「なまえ、卒業おめでとう!」
「ありがとう!ミーシャもおめでとう。毎日会えなくなるなんて寂しくなるよ」
「私はなまえの世話がなくなるからいいけどね」
「ちょっと!」
「うそうそ、なまえがいないと本当に寂しくなるわ…」
「ちゃんと手紙書いてね」
「もちろん、なまえも私に送るの忘れないでね。なに浮かない顔してるの?」

今日で私たち7年生は卒業。
11歳で親元を離れ、ここホグワーツに入学した。
いもり、ふくろうをはじめとするテストに追われたこと、ハロウィンやバレンタインに浮かれながら参加したこと、クディッチの応援で喉を枯らせたこと、ダンスパーティーに着ていく服を選ぶために同室のミーシャと夜な夜なカタログを読んでいたこと、そのせいで宿題が終わらなくて居残りさせられたこと、全てが大事なかけがえのない思い出であった。この学舎で学べたことは一生の誉れであるとさえ思う。そして多くの友を得たことにも感謝している。これ以上多くを望むのもどうかと思うが今この場に彼がいてくれたらどれだけ幸せだろうかとつい考えてしまう。

「リドル先輩のこと考えてるの?」
「ミーシャには何も隠せないね」
「きっと来てくれるわよ。先輩は約束を破るような人じゃないでしょ?それになまえのこの上ない晴れ舞台だもの」
「そうだね」

ミーシャにはそんな返事をしつつ不安で仕方ない。
私たちは確かに付き合っていたけれど、リドル先輩の方が一個年上だし、先輩が闇の方に進んでいたのも知っている、知っていながら止められなかった、先輩は先輩の卒業式の時に私の卒業式に来てくれると言い残して卒業して行ったけどどうなのだろう。卒業後一切連絡はなかった。先輩は私のことなんて忘れてしまったのだろうか。それともそもそも遊びだったのだろうか。確かに私たちの付き合いは気まぐれのような始まりで合ったがそれでも愛を育んだつもりではあった。そして心のどこかであの時先輩を闇の道に進むのを止めておけばとさえ思ってしまう。

「ちょっと学校もう一周してくるね」
「じゃあなまえ、後でね。ちゃんと列車の時間には遅れないでね?」
「もちろん、も心配しなくても大丈夫だから…」

ここまで言ったところでつい涙が溢れてしまい、止まらなくなった。

「ちょ、ちょっと、泣かないでよ!」
「だってぇ…ミーシャが明日からいなく、なっちゃうなんて…グスッ…だい、すきだよ」
「もう…もらい泣きしかけたじゃない…もちろん私も寂しいけど永遠の別れじゃないわ。時間ないんだからもう行きなって。また後列車で会いましょ」
「ミーシャ…うん、わかった」

そう言ったミーシャも目が真っ赤だったから、つい嬉しくなってしまった。私たちはきつくハグした後ミーシャは列車に私は校舎へと戻って行った。

行きたかった場所なんて一つしかない。
リドル先輩と良く会っていた展望台。
ここは私のお気に入りのスポットでホグワーツ全体が見渡せる上夜は星も綺麗に見えるそんな乙女心に刺さる場所だ。
展望台の壁の淵で目を閉じてゆっくり深呼吸するとリドル先輩と過ごした日々が暖かく思い出された。
でも今ここにリドル先輩はいない。あの温もりも冷たさもない。意地悪だったけど優しかった大好きなリドル先輩。でもその先輩がいた面影どころか私も明日からはもうここにいない。
そんなことを考えていると様々な感情が混ざり合って悲しくてついしゃがみこんで嗚咽をあげていた。
すると誰かが背後から優しく頭を撫でてくれた。
その温もりはとても懐かしくて安心した。ゆっくり振り返るとそこにいたのは、紛れもないリドル先輩だった。

「ごめんねなまえ、待たせちゃって」
「え、リド、ル先輩…?」
「他の誰に見えるの?」
「せんぱ、い…」

そう言いながら私は愛おしくて会いたくてたまらなかった先輩に抱きついた。
鼻腔をくすぐるリドル先輩の香りがなんとも懐かしくて安心させられた。先輩はちゃんとここにいる。

「もう、迎えが遅いですよ…」
「誰もいないところでなまえに会いたかった」
「だからって…なんで卒業した後連絡くれないんですか…本当に心配しましたよ、不安で毎日眠れなかったんですからね…」
「そこまで思ってくれてるの嬉しいな」
「そうじゃなくて…!」
「わかってるよ、ごめんね、でも僕もなまえに会えなくて本当に寂しかった。」
「じゃあなんで…」
「なまえも知ってるでしょ僕が何をしようとしているか」

私は知っていた。リドル先輩が闇の魔法使いになろうとしていたことを。

「はい…」
「不安にさせてしまったことは謝るよ」

そう言って先輩は私を抱きしめる力を強くした。それと同時に先輩の香りが強くなって、一段と先輩の体温と鼓動が感じられる。

「でもしばらく会わないうちに可愛くなったね。なんか嫉妬しちゃうんだけど」
「リドル先輩こそ、どんどん大人の男性に…」
「ありがとう。ねえ、なまえ聞きたいことがあるんだけど」
「はい、なんですか…?」
「僕と結婚する?久しぶりに会ったらなまえを手放したくなくなった。」

先輩が耳元で甘く囁くから背筋がゾクゾクしてまるで脳が溶かされたように情報処理機能を放棄してしまったから一瞬何を聞かれているのかわからなかった。

「どうする?」
「それって…」
「そのままの意味だよ」

そう言って私の顔を覗き込んで来るリドル先輩の顔は艶やかで息を呑むほど美しかった。最愛の人に言われたのだから断るわけがなかった。

「はい、もちろんです…」
「ありがとう、なまえ。」
「明日からずっと一緒にいれるんですよね」
「ああ」
「でもなんで、連絡くれなかったんですか」
「卒業寸前に迷ったんだ。このままなまえを置いて闇の道に進むのかって。すごく迷った。そしてこれがその決断だよ。」
「じゃあリドル先輩は、私のために夢を…」
「なまえの方が大事だからね。それと、なまえ、卒業おめでとう」

そう言って先輩は可愛らしいカサブランカの花を差し出し、私が受け取るとおでこにキスしてくれた。優しい優しい暖かいキス。

ああ、私はなんて幸せ者だろうか。
(Congrats!!)
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