「なまえ先輩、今日も素敵ですね」
「リドルくん…もうそろそろ毎朝迎えに来るのやめてくれない?」
「あ、そろそろ朝食ですよね?一緒に行きましょうか」
「ちがっ…もういいわ」
「先輩と一緒に朝食を摂れるなんて嬉しいです」
「あなたにそう言ってもらえて嬉しいわ」
「先輩もっと感情込めて言ってくださいよ」
「はは」
「先輩目が死んでますよ」
「誰のせいだと思ってるの」
そう言って綺麗な顔でわらってやがるこいつはスリザリンの一個下の6年生のトム・リドル。いつしか私に付きまとうようになった。そもそもなんでレイブンクローの私なんだ。君ならどんな美人もよりどりみどりのくせに。普通の女の子なら彼に素敵ですねなんて言われたらイチコロなんだろうけど、残念ながら私は興味ない。私には年上の彼氏のレオンがいる。彼はもう去年卒業してしまって遠距離恋愛というような形になってるけどちょくちょく手紙をくれるから全然さみしくない。というかリドルが好きな子たちの視線が痛いからやめてくれ。

「なまえ先輩、こちらへどうぞ」
そう言ってエスコートしてくれる彼は本当に素敵だとは思うけど…ダメダメ、私には彼氏がいるんだから。しっかりしろ私。
「ありがとう」
「…」
「リドルくんも自分の席に行ったら?」
「先輩の隣にいてはお邪魔でしょうか…?」
待て、そんな子犬みたいなかわいい目すんな。絶対にわかってやってるよ…確信犯め。
「…ええ、いいわよ」
「ありがとうございます」
そんな顔されて断れるわけないだろ。私だってそんなに鬼じゃない。
「先輩、これも食べないとダメですよ?」
「…にんじん嫌い」
「ほらあーん」
「大丈夫、自分で食べる」
「残念」
「全然」
これを見るとどっちが年上なのかわからなくなってしまう。
向かいを見ると親友のマコが困ったような奇妙な顔をしていた。
「マコそんな顔しないで」
「朝からお熱いことで」
「いや、ちが」
「ありがとうございます、マコ先輩」
「ちょっと変なこと言わないでよ」
「ではそろそろ僕授業があるので失礼します。なまえ先輩、マコ先輩も授業頑張ってください。あっ、でもレイブンクローの秀才のお二人には失礼でしたね」
「ありがとう、リドルくんも頑張って〜でもリドルくんが言うと嫌味だね」
「やだなぁマコ先輩そんなわけないのに。なまえ先輩?」
「なに?」
「先輩にも頑張ってって言われたいんですけど」
「はいはい、頑張ってね?」
そう言ってひらひらと手を振ると彼は私にしか聞こえないようにお昼に温室で。と囁いて食堂から出て行った。
「なまえもレオンから乗り換えたら?」
「ちょっと、変なこと言わないでよ」
「だってリドルくんの方がよっぽど前途が開けてるよ?」
「マコ怖いこと言わないで」
「せっかくの機会なのに残念〜」
「マコがリドルくんにタックルすればいいのに」
「私はおじ様が好きなのわかってるでしょ?」
「あー、ごめ」
「私たちもそろそろいこっか」
「うん」

私達7年生はいもりを控えておりみんな必死に勉強をしている。私も例外ではないが今朝マコが変なことを言うからそれを意識してしまい集中ができない。
でも年下か〜恋愛対象にはいるのかななんて考えてると授業が終わってしまいお昼を迎えた。
マコが昼食に誘ってくれたが用があると断って温室へと急いだ。

「なまえ先輩きてくれたんですね」
「まあね」
「来てくださらないと思ってた」
「まさか、私が約束破ったことないでしょ」
「そうですよね」
前にも図書室で一緒に勉強がしたいと言われ何回か一緒に勉強したのだ。まあ彼に解けない問題はなかったけど。
「で、今日は何の用」
「先輩とお茶がしたくて、いいお茶が手に入ったんです」
「なによ急に」
「先輩紅茶お好きですよね?」
「そうね、まあ紅茶が好きじゃない人って少なんじゃないかしら」
そう言って椅子を引いて座ると確かに良質な茶葉のいい香りがした。
彼も座って長い足を優雅に組んだのを見て不意にキュンとしたのは内緒。
「話変わりますけどこの前厨房でマフィン作ってた先輩可愛かったですよ。」
「まって、なんで知ってるの」
「先輩のことはなんでも知りたいんです」
「答えになってないし、それストーカー」
「マフィンを爆発させてた先輩もかわいいですよ」
「それはお願いだから言わないで…恥ずかしい」
「えーどうしようかなー」
ふふっと優雅に笑う彼を一発殴りたかったけど、いけないいけないと年上の意地で抑える。
そして完璧な作法で彼は紅茶を淹れてくれた。
「んーいい匂い」
「先輩に喜んでもらえてよかったです」
「こんなのどこで手に入れたの?相当珍しいよ」
「内緒です」
「なによ、教えてくれたっていいのに」
子供みたいに頬を膨らませてプイとそっぽを向くと彼が近づいてきてティーテーブルに腰掛けて私の顎をクイと上げ端麗な顔を近づけてきた。
「リドルくんまって、私には彼氏がいるの」
「知ってます」
「じゃあなんで」
「もしかしてあのマフィンは彼氏さんへでしたか?」
「ええ、そうよ」
キスするかしないかの距離で私の目に映ったのは悲しそうな目をした彼だった。なんでとつぶやくと彼は手を離して立ち上がった。
「そろそろ授業ですね一緒に行きましょう」
「え、だって教室ちがうじゃない?」
「先輩が次魔法薬学ってくらい知ってます。僕の次の授業は先輩の隣の教室なんです」
「そこまで知ってるなら私の全部委ねるから全部管理して欲しいくらいだよ、働きたくない〜」
冗談で言ったけど彼は真面目な顔をして僕もですなんて言ってる。
二人で教室まで行くとじゃあって言ったらなんと彼は笑顔で私の頬にキスしたんです。
「なまえどこにいたの?リドルくんと一緒だったのね」
「ええ…」
「やっぱりリドルくんなまえに気があるんじゃない?」
「えーないよ」
「そういえばレオンから連絡ある?」
「…」
「最後に連絡きたのいつ」
「二ヶ月前」
「怪しいよ」
「マコ!やめてよ!ちょっとマコ今日は変なこと言いすぎ」
「ごめん…気分転換に週末のホグズミードレオンに連絡して誘えば?」
「そうね…聞いてみるよ」
「ごめんねなまえ、詮索しすぎた」
「ええ、いいの」
マコに怒鳴ってしまったことを反省しつつ無意味に不安になる心を抑えて授業を受けると夕食どきになり食堂へ向かおうと教室を出るとリドルくんがいた。取り巻きたちと一緒に。彼が迎えに来てくれなかったことにチクリと痛んだ胸には気がつかないふりをする。
「あっ!!」
「マコ、大声出さない!」
「レオンからなまえに手紙だよ!!!」
「え!?」
マコから奪い取るように手紙を読むと
なまえへ
最近連絡できなくてごめんね。
仕事が忙しくて。それになまえもいもりで忙しいと思ったから。
来週のホグズミードあるよね?それ一緒に行こう?
久しぶりになまえとデートしたい。
体調には気をつけてね。
返事待ってるよ。
レオンより
よかった…レオンまだ私のこと忘れてない。安堵のあまり頬を綻ばせてニヤニヤしているとマコに気持ち悪いと言われたが知らない。
レオンと久しぶりに会えるんだから精一杯おしゃれしてかわいい私で会いたい。そんなことを考えていると声をかけられた。
「なまえ先輩」
「…あ、リドルくん。何の用」
「来週先輩ホグズミード行きますか?」
「うん、行こうとは思うけど?」
「一緒に行きません?」
「…?」
え?今なんて言った?マコも向かい側でかぼちゃジュースを吹き出している。
「あーごめんね、先約が」
「彼氏ですか?」
「じゃあ今週は?」
「今週って明日じゃない」
「ええ」
「んー…いいけど」
「じゃあ明日迎えに行きますね」
「うん」
「寝坊しないでくださいね」
そうウィンクする彼を見て思い出して恥ずかしくなってしまった。
そう、去年の夏在学中最後のデートにとレオンと約束していたが寝坊してしまいすっぽかしてしまったのである。
「赤くなった先輩もかわいいですよ」
そう言って髪にキスを落とす彼にキザな奴めと言ってやったけど彼はどこ吹く風。軽やかな足取りでスリザリンの席へと戻ってしまった。
今日はリドルくんと行くホグズミード。なんか絶対リドルくん人選ミスしたと思う。私といったって面白くないのに。まあ誘ってくれたからないは楽しんで荷物持ちさせないとねなんてマコと話をしながら寮を出ると
すごい。バッチリ決めて待ってるよ…
「なまえ先輩今日…すごく…かわいいです」
「ちょっと、やめてよ…恥かしいじゃない」
「いや、本当誘ってよかったです、こんなかわいい先輩が見れるなら何回でも誘います…」
「お世辞はもういいから、行こう?」
「はい、」
「今日は人が多いですね」
「ねー、人混みって苦手。」
「酔っちゃいますか?」
「そうかも、リドルくんは?」
「僕も苦手です、息苦しいですし」
「じゃあ、ほら」
「?」
「手、手繋ご?リドルくんが迷子になっちゃわないように」
「先輩」
「ん?」
「年下だからっていつまでも子供扱いしないでください」
そういって彼は所謂壁ドンをしてきた。ちょっと待ってよ、そんな顔が目の前にあったらドキドキしちゃうじゃない。
そして彼は私の耳元で囁いた。
「先輩、いつまでも僕がかわいい子犬でいるとお思いですか?僕だってもう子供じゃないんです。いつでもこうやって狼になれるんですよ。なまえ先輩?」
「っ…」
「先輩こそ子供じゃないですか?彼氏さんのこと薄々気がついてましたよね?」
「やめて」
「いいえ、やめません。」
逃げようとしたけど彼に両腕を押さえつけられているので動けない。
「リドルくんって細い割には力あるのね」
「先輩、バカにしないでください。」
彼の目は怒っていた。そして彼の目は見たこともないくらい美しい真紅だった。

彼は無言で私の腕を掴んでツカツカと歩き始めた。
「ちょっ、どこに行くの」
「…」
彼に連れてこられたのは三本の箒。
「現実を見てください。先輩。」
「っ…」
信じたくなかった、私の目に映るのは彼氏であるはずのレオンが知らない女の人とキスをしている場面。そして聞こえてくる会話。
「レオン、あなた今ホグワーツに彼女いるんですってね。」
「ああ、そうだよ。愚かだった小娘がね。随分利用させてもらったよ」
「なんて言い草なのよ。ここで会ったらどうするの?」
「彼女だっていもりで忙しいはずさ」
「彼女が必死に頑張ってる間にあなたは浮気なんて嫌な男ね」
「その相手が君だよ。愛してる」
「彼女にもそういったの?」
「いや、愛してるとは言ったことはないかな」
「最低ね」
最悪な場面を見てしまった私は三本の箒を飛び出して叫びの屋敷の方へと走る。
耳を覆ってしゃがみこんでしゃくりをあげながら泣くしかなかった。
私はあんなに好きだったのにこんなにもあっさりと…
「これが先輩の望んだ結果ですか?」
リドルくんの声が聞こえる。今は聞きたくなかった。
「リドルくんも、あれをみ、せるために連れて、きたの?」
「はい」
「あなたもさいっ、てい」
「なまえごめん」
後ろからリドルくんに優しく抱きしめられた。ふと思った、果たして私はレオンにこんな風に抱きしめられたことはあったのだろうかと。それにリドルくんに名前で呼ばれると気持ちが暖かかった。抱きしめられている彼の腕を通して彼も少し震えているのがわかる。
「こんな風にはしたくなかった。でも来週あいつがなまえと出かけるの聞いて許せなかった。なまえの気持ちを弄ぶ奴なんかになまえは渡したくなかった。でも、今は後悔してる。なまえがあいつのせいで泣いてるから。なまえがあいつに傷つけられたから。」
「でも、なんであなたが、ここまで」
「ねえ、年下は恋愛対象外?」
「っ、」
「僕だったらなまえを泣かせたりなんかしないから…」
「…」
「好きです、なまえ」
「うん、ありがとう」
「それ答えになってない」
「うん、私もリドルくんが好き」
「やっと手に入れた」
「ずっと見ててくれたんだね、ありがとう」
「子供じゃないってば」
「ふふ、好きになってくれてありがとう」
「もう離さないから覚悟しなよ。帰ろうか、ん」

差し出された手を繋いだ。
人生最悪で最高な1日。

( The tragedy of love is indifference. )
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