(ノネム)




「ってゆうか。星。見たくないですか?」

 この人、オトとかいうノネムのボーカル。スリーピースバンドのど真ん中でギターと一緒に叫んでいる。いた。さっきまで。性格容姿共に難有り、派手なブス、倫理欠如妖怪。ぱっと顔をあげたときにぶつかりあって鳴るピアス。一瞬の隙もなく品がない。こいつのことを思うと殆ど悪口しか出てこないんですけれど。そう。声は悪くない。
 ので、クッソ真面目そうな声音で言われると一瞬返事をしそうになる。けど、返事をしたら死ぬタイプの呪いをかけてくる妖怪なので無視。絶対無視。目を合わせても強制で呪われるのでソッコー話題を切り替える。

「部屋キレイになってて引く」
「あー、それは昨日? ん? オトトイ? ギャー子出たからァ」
「……昨日だよ」
「ギャー子?」
「お前ゴキブリに名前つけるのやめろ」
「は? 世界観待って?」

 淡々と英単語の冊子から目をそらさずにリーナが制すけど全然歯止めになってねえから世界のバグ止まってないから。まあこの美人の優等生がノネムとかいうバンドのドラムをやっている時点でバグですけど。
 眼鏡の奥の黒々とした目は特に揺れ動くことがない。昨晩あたり呼び出されてギャー子退治に付き合わされたのだろう。冷蔵庫の脇あたりに転がっている二本のゴキジェットが戦争の面影をうかがわせた。
 ってことはアパートの外に曜日無視で積まれてた燃えるごみもこっから出たやつか。清掃バイトかよ。無秩序、治外法権もいいとこです。夕方のこの時間に積まれてる時点でおかしいだろ。

「っつってもほぼリーナが駆除しました!」
「部屋片付けたのもほぼ俺だ」
「綺麗になったら落ち着かねーのな!」
「二度と片付けない」
「待って待って待って! マジでマジでマージーで、感謝! この思いを乗せて……タナカオトメ、歌います」
「大丈夫」
「逆に何が大丈夫?」
 適当な茶化しを挟めば、オレは部屋キレイすぎて落ち着かなさがダイジョブじゃない! とげらげらオトは笑った。やっぱ絶対掃除しない。ごめんて。リーナ友達選べよー。はい、ブーメラン。わかる。世界中のなによりも価値のない言葉を投げつけあって、ひとしきり。

 ってゆうか! と、通る声がもう一度場を遮った。

「旅行? 的な? 行きたくないですか?」

 はい。完全に目が合ってる。にんまりと笑う妖怪は悪魔だ。何言ってんだ。リーナも俺もこいつの通る声には目を上げる癖がついてる。うるせえ。近所迷惑とかでいつか追い出されるのでは、と思っているが此処は同じ感じのバカそうなやつしか住んでいないスラムアパートなのでお互い様のようだ。二階のベランダで上裸が怒鳴り声で歌ってたときは歌い返しました。

 なにひとつ脈絡がないのに、なんでこいつは根拠も死に絶えた世界で自信に溢れて。脈絡なんて俺たちにあったことはない? そっちかもしれない。
 この狭苦しい部屋で壊れかけのクーラーに頼って生きてる。行き当たりはばったりだ。三人で楽器と楽譜でもめて殺しあってるのだって偶然だ。夏休みになった途端に鳴き出した蝉は八つ当たりみたいに響く。もう夕方だぞ、ミンミンゼミ。

「お前免許は」
「取れてるわけなくね? まだ仮免出ねえし? ジュウナナだぞ?」
「なんでそんなに偉そうなんだマジで?」
「あれ、リーナ取れてたよな」
「……まあ」
「あー、じゃあリーナが全部運転するやつですね」
「ですね!」
「ですねじゃねえよ」

 お前も運転できるだろ、と、俺を一瞥する黒い目が言う。おいおいおい。それってもう行く気満々じゃないですか名取くん。取れたてほやほやは怖くない? 俺と二ヶ月も変わらない筈だ。リーナに関しては超絶優秀だったじゃん、最短で取れてたじゃん。

「ねーえー、星がぁ、見たいのぉ」

 イイじゃん? なんかそーゆーコトしといたほーがイイってゼッテエ! つーか夏だし!?
 白金の髪、こないだまたブリーチしたからもうぎっしぎしのそれに適当な色のメッシュ、キツくて柄の悪いぶっさいくな目が光るともう俺たちは大抵のことはどーっでもよくなるから、マジでマジでマジでタチが悪い。極悪な妖怪。たのむほろびて。


 *


 一週間後、八月夏休み。最中。流星群が。今年も来る。今日の天気は終日晴れの予報。バカだ、車を借りた。宛先もきちんと決まっていない旅のために。
 自分でも如何なものかと思う。ネットで借り方を調べて、万が一のこともあるからとテンポも呼び出して一緒に借りた。意外ときちんと準備しているお互いについて冗談めかしながら笑いあった。貯めていたバイト代がそこそこに飛んでいくことが分かっていたのに。これで買うつもりだった世界はいったいどこに行ったのか。

「……オト来ないなー」
「家まで迎えに行くかどうか非常に悩む」
「割と俺もうどうでも良くなってるところあります」
「夜までに着けば良いんだろ」
「ってかリーナまじでオトに甘いわ」
「そっくりそのままな」
「あーあ、もう二人で行こうぜ?」
「絶対、より面倒なことになると思う」

 助手席でクーラーの向きと風量を調節するテンポに動く意思は全くない。だれた姿勢でシートベルトに時々指を引っ掛けたりしながらその少し色素の淡い目でいくつかの車が過ぎ去っていくのを眺めていた。クーラーの人口的で車の中独特の匂いのある風に吹かれて、テンポの猫っ毛が揺れる。
「あ、俺古本屋行きたいかも」
「正気か」
「どうせ五時間くらい応答ねえって」
 駐車場ある路面のとこ行こーぜ、と、カーナビを勝手につけた。地図検索、本を売るなら次の信号を左折です。知ってるよ。ナビいらないよ。

 車を転がす俺を尻目に、持ってきたipodを車につなぐコードがどうこう言いながら鞄を漁っている。っつーかこんな暇なら楽器くらい持ってくりゃ良かったか? それだけは断じてない。そう思うくせに俺もこいつも楽譜は持ってきていて、ああ、どうしてもこう。
「取り敢えずもう一回頼んでいい?」
「助手なのでお安いっすよ」
 諦め悪くテンポの携帯が七回目のコールを鳴らす、が、勿論幸音の寝ぼけた声が答えることは無かった。あそこ、近くにマックもあるから飯はそこにしよう。



 ――で。結局。
 その男が現れたのは昼も過ぎた14時頃だった。マックシェイクは溶けきっていた。二回目のポテトを買いに行くのをどっちがやるかで賭けをするか悩んでいたところだった。

「まあ昼ですね」
「昼も終わりかな」
「昨日―、バイトがぁー長くてぇー、えっとぉー、マジでー、……ゴメン」

 反省はしてるけど別に次に寝坊しないわけじゃない。幸音はそういうやつだ。一旦ちゃんと眠ると携帯のアラームなどお構いなしだ。最悪別に寝てなくてもアラームに捕らわれてはくれない。というか今こいつ頭のどっかでシェイクイイナーとか思ってやがる。絶対。
 毎回許したり許さなかったりする方が面倒だから、ああもう良いから乗って。と、後部座席を示したら反省はおしまい。秒速でドアを開けるバカ。犬のお座りとか待てってこういう感じ。

 っていうか何でお前ギター背負って来てんの、と、テンポが言って初めてこいつを後部座席に一人で乗せたことを後悔する。楽器もってくりゃ良かったとか。それだけは断じてない。

「……席立つなよ」
「おっ? フリ? フリかな?」
「あとギター出さないで」
「ええー、リサイタルしよーと思ったのに!」
「アンプねーから!」
「え、どっかうまいこと繋げば音でるんじゃね?」
「運転しないよ」

 他にもっと持ってくるもんあったろ? 俺だかテンポだかが呆れ半分で言っても幸音はよくわからないとでも言いたげな顔でへらへら悪びれなく「ちなみに他になんっも持ってきてねーわ」と続けた。
 最悪だ。楽器と身一つでこの人はどこまでもいけると錯覚してるに違いない。最悪だ。財布と携帯だけは持ってきてくれてありがとう。このままだと呼吸に感謝してやらなくちゃならない日も近い。

「ラブソングでもうたおっか?」
「はぁ? 寝て?」
「オレすっげえ寝たから超元気だし!」
「そうじゃねえわ」
「絶対聴きたくない死ねないなら寝てほしい」
「バカめ、新曲だぞ?」

 じゃん、と、指が弦を、っていうかいつの間にかお前ギター出してるんだ完全に勘弁してほしい、爪弾く。アンプを通さない簡素な音が車内に鳴ったのと同時エンジンを掛けた。俺だって別に運転得意じゃないんだけど。お前らわかってる?


 *


「オト……お前のラブソング全然ラブどころかピースもねえし最悪だよ……」
「はー? ラブとピースがセットなわけねーだろばぁーっか!」
「何にせよラブはなかっただろ」
「ラブソングではなかっただろ」
「ええー、意外とイイセンいってたと思うんですけどォ」

 片田舎に向けてただただ車を走らせることのくだらなさについて。大人になった時にこの思い出をどうか美化したりしませんように。歌われるような青春みたいなものにしませんように。
 隣で眼鏡の黒髪黒目の美人は道路を睨んだままオトに悪態を吐く。舌打ちせん勢いである。当のクソラブソング(仮)を歌ってご満悦のオトはポケットからライターと煙草を取り出した。それは持ってきたのかよ。まあ適当に着てきたジーパンっぽいしバイト先で拾ったのそのままだったとかの方があり得る。

「でもぉ、どーっせオレ達みたいなのにはダイサンカク? を教えてくれるトモダチもスキナヒトもいねーんだからしょーがなくね? マジで?」
「夏ならベガとアルタイルとデネブ」
「リーナちょーっと黙れ?」

 青春は死ね! みたいな言葉を撒き散らかす。汚い言葉でしか歌は歌わない。「ってゆうかオレの歌は明るいし? リーナの作る歌詞のがゼツボーテキじゃん」「俺は現実主義なんだよ」「まったまたぁ」明るさの問題じゃねえから。明るくたって星は星で、太陽は太陽で、蛍は蛍で、ステージライトはステージライト。

「っつーかオレさァ、星に名前がついてるの割と解せないんだよね?」
「オトのくせに解せないとかいう日本語使うなむかつく」

 後部座席の方を振り向いて丸めた地図で軽くはたいてやればなーんーだーテンポのくせに! と逆に言われた、まー確かに。お前の方がバカだけどどんぐりだよな。とか認めると調子に乗りまくるので言わない。
「っつーか煙草外向けろし」
「だっせえぞ! 鍛えろノド!」
「ばっ、ムリ」
 俺が腕を伸ばすより前にリーナが代わって後部座席の窓を開けた。クーラーの風が吹き飛んで、温い風が吹き抜けた。オトは「あーあ!」と煙を大人しく外に吐き出す。それでも残る副流煙が喉に引っかかる。嫌いじゃないけど得意でもない。吸えたらハマってると思うから吸えない喉で良かった。バニラの匂い。なんっでもいいわとか言いながらお前、キャスター好きだよな。

「オレ名前とかゆうのキライだからさぁ、頼んでもねーのに勝手に付けたりしてクソだろっていうの!」
「お前ほんと名前ダメな」
「クソダサネーム同盟だろオマエも」
「えっ何それ」
 世界中から名前という名前を滅ぼすのが目的でーっす! ノネム、という名無しの名前は殆どがただの名称だけど。世界中から名前を奪って、世界を名無しにしてやろうなんて。そんな大それたことを思っているわけじゃない。少しで良いから解放。されたかった。

「オレの夢なんだよねぇ、セカイセイフク?」
「この世なめすぎ」
「ナマエなんてつけるから世界は戦争だらけですよ!」
「お前に名前があってもなくても処刑する」
「おっと? リーナたん不機嫌かな?」
「俺が命預かってること思い出させてあげようか」
「待って待って俺は巻き込まれじゃね」

 こういう時。リーナは若干笑みを浮かべる。綺麗な顔を綺麗に歪ませるから最高なんですけど、こういうリーナは大体お前も田中幸音の友達だな? って気が付かせられるから勘弁してほしい。
 様々な自体を想定して一瞬目を閉じると、きゅ、とアクセルが踏み込まれた。ふわりと身体の中の内蔵に揺れる。後ろを見るとオトは顔をひきつらせていた。普通に。体ごと強張ってる。ちょっとウケる。

「死にたくないならお前は寝て」
「えっホントに寝ちゃうよ? つまんなくない? ダイジョブ?」
「たのむ」
「そんなに言われるとなー、寝ーれーなーいーなー?」
 と言ってはいるもののそのままぱたん、と横に倒れた。糸が切れたみたいに。バッテリーまで不良品。すうっと車のスピードが落ち着く。一命は取り留めたようです、先生。


 *


「ホントに寝るからねこいつ」
「朝まで楽しみすぎて寝てないだろうから」
「遠足じゃん」
「そのあと徹夜で準備はじめて風呂場で息絶えた説」
「オト研究家か?」

 幸音であっても、すうすうと寝息を立てている時だけは割と静かだ。時々寝言を言うけど。ちっちゃく丸まって眠っている、とテンポから報告を受ける。あっそ。
 この珍獣、昔から結構こうして寝る癖がある。最近は一人になったからかマシになったとか、己の寝相の悪さについて熱く語っていたけど。あんまり治っていないようだった。真夜中の歯ぎしりも多分治ってない。眉間に皺を寄せて眠るところも恐らく。そのあたり顔面形成によろしくないと思うんだけれど、どうだろうか。

「大分暗くなってきたじゃん」
「ちゃんと星見えそうなとこまでたどり着いてよかった」
「万が一着かなかったとして俺たちに責任はないけど」
「ばかだよな」
「殺意湧いてきた」
「はは、わかる」

 くつくつと笑う声。卒業したら染めようかなと言っている髪。そのままでもいいと思うけど明るい色も多分似合う。想像力の欠如、俺には上手に想像を働かせることはできないから見たことのないテンポの姿を上手に思い浮かべることもできない。黒髪の幸音は思い浮かべることができる。見たことがあるからだ。
 幸音と大騒ぎしている時とは全然違うこの生き物の空気に天野歩という人間のことを本当はほとんど知らないということを思い出す。俺たちは学校も、バイト先も、住んでいるところも、見てきたものがすべて違う。世界が偶然でできていることに驚く。

「っえ、は!? 夜!?」

 がこん、と車が悪路に揺れたと同時、静かで緩やかな夜入りの世界は破滅した。がばっと描き文字でも存在するかのように跳ね起きて窓を全開にした。テンポが振り向くがつられて俺まで振り向いたら最期――誤字ではない、なのでそのまま車を走らせた。
 昼間よりも風が強くなっていたらしくスピードはそこまで出ていないのに空気が揺れた。もしかしたらこいつの声で揺れたのだったか。

「やっべええええ! 降りる! 降りよう! やべえ! リーナ! テンポ! やばい!」

 片田舎の。一本入れば真っ暗な道。全開の窓からバカの声が響き渡る。最悪だ。最悪俺なら訴える。夜闇の静寂に謝ってくれ、お前がいつでもサタデーナイトでネオンガンガンステージライトでつっかえねえパーティグッズなことくらい一番よく知ってるから、寝て。

「ドア開けて良い!?」
「わっけねえだろ!」
「テンポ絶対そいつ止めて」
「死ねって!?」
 テンポが助手席から身を乗り出して後ろの幸音のTシャツの首を引っ掴んでいる。俺達には残念ながらチャイルドシートが必要だった!

 やっとのこと車を道の脇に停めて、これって路上駐車。だよな。でもまあ車通りもほとんどない。ぎゃーすか騒ぐ幸音を車からつまみ出して反省のポーズをとらせたうえで、鍵をかけて外に三人で並んだ。俺、幸音、テンポの順番。今日イチで疲れた。同感だとテンポが半笑いで返す。

「リーナが運転上手くて助かった」
「今日一人で運転したのはじめてだった話は」
「聞かなかったことにした」
「俺の表情筋死んでるから」
「ポーカーフェイスって言おう?」
「あ、オレポーカー得意!」
「反省のポーズ解除しないで」
「このポーズ空見えなくない……?」

 正座のまま上半身と腕を前に倒したなんとも頭の悪い恰好で地面に座っている。というか突っ伏している。地面で反省している。幸音による反省のポーズと呼ばれる非常に珍しい姿です。ちょっとというかかなり面白い。同じことを思ったらしいテンポが携帯を取り出した。画面の明かりで見えたそいつの表情は無表情ながら真剣だ。きっと俺も同じ顔をしている。
 カメラ、起動、フラッシュ機能をオンにして、はい、バカの反省! ぷ、と俺とテンポは同時に吹き出す。シャッター音は幸音の耳にももちろん届く。反射のように顔を跳ね上げた、その目の中に恐ろしい数の星を映しながら。

 っていうかお前はポーカー弱いよ。


 *


「おっまえら! 今撮った、ろ、」

 あ。

 世界中から音が消し飛んだ。車の中から見た時よりもいっぺんに星が降ってくる。流星群、いやまだ一個も星が落っこちるのを見られたわけじゃないけど。大体全部流れたよーなモンだろ今の。降ってきてる。地球上が星で埋まってねーことが死にたくなるくらいの不思議。

「やべえ、星だ」

 我ながら最高にアホみたいなことを言った。リーナとテンポも俺がアホ面で口開けて空見てるのをちょっと笑ってから、多分天井を見た。オレの目は夜が引っ掴んで離さないからその姿を確認はすることはできない。
 オレの想像上の星空はゲロぶち撒くほど飲んだ日に見る夜景みたいにぎらついていたんだけど、全然違う。たおやかに光るのはホタルくらいのもんだって、いや、ホタルとか見たことねーけど。

「あー、確かにやべえな」
「晴れてよかった。少し雲があるけど気にならないな」

 ちらり、と一筋光が流れていく。生まれてハジメテ見た流れ星。言いたい願い事は決まってたハズなのに、声のひとつあげるよりも前に消えちゃった。隣にいるのに同じ流れ星を見れたかどうかも分からない。その確認すらズサンだからオレたちなんて一緒にいる。

 流星群を。みたいと思ったことはあるか。オレは今まで一度だって星が見たいと思ったことはなかった。多分。テンポとリーナにはあるとおもう。オレにはぜんっぜんなかった。
 星が見たいとか、テキトウに言った。星なんてどーでもよかった。小学校の遠足のプラネタリウムも全部寝てた。思いつきだった。ライブハウスのギラギラを見た時に思ったんだった、オレは星を見たことがない。星が。キライ。キライだから。

「あー! あれがアマノガワか!」
「……いや、あれは雲。これ、天の川」
「え、でかくない?」
「こっちが織姫であれが彦星。これくらいは分かれ」
「リーナが勉強しててヨカッタ」
「わかる」
「このバカ金パはさておきテンポはそろそろ勉強しろよ」
「いーんだよ俺受験しないし」
「あっそ」

 ホントはリーナに明日朝からカキコウシュウが入ってたことを知ってる。ケッコーオレってちゃんと見てんだぞ? えっ勝手に手帳見たことまだ怒ってる? カキコウシュウの時間割まできっちり書き込まれてて、あ、でもリーナ字はきったねえ。
 このクソヤロー大学生になるらしい。自動でなれるわけじゃねーけど、実際オレは高校とかゆうルートを手動で落っこちたので、でもまあリーナにとっては自動ぐらい自然。この男がこの先何をするのかよく知らない。キョーミない。こんなセカイを相手取って戦おうなんてリーナマジで勇者すぎるでしょ。

 ホントはこんなコトをしてるバアイではない。超絶宇宙の似合う伝説待ったなしのオレはともかくこいつらに。ジンセイはある。まぁ? 困ったら? オレがなんとかしてやんねぇでもねーけど? 今日のこれは大体がテキトーで固めたワガママ。サビシイとかゆう人間的シコウは死にました! 嘘です!

「あーあ、ほんっとやべえわ」
「わかる」
「ゲンゴノウリョクがぶっ殺されてく」
「お前のは元々死んでる」
「わかる」
「テンポもそっこそこゴイリョクねーからァ」

 わっかるー、と、やる気なく放られる、なんっも分かってねーだろっつーかハナシ聞いてねーだろテンポのくせに! こいつが歌詞書けないのは別に書けないってゆうか書かないってゆうかそういうビミョーなトコだよなって。こーゆータイド? 見るたびに思ったり思わなかったり大体まあ思ってね―けど。
 それよりコトバにしたら死ぬと思ってるっしょ、オマエ。ばぁーか! 致命傷を。そう簡単にはあたえてやんない。流れ星にはノド掻っ切ってもらわなきゃ。

「ペルセウス座流星群、って言うんだ」
 今日はピークとはずれてるけど、と、オレのユイイツの幼馴染は言った。きちんと年を重ねやがったどくされの幼馴染だ。こいつのことがすげースキ。ナホってナマエ似合ってんぞ。

「ペルセウス座ってドレ?」
「あれ」
「わっかんねー」
「つかリーナ分かるのやばい」
「テンポは見ないで言うな」

「でも俺もう7つ流れ星見たよ」
 願い事そろそろカンストするくない? と、オレのユイイツの友達は言った。きちんと年を重ねてきたバカヤローの友達だ。こいつのことがすげースキ。アユムってナマエゆーほどダサくねーぞ。

「星に名前があるのはやっぱ解せねえけどォ」
「解せないとかいう言葉使うなむかつく」
「でも、まあ、悪くねえ? かも!」
「えっらそーに」

 ふっと思い出して口寂しさにポケットを漁る。突っ込んでたハズのタバコがない。どさくさで落っことした。ライターもねえわ、拾ったやつ。コンビニタバコのオマケだったかも。ミレンはないけどちょっと困る。家のライターギャー子事件後のキョーセイセイソーで駆逐されたんだよな。マジで? マジか。
 こーやって気付かないうちに殆ど全部を落っことす。思春期でセンチメンタルだから、ホントは落としたもの全部にナマエをつけといたほーがイイ。忘れるから。バカだしオレ。

「俺達は名無しだからな」
「っつかギャー子だしなー」
「は? ギャー子かわいいからね?」

 言葉だけが夜空に放られている。目が少し慣れてきても見えるのは粉々の光ばっかだ。
 キラキラが落ちてくる。死にたくなるほど落ちてくる、星の降るこの日に名前があって、ああ、クソ、よかっただってオレに名付けのセンスはミリもない。ギャー子は割とイイセンいったけど。

「っていうか全然違う話してイイ?」
「やめて」
「焼肉、食べたすぎでは?」
「なにいってるかわかんないです」
「少し戻った大通りに一軒あったと思うけど」
「リーナ! 甘すぎ!」
「テンポも食いてえくっせにィ」
「最悪呪うぞ?」

 三人でちゃんと交代で、運転できるよーになったらもっとクソ遠いところでも焼肉が食いたい。ネガイゴトはそんくらい。そーゆーのがサイコーじゃん?
 わかってくれよな、クソッタレのマイディアー。







2016.8.4





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