:アルトと菫


「寄らないで下さい」
「え、久しぶりじゃない? そういう敬語」
 煙草の匂いは嫌いだ。煙たくて鼻につく、少しのどに引っかかる感じがする。酸素の薄い空気、最初に触れた時から好きじゃない。好きじゃない、はずだ。
「今更だろう、この部屋には副流煙が充満しきってる」
 ふうう、と、店長が息を深く吐くとその呼吸に合わせて煙が薄明りのライトの映った。
「っていうか、何しに来たんだよ」
「我が下僕が落ち込んでいると聞いたので」
「そのネタ止めろ」
 かちゃかちゃとおれが機械を扱う音以外無音である、この爆音を生み出し続け閉じ込めている部屋の中に訪れる静寂は途方もなく切ない。
「……枷は外してあるだろ?」
「余計なお世話だうっせえ死ねぶっ殺すぞ」
 そうそう、そっちだよ。そっちの方がずっといいよ、あんたは笑った。最悪だ、むかつく。まるで大人と子供のようじゃないか。もう、もう、百回死ね。







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