:里々となこと


「カッター」
「はい」
「刃はしまって俺に向けないで理性をもって考えて」
「考えた結果でした」
 すうう、と、紙にまっすぐ走る線と裂ける紙。金物の定規は体温を吸ってぬるい。図書室、カウンター、暇な図書委員、僕、先生に頼まれた雑用、そして図書委員ではない暇な一雨里々。
「カッター、」
「渡したよ」
「ひとつあれば死ねることについて」
「図書室は静かに」
「生きてるのって、楽しいかい?」
「フツー」
「最低最悪のテンプレートみたいな返しを禁止でもしないと君はまともに考えて返答できないのか?」
「何も考えないで口先糞野郎に言われる筋合いはないな?」
 そこで会話は途切れた。紙を二つに切る音、が。止む。やっと渡された紙を全て切り終えた。枚数を数えながら僕は息を深く吐き、里々はちらりとドアをみやる。タイミングよく戸が開き、そこには。
「追加だそうだ」
 野棚さんの冷え冷えとした瞳はうららかな春の日をぶっ殺していく。下らねー量産型哲学と劣化コピーのセンチメンタルはどんと積まれた紙束の前には無力!
「前言撤回。超楽しいです」
「あとこの学校は裁断機を買え」







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