(art club)


「うっわ、暗い絵描いてんなお前……また」
 一瞬ホラー描いてんのかと思った。と、わざと神経を逆撫でするようなことを言えば、祇園はすかさず食って掛かってくる。
「またって、失礼ですわね。今回、あたくしの目指すのは輝かしい光ですのに。まだ地塗り段階なのですわ、此処から明度も彩度も上げていきますのよ!」

 確かに、祇園の絵はいつも最初と仕上がりの色がまったく違う。この間は紫色からオレンジの夕焼けみたいな絵が出来ていたし。今回は紅色と茶色を基調に、ひたすら明度を落として塗っているらしい。
「今回の仕上がりは水色やエメラルドですもの、暗い雰囲気のものも好きですけれど、今回は明るくなりますわ」
 なら最初から明るい色を塗れば良いのに、と言ったら凄い剣幕でまくし立てられた覚えがある。補色がーとか厚みがーとか油彩の良さはーとか散々に部活終わりまでひたすらに。最終的に「だから天藾さんは薄っぺらな人間なのですわ!」で締め括られた大演説は、今思い出しても顔をしかめられるくらいだ。もう絶対にこいつの地雷を踏むことをしないようにと心に決めた。
 ああまでマジになって怒ると思って居なかったから、少しびっくりした。本当に絵が好きなんだな、と。

 絵を描いている祇園は生き生きとしている。やけに。ふんふんと鼻歌でも歌いそうな様子で、絵の具で目一杯に汚れたエプロンを揺らす。
 油を筆に染み込ませて、カーマインレーキと書かれたチューブとローズマダーと書かれたチューブからそれぞれ紅色を出す。傍目に其れは、
「どっちも同じ色じゃ……」
 と、言い掛けて急いで口をつぐんだ。が、時既に遅し。祇園が此方をきっと睨む! 間違いねぇ地雷を踏んだ、踏んだ踏んだ、分かってる前言撤回したい本気で! させてくれねえけどな!
「よく見てくださいまし、違いますわよ! ローズマダーはよりピンクっぽいと思いますわ、一概に紅と言っても沢山の色がありますの」
 他にも沢山ありますのよ、此方のウルトラマリンブルーとウルトラマリンディープとウルトラマリンライト、ぱっと見名前しか違わなく見えますけれど、使えば勿論ディープは一番深みがありますし、ライトはちゃんと明るく、ブルーは中間くらいの使い勝手の良い色をしていますもの!
「それからこのパーマネントホワイトとチタニウムホワイト、セラミックホワイトですけれど一番オーソドックス且つリーズナブルなのはパーマネントホワイトですわね、ですがセラミックホワイトは本当に純白で……確かに少しお高いのですがハイライトには持ってこいですし。ああでも、あたくしはチタニウムホワイトが好きですのよ、透明度が高く仕上げには持ってこいでとても綺麗に馴染みますもの。まだまだホワイトには沢山ありますわよ、そうですわね、例えばファンデーションホワイトは……」
「い、いい! 俺が悪かった、悪かったっつーの!」


(カラフルガールにゃマジ適わないって!)








「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -