(坂口安吾『不良少年とキリスト』より)
(図書委員組)

「『太宰が死にましたね。死んだから、葬式に行かなかった』」
「『死なない葬式が、あるもんか』」

 煙たい言葉だ、と彼女は言うので、そうだろうかと僕は適当に笑った。言葉そのものに、煙草と酒と雨と線香の匂いの染み付いた感じがする。彼女のその感覚は分からないなあと、思った。
「しかしきっと彼ら、彼の死が面白く、なかったのだろうね」
 ぐるぐると、泣きながら書いたのだろうね。泣きやしないさ。文章が泣くのさ。生きてほしかったのだろうから、(しかし、生きていると、疲れるね)彼は派手に笑ってみせたのだ、(自殺は、学問じゃないよ)(子供の遊びです)死ぬなと言ったのでは足りなかったから、(死んでも、生きるなんて、そんなユーレイはキライだよ)彼は泣きもせず意地を張って叱ったのだろう、かの不良少年を。

「野棚さん、」
「なんだ」
「生きる時間を生き抜ける、かな、僕ら」
「言うはやすく、疲れる……が、しかし度胸は決めている、だろう?」

 ねえ、君はきっとスタコラサッちゃんにはなってくれないね、良いのだけれど、ほんとに惚れて、死ぬなんて、ナンセンス、さ。

((惚れたら、生きることです))








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