「とむ…?」
「なんだい」
「その格好は何?」
ああ、なんで起きてしまうかな。君の顔を見ると帰れなくなってしまうから寝てる間に準備しようと思ったのに。
「…ごめんね」
「何が?待ってよ、全然理解できない」
「なまえも嘘吐きだね。僕のが移ったみたい」
「何がどういうこと?」
「聡いなまえのことだから気がついてるんでしょ、僕がスパイだったことに。でもやっぱりなまえの嘘は下手」
「…!」
「僕は隣国のスパイで君の父親から情報を手に入れるのが目的だったから君に近づいたんだよ。もう目的も達成したし消えるよ。」
「じゃあ、私達の今までの関係は何…?」
「恋人ってこと?」
「そう」
「んー仕事…かな」
「お願い…そんなこと言わないで、本気だったのは私だけ?」
そんな顔をしないでくれ愛しい人。泣かないで愛しい人。
僕だってなまえに本気だったよ、そう誰よりも本気になってたんだ
でも伝えてはやらない。今ここで僕が戻らなくては母国にいる母親が政府に抑えられるのはわかってるから。伝えてしまうと僕は戻れなくなってしまう。この気持ちわかるかい?愛しいなまえの泣き顔を前に優しい言葉一つかけてあげられない僕の気持ち。
「ごめんね」
「そんな言葉聞きたくない」
「泣かないでよなまえ」
「わたしがっ、泣かないわ、けないでしょ…」
僕のことに嗚咽をあげてるなまえが愛おしい。目の前にいるのに僕は何もできない。いまなまえを抱きしめて、愛してるって伝えるだけ。たったそれだけのことが僕にはできない。いや、する資格はない。そんなもの元々なかったのかもしれない。
「そう、僕となまえの恋愛は僕の仕事でなまえは利用されただけ」
「っ…じゃあいままでかけてくれた言葉も全部偽物?
「ああ、そうだよ」
そんなことあるわけないよ。全部本物。心からの言葉だった。
「さいっ、てい…早く帰りなよ、早く消えてよ…もう」
「なまえごめんね、楽しかったよ」
僕はバルコニーに出て脱走の用意をしているとなまえが声をかけてきた。
「いつでも戻ってきていいから、ずっと待ってるから」
「…」
「おばあちゃんになっても私、トムのこと待ってるよ」
「…」
そんな優しい僕の決意を簡単に揺らがせるような言葉、言わないでくれ。
この僕が感情に流されるなんてきっとこれが最初で最後。
「じゃあなまえ、また会おうね」
「うん、トム愛してるよ」
「っ…」
なまえの愛に僕は何も返せないけどなまえ愛してるよ、これは本当の本当。そう心の中でつぶやいて
嘘を吐くのはあと少しだけ
( It won't be long. )
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