの存在を確かめるかのようにさっきよりも強い力で抱きしめてあげながらそっと彼女の願いに応えてあげる

「もちろん。僕はどこにも行かないよ。ずっとなまえのそばにいる。」
「ありがとうリドル」

いつものように綺麗な笑顔で笑う彼女の髪をそっと撫でてあげると

「別にねニューイヤーイブなんてどうでもよかったの!リドルくんに誕生日おめでとうって言えたから満足!」
「本音を言えば今日の一番最初に言って欲しかったんだけど」
「わたし…いたよ…?気がつかなかった?」
「ごめん、全く」
「わたしだって朝早く起きて待ってようと思ったけど談話室人いっぱいいて背が低いから埋もれちゃって、リドルくんの声は聞こえたけど話しかける前にリドルくんいなくなっちゃったし、図書室にいく途中で入り待ちしてたけど来なかったし大広間も人多すぎて近づけなかったし…」

自分に会うためにここまでしてくれたなまえが愛おしく感じられる。でも他の女が同じことしていても微塵も感情が湧かないのに。そこで改めてなまえが特別だと感じる。

「ねえ、例えば僕が世界中を敵に回したとしてなまえはどうする?」
「そんなの無理だよ」
「何で?」
「だってわたしは絶対リドルくんの味方だから世界中を敵に回すなんて無理じゃない?」
「屁理屈じゃないか」
「いいの!とにかくそんなこと無理だから!でもね、リドルくんに何があってもわたしはリドルくんと一緒にいるよ」
「ありがとう」
「どうして急に?」
「ううん、何もない」
「どうしちゃったのリドルくん」
「いや、嬉しくて」
「とにかく!リドルくん、生まれて来てくれてありがとう!」
「こちらこそ」

そう言って僕らは12月31日の最期の数時間を静寂ながら暖かい雰囲気で共に過ごすのだ。


なまえには幸せになってほしいから決してなまえを闇に引き摺り込みたくはないけど、そばにいたいと言うのは僕のわがままだろうか。
ラグナログのその時が来るまで君のそばに。



( Happy birthday Riddle! )

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