BGM:とおせんぼ
:迴といこと
「来ないで、下さいな」
ぴしりと引いた線引きを、越える人じゃないことは私が一番よく知って居た。これが私の唯一持つ防壁だ。この、弱く、詰まらない防壁を、彼は決して壊そうとしない。してくれない。その甘さが、嫌い。
「祇園」
「いや、なんです。天藾さん。貴方の持つ、その距離感」
いやだった、苦手だった。怖かった。近からずかと言い遠から無い距離で、私の皮膚を、皮膚の上に被せた何かを、ぱりぱりと剥がしてしまうから。やめてほしい。見ないでほしい。何処か何処か遠く。行ってしまいたい。貴方の、見えない、遠く。
「駄目、ですわ」
これ以上近くなれば、私の纏う全てが崩されてしまう。