(アークとレグ)

 わずか。わずか、四光年の距離の中の話だ。水のある星がみつかった。そんなニュースがゆるやかに流れていくのを眺めていた。
 ぼくたちは画面の向こう側にまるで三分クッキングのような軽やかさで語られる距離を見た。

 一光年、というのは一年間に光の進む距離で、光というのは一秒間に地球を七週と半分回るらしい。その速度は途方もなく、距離にして。

「約9兆4600億キロメートル、」
「チョウって単位がもう俺よくわっかんない」

 超でかい数字ってことはわかるでしょ、と我ながらつまんないことを返せばレグルスはくすすと笑った。

「なーなー、いるかなぁ宇宙人!」
「ぼくら宇宙人みたいなもんだよ」
「そりゃそーだっけどさーぁー」
「ぼくとレグよりは近くにいるんじゃない」
「んん? くっついとこっか?」
「あっつい、やめて」
「へへー、レグルスのが熱いんだぞ」
「しってる、ばか」

 ぼくらの星々の距離は生涯にこなせないくらいに遠い。ひかりにのって。
 この地球というところで出会うとして。その記憶は数万の彼方だ。


(大きな数の足し算ができなかったあの日、天文学者をあきらめた)




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20161002






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